『家なき子 希望の歌声』
2018年にフランスにて制作・公開された実写映画版『家なき子』が11/20(金)より国内でも公開が開始する。
「家なき子」と言えば日本での3度のアニメ化をはじめ数多くの実写劇場版も存在し、基本的なストーリーはなんとなく知ってるという方が多いのではないだろうか。
3作目のTVアニメ化作品である1996年公開の世界名作劇場版「家なき子」では、主人公レミの性別が変わっているなど、それぞれの作品には原作との違いが見られるが、最新の「家なき子」である本作は「音楽要素」と「ヴィタリス(レミと旅する旅芸人)」に焦点を当てている点が非常に特徴的な作品になっている。
アニメ版との関連
「希望の歌声」という邦題の通り、本作は歌が物語上重要な要素となっており、旅のきっかけも主人公レミの歌の才能に期待を感じた旅芸人ヴィタリスが、レミの義父から彼を譲り受けるという形になっている。
レミの歌の才能という設定や、元音楽家というヴィタリスの素性など原作にはない設定が存在し、そのあたりのキャラ設定が1996年アニメ版に似ている。また、レミやヴィタリスのヴィジュアル的なイメージは1977年公開のアニメ版にインスピレーションを与えられたと監督が語っており、日本制作のアニメ版を意識した作品になっていることがハッキリと表れている。
音楽要素を加え、テンポよくまとめた見事な脚本
全体の構成を見ると、旅芸人ヴィタリスにフォーカスした構成になっており、原作にはない設定を盛り込み強化したヴィタリスを中心に据えた原作のダイジェスト版のような印象を受けた。
原作での主要キャラ「マチア」の不在をはじめ、登場キャラクターを絞っていることもあり、ヴィタリスとレミのエピソードが非常にテンポよく進行し、109分の上映時間の中で大作「家なき子」の一つの物語がしっかり完成されている点が見事。
ただし、「歌」の物語の進行上の役割は大きいが実際にレミが歌うシーンはあまり多くなく、逆にエンドロールで流れるレミ(マロム・パキン)の透き通るような歌声が非常に印象に残った。
また、ヴィタリスの元音楽家設定が活かされる劇中の演奏シーンは、そこに至るまでの状況も相まって非常に印象的で感動を誘う。
音楽要素以外に特筆すべき点として、二人と共に旅をする動物(犬・猿)の存在感が大きく、大道芸のシーンや旅の中での動物達の生き生きとした姿に癒される。
ヴィタリスを演じた、フランスが誇る名優ダニエル・オートゥイユにも負けない名演を見せてくれた動物達の姿は必見で、本作において欠かせない重要なキャラクターとしてその存在感を発揮している。
原作を知っていても知らなくても楽しめる現代版「家なき子」
美しいロケーションや音楽、名優が演じる魅力的なキャラクター、テンポの良い構成に、原作を知らない方も少年レミの数奇な物語に引き込まれ、原作を知っている方は、新たな設定や描き方で現代的に再構築された『家なき子』の構成の妙に唸ることだろう。
監督、アントワーヌ・ブロシエ曰く「逆境に立ち向かう純真な子どもをスピルバーグ風に描いた」という本作『家なき子 希望の歌声』は映画ファンも納得の名作となっている。
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11歳の少年レミは、南仏の農村で貧しいながらも優しいママと幸せに暮らしていた。ところが長い間パリへ出稼ぎに出ていた義父により旅芸人の親方ヴィタリスに売り飛ばされてしまう。しかし情の深い親方に歌の才能を見いだされ、犬のカピ、猿のジョリクールと親交を深めながら、懸命に旅を続けるレミ。さまざまな出会いや困難が渦巻く冒険の果てに、待ち受ける運命とは…?