君は知っているか、ちゃおの『アイドルマスター』を

ナ月

 皆さんはアイドルマスターをご存じだろうか。
 きっと読者の皆さんは今「知ってるよ、アイマスだろ? バンダイナムコのアイドルを育てるゲームだよね」「ゲーム以外にもアニメや音楽コンテンツやコミックなど幅広く展開しているんだよね」「学園アイドルマスターが大人気で1周年を迎えたんだろ? ますます目が離せないや」とリスニング問題の例文のようなことを思っているかもしれない。
 筆者もアイドルマスターが大好きで、アイドルマスターと名がついているものはとりあえずかじるようにしている。

 今回紹介するのはアイドルマスターと言ってもお馴染みバンダイナムコのアイドルマスターではない。

 泣く子も黙る少女漫画雑誌の王者、小学館の『ちゃお』系列雑誌(ちゃおデラックスとか)に掲載されていた漫画作品『アイドルマスター』を紹介する。

「へえ、ちゃおでアイドルマスターがコミカライズされていたんだ。ちゃおらしくて可愛い絵柄だね!」と思った方も多いかもしれない。違う。本作はタイトルこそ同じであるが、バンダイナムコのアイドルマスターとは一切関係ない作品だ。作者はなぎり京先生。

 掲載されていたのは2012年頃〜2014年頃あたり。バンナムのアイマスでいうとシャイニーフェスタが発売されたりソシャゲ版のミリオンライブが始まったりソシャゲ版のSideMが始まったりして世界がもりもり拡張されていっていた頃だ。

 余談だが少女漫画版の(バンダイナムコの)アイドルマスターとしては「花とゆめ」で連載していた『Jupiter 〜The IDOLM@STER〜』と「花とゆめonline」で連載していた『D@YS OF Jupiter 〜THE iDOLM@STER〜』が存在する。こちらもめっちゃめちゃおすすめ。

 さてこのちゃおの『アイドルマスター』よくこのタイトルで通ったなとは思うが、世の中に同じタイトルの全然関係ない作品って結構あるしな……タイタンフォールとか。

『アイドルマスター』と名がつく作品をとりあえずなんでもかじるようにしているため、全然関係ないと知りつつ本作も読んでみたところ、これがなかなかすごい作品だったのでぜひ紹介したい。

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』P2より引用

 病弱でこれまで満足に学校生活というものを送ってくることができなかった主人公「宇佐美萌花」は高校進学で「星越学園」に入学。これで念願の普通のスクールライフを送ることができるぞ!! やったね!!

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』4より引用

 しかし彼女のクラスはどういうわけか自分以外全員がテレビでバリバリ活躍するスーパーアイドルだった!! そんなクラスでやっていけるのか!! こんなクラスで念願の普通のスクールライフが送れるのか!? 一体どうなってしまうのか!! 

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』P6より引用

 ところが若くして芸能界に疲れ切ったクラスメイトたちは一般人の彼女が可愛くて仕方ない。萌花はクラスのアイドルたちの癒しの存在となり、みんな萌花を猫っ可愛がりするぞ!! 萌花はスーパーアイドルたちとの友情や恋心に振り回されながらスーパーアイドルにまみれて凄まじい学校生活をやっていくぞ!! というような物語。

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』P8より引用

 全員めちゃめちゃ忙しいので集合写真がこんなことになるしクラス委員にも任命される。すごいぜ……。
 可愛くない例えだが、尖った奴らの中に一般人が一人いるので逆に目立つといった構図からは『魁!!クロマティ高校』を連想した。べつに似てはいないけど。

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』P5より引用

 主人公萌花ちゃんを取り巻くメインキャラの3人。主人公の親友キャラの雪村綾音ちゃん、クールキャラの常盤蒼吾(仮面ライダージオウと同じなので覚えやすいですね)くん。明るくてよく吐血するキャラの塚本郁己くん。シンデレラガールズでいうと上からキュートクールパッションか。パッションパッションパッションかも。後々1人増える。
 彼らが主人公の萌花ちゃんを奪い合いつつ、スーパーアイドルばかりのクラスならではの問題を萌花と共にスーパーアイドルのスーパーっぷりで解決していく。

 例えば、遠足参加者のサインを集めることになった萌花。この学校ではなぜか遠足参加者はサインがいる。

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』P22より引用

 なんやかんや苦労して集めて、残るは蒼吾くんだけになる。しかし彼はロケで海外にいる! どうしよう! さすがに無理だろ!!

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』P26より引用

 すると塚本郁己くんが突然綾音ちゃんの生放送番組に萌花ちゃんを連れてきて……

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』P27より引用

 こう。

2013 小学館 なぎり京『アイドルマスター』P28より引用

 そしてこう。嫉妬に駆られた蒼吾くんがマッハ(文字通り)で帰ってきたので無事に間に合いました。すごすぎる。

 アイドルたちがこんな無茶苦茶なことをしてくれるのも、主人公の萌花ちゃんがクラスのアイドルたちにとってのアイドルだから。アイドルたちのアイドルなので、それはもう、つまりアイドルマスターだ。ということだろうか。多分そういうタイトルだと思う。

 これは第1話の出来事で、ここから一切パワーダウンすることなく「自分以外全員アイドルのクラス」というすごい設定に負けないぶっ飛んだ話が続いていく。

 そしてその勢いのまま、2巻に当たる『アイドルマスター〜プレミアム〜』

2014 小学館 なぎり京『アイドルマスター〜プレミアム〜』より引用

 そして最終巻の3巻に当たる『アイドルマスター〜レジェンド〜』へと続いていく。

2015 小学館 なぎり京『アイドルマスター〜レジェンド〜』より引用

 本作で『ちゃお』系列の漫画を初めて読んだのだが、すごい読書体験だった。
 最終巻『アイドルマスターレジェンド』のおまけ漫画として添えられた解説、作者のなぎり京先生がちゃお投稿者向けの漫画講座で教わった二つのことが印象的だった。

「ちゃおっ娘にはとにかくいい子♡の方がウケます!!」
「主人公=読者!! 主人公はとにかくモテモテでチヤホヤされて何度も何度もおいしい思いをする!!」

 本作『アイドルマスター』は「ピュアピュアないい子がスーパーアイドルたちにモテまくる」という内容。やりすぎだろってくらい本当にこの通りで「そうか、これがちゃおの漫画ということなのか!!」と目から鱗がボロッボロ落ちた。(もちろんこれが全てではないだろうが)
 筆者はオタクのおじさんなので本来の読者層のちゃおっ娘と同じように楽しむことはできないかもしれないが、読むことで確実に自分の中の世界が広がった。アイドルマスターと名がつくものをなんでもかじる生活と、このタイトルのおかげだ。

 おそらくこの記事を読んでいる層はちゃおっ娘とはかけ離れた方が多いのではないだろうか。ぜひ一度読んでみて「これがちゃおの漫画か!!」という体験をしてみてほしい。きっと自分の中の世界が広がることだと思う。

 

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