これはもはや原作より好きな見事な映像化!『君のクイズ』

マシーナリーとも子

クイズは人生!

 今月は小川哲原作の新作映画『君のクイズ』を見てきたぜァーッ! なんか縁を感じたのですわ。原作既読です。

 よく「○○は人生」なんて言い方をしますわな。「創作は人生」とか「ゲームは人生」とか「将棋」「麻雀は人生」とか「クラナドは人生」とか……。そういえば本作と同じ原作者による『ゲームの王国』でも「人生」という名のゲームを遊ぶくだりや「ゲームの王国」という概念が出てきてましたね……。

 で、本作『君とクイズ』もひと言で言うと「クイズは人生」という物語です。

 で、そういうあるあるな人生の命題めいた言葉が、クイズらしく「論理的に組み立てられていく」過程がおもしろくて、最終的に「クイズって……人生かもしれねえなア……!」って納得させられてしまう、というお話です。そうなんだって。

 もう少し具体的にあらすじを話すと、主人公は日本トップクラスのクイズプレイヤー。彼がクイズ日本一を決める生放送のクイズ番組で、相手に「まだ一文字も読まれていないクイズ」を正解されて敗退。なぜ、彼はクイズの内容をまったく聞かずに答えることができたのか……? そしてその真意は? という「クイズ」を解くため奔走する推理モノ、となっております。

小川哲だーいすき

 原作を読んだときに思ったことなんですけど私、クイズ番組自体は昔はなんとなく見ていたものの、例えば──本作を執筆するにあたって筆者が取材もした──『QuizKnock』とかも全然見たことなくて、近年のクイズブームとかよくわかってなかった。

 本作はそこもしっかりと掘り下げていて「クイズの競技性」とかも読んでいくうちに理解できるつくりになっていてそこがとてもよかったんですよね。また、そうした解説をするとともに「クイズとは、そもそもなんなのか?」が解体・検証されていき、それが謎解きにつながっていくという構造がすごくおもしろい作品なのね。

 私、この小説読むまでは「クイズって結局知識問題でしょ? トンチを効かせなきゃ解けないなぞなぞのほうが上等な気がするけどな〜」ってちょっとナメてたところがあった。襟を正しました。クイズは、すごいゲームです。そしてそんな納得をさせてくれる小川哲ってやっぱりすごいぜ……!

映像化によってなお「なるほどこういう競技性か」がわかりやすくなった面もある

 小川哲、作品はほとんど読んでるぜーっ! てわけでは全然無いんだけど、「好きな小説家教えて」って言われたら絶対5人以内には出すだろうなってくらい好き作家なんですよね。

 確か短編集『嘘と正典』ではじめて存在を知って……で、そのあと『ゲームの王国』を読んだって順番だったと思う。『ゲームの王国』は上下巻の長編で結構なボリュームがあるんだけどのめり込むように読んだねおもしろすぎて。カンボジアが舞台の話なんだけど、とくに上巻がクメール・ルージュ時代の話でものすごく凄惨なんですよ。めちゃくちゃ人が死ぬし暗い気持ちになるわけ。でもそこにちょうどよくユーモアが入ってたりしてそこの温度感もちょうどいいんだよなあ。で、そうした歴史を元にした半フィクションみたいな感じで上巻をやったあとに下巻で一気にSFになってくるという展開なんだけど、後はもう読んでください。おもしろいので。オススメです。映像化してほしいくらいだけど無理だろうな。

無料の体験版もあるよ

 で、「小川哲ってスゲ〜」と思っていたところ『君のクイズ』の存在を知り、文庫版が出る半年くらい前に購入。あと最近になって『言語化するための小説思考』という、ハウトゥ本とエッセイ本の真ん中みたいな本も買って読みました。これもすごくおもしろい! 遍歴としてはそれくらいだろうか。最新作とか実はぜんぜん読んでなかったりするんですが。

これもすごくおもしろいよ

原作よりテンポアップ&爽やかさアップでかなり好きな映像化

 まあとにかく大好きな作家のひとりなわけですよ。先日、旅行に行ったときもついつい飛行機移動とかのときに『ゲームの王国』再読しちゃったもんな。ほんとにおもしろいんですよ……。

 で、帰国してから『君のクイズ』の映画が始まっていたことを知った。マジ? そういえば少し前に映画化のニュースだけ見てた気がするけどもう上映始まってるのか。じゃあせっかくだから見にいくか……と足を運ぶことにしたわけだが。

 しかし実は『君のクイズ』、個人的にはこれまで読んだ小川哲作品のなかだと「そんなんでもないな」的な評価に落ち着いてしまった作品でもあるんですよね。

 もちろん、おもしろい。とてもおもしろい小説で、「クイズをこうやって小説にするのか〜!」と舌を巻かされましたよ。本当におもしろい。
 じゃあどこで「ふぅん?」ってなったのかなーと考えると、単に「思ってたんのと違った」のかな〜と。
 短編集→長編、と読んでしまったので直前に読んだ『ゲームの王国』のような壮大な、スケールのデカイ物語を勝手に期待してしまっていたんですよね。
 が、そうではなかった。むしろ小さく小さくまとめたお話だった。あとちょっと後味が悪かった。
 ので、間違いなくおもしろかったんだけど「ン〜〜〜〜〜……『ゲームの王国』のほうが好きッ!」ってなっちゃったんだよねー。なんというか、読後感が「短編っぽいな」だった。

 でもじゃあそれが、映画になったらどうなんだと。

 むしろ映画という尺にはちょうどよく収まって『君のクイズ』そのものへの印象が良くなるんじゃないか? と思いついてあまり誰が出るとか調べずに見にいったんですけどいやーこれが思惑通りよかったです!
 原作では謎を解くための推理を、ドブ板捜査でしっかりと足を使って行うんだけど、映画版ではそすのパートを大胆に生放送検証番組として描写することでテンポアップと映像としての見栄えを両立していて、また同時に「これも一種のクイズ番組だろ」みたいな魅せ方も成立できていて、これはかなり効果的な改変と思いました。映画化がうまい!

 そのほかにも、原作ではちょっとえぇ〜〜! こんな締め方なんですかあ! ってカンジだったラスト付近も爽やか〜になっていて「これこれ これが見たかったんだよな」ってカンジに仕上がっていて大変良かった……。いや、マジで原作よりコッチのほうが好きかも! 今年の「いいメディアミックス映画」枠にピッタリとハマったカンジがしますよお! ワンアイディアをひたすら煮詰めておもしろいお話を作っちゃったぜ! という映画としてもすごーく良くてオススメです。

人生は続く

 本作もそうだし『ゲームの王国』にもそういう面があったけど、「クイズは(ゲームは)人生である」というのを理論的に、そして肯定的に描きつつも「しかし、人生はクイズではない」というメッセージも確かに放ってくれるのがこの人のいいとこだよなー、と今回映画で触れ直して改めて思った。そういう優しい突き放しというか、それはそれなんだぜ でも、がんばれだぜ みたいなことをちゃんと言ってくれるのがいいんだよな。

 先述した『言語化するための小説思考』でも、「これって……小説なんじゃないか!?」というまなざしであらゆるものを見つめていて「スゲーなこの人!」ってなってビビらされましたね。小川哲作品、読みましょう。私もこのあいだ新しく『ユートロニカのこちら側』を買ったので、このあと読みます。さようなら。

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