OL映画日記/「アルプススタンドのはしの方」で脱水症状になる

バーチャルOL常世モコがミニシアターで「アルプススタンドのはしの方」を観て震え泣きした日の日記です。最高の夏映画に出会ってしまった……

8月16日(日)はれ

長らく続く在宅勤務に猛暑も相まって映画館へ行くにも小さな決心が必要になった。日曜日のお昼、意を決して玄関を開けるとものすごく暑い世界が待っていて思わず目を細める。あっつーー。夏だなぁ。耳にAir podsを突っ込んでとりあえずBase Ball Bearの「ドラマチック」を流し、映画館に向かった。

本日の鑑賞作品は2020年7月24日公開の「アルプススタンドのはしの方」。私は脚本の奥村徹也さんが主宰する劇団の大ファンゆえ気になっていた作品。しかもゴジゲンの目次立樹さんも出ているぞ!ということで、最近満たされない観劇欲を満たしたくて観に行くことに。(私は映画だけじゃなく演劇も結構好き)

で、これがもうめちゃくちゃな快作で私はマスクがびしょ濡れになるほど泣きました。書きながら思い出してもちょっと泣けてくる、素晴らしい75分間。OL映画日記記念すべき1本目の映画はこれしかない!と思える1本だったので紹介していきます。

©︎2020 SPOTTED PRODUCTIONS INC.

本作は高校演劇の戯曲を元に去年商業演劇化された作品を映画化したもの。甲子園の一回戦をアルプススタンドのはしの方で観戦する男女を描いた作品です。野球のルールも知らない演劇部女子2人、元・野球部の男子、成績トップの帰宅部女子……という「クラスのはしの方」の彼らは目の前の試合に何を想うのか、試合の戦況と共に変化するそれぞれの気持ちを丁寧に描いた会話劇でした。夏の一日を切り取った非常に爽やかなお話です!

序盤からテンポの良いコミカルな会話に映画館では度々笑い声が聞こえ、私も一人で小さく笑いながら鑑賞しました。商業演劇の際のキャストをほぼ引き継いでいるということもあってか、息の合った若干舞台的な会話劇に私の「観劇欲」が満たされていくような感じがしました。

ほぼワンシチュエーションの画作りも最高で、登場人物の本当の想いや葛藤を立ち位置で表現しており見事。「甲子園」を題材にしていながら野球シーンが一切映らないことや、映らないのに試合の様子がしっかりと想像できることに演出や音響の妙というか……「ワンシチュエーションでやってやるぞ」という気概を感じてかっこよかった!

本当に、作品の終盤震えながら号泣するほど私にとって心を揺さぶられる作品だったなあ。強豪校とぶつかる野球部たちの試合を観て「結果が伴わなくても頑張る意味あるの?」と引いた眼で観ていた「はしの方」のメンバーが、いつしか「結果以外」の価値に気付いていくこの映画のメッセージがグサッときた!困難に思えてもすぐに結果が出なくても、自分で自分を諦めなければきっとその経験や挑戦は価値あるものになるんだ!っていう、すごく温かいメッセージを受け取れた気がします。

思えば私は心身がボロボロだった社畜時代に「熱闘甲子園」を観てぶっ壊れたように泣いていた。自分の心や言葉を押し殺して責任感とか義務感をエンジンに「つらくても仕事だからしょうがない」と深夜残業をしていたあの時、まっすぐな高校球児たちの姿はあまりにもまぶしくて羨ましかったのだとこの映画を観て思ったり。しょうがないかどうかを決めるのは、自分なのに。

今作は「はしの方」のメンバーだけでなく「マウンドに立って中心で戦う人」のこともきちんと描いていたことも良かった。それぞれの立場の想いがきちんと表現されていて、様々な人に寄り添える映画だと思う。きっと色々な人に届く物語だと思います。

奇しくも甲子園のない今年の夏、「しょうがない」と諦めたくなるようなことが続く中でこの作品が公開され、背中を押される人が一人でも増えるといいな。ニュース番組で目にした「甲子園がない」ことを知らされた高校球児たちの顔がずっと忘れられない。彼らの想いも、どこかでちゃんと昇華させられますように。

抜け殻になるほど泣いていたので、上映終了後に上の空でパンフレットを買った。お金を払うときにもたついて恥ずかしかった。それくらい頭がぼーっとしていた。アルプススタンドに気持ちが寄り添いすぎて、ついに映画館で熱中症になったかと思った。水分補給が大切。観に行く方はお気をつけて!

映画館を出たら早足で近くの喫茶店へ。ここは涼し~。たまたま「黒豆茶」が目について巡り合わせに感謝しつつ黒豆茶とバニラアイスをオーダー。(劇中、黒豆茶が出てくるのです)涼しい店内で飲む温かい黒豆茶が優しい味でほっと一息つけた。そして今はまたちょっと泣きそうになりながら、アツい気持ちでこの日記を書いています。

私も、かつての私のように心が疲れた誰かの癒しみたいなものになりたい。いつか私の声が誰かにきちんと届くと信じて今できる全力を尽くそう。そしてこのタイミングでいただいたはじめてのライター依頼!自信を持ってマウンドに立ってフルスイングするぞー!

Vtuber界のはしの方でひっそりと生きる映画好きOLの私が、映画館のはしの方ですみっコぐらしのハンカチを握りしめて観たこの快作が、多くの方に届きますように。

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