タフなカッコよさよりも照れ隠しのようなキュートさが垣間見える『エル・マリアッチ』

あれ? 2作目しか見てないや

昔からロバート・ロドリゲスの『デスペラード』が好きだった。多分、生きてて2番目か3番目くらいに「これは私の好きな映画だな」と自覚した映画なんじゃ無いだろうか。現在の好き順位自体はおそらくソコソコだが、出会いが早かった。
20年以上前に見たんだと思う。きっかけはなんだったか、まったく覚えてない。なんだろう? FF8とか? でも名前以外に関連性が思いつかないな。まぁインターネットで「この映画がおもしろいよ」と聞いてツタヤで借りたんでしょう。

そのカッコ良さにシビれまくり、カンパとキーノに戸惑いながら爆笑し、オチで「は????」ってなり、と、とにかく感情を揺さぶられた。今でも「あれはなんだったんだ?」って思ってるんですけどマジであのオチなんなんですか? あれがまだ天然なのかギャグなのかなにかの風刺や寓話なのかまったくわかっていない。
だけど結局今まで2回くらいしか見てないんだよな。Blu-rayも「どうせ見るんだから」って買ったけど一度も見てない。意外と心に残ってる映画なんてそんなもんだ。

Blu-rayどこいったかな あるはずなんだけどなあって探してたらケースは捨てられていて超適当にファイリングされていた

5月も半ばを過ぎ、そろそろムービーナーズの記事を書かなきゃなあ、なにを見ようかなとAmazonプライムビデオをdigっていたら『レジェンド・オブ・メキシコ』が配信されていた。あーー 見たことなかったそういえば。

『レジェンド・オブ・メキシコ』は『デスペラード』の直接の続編だ。でも見たことない。始まった時も「なんかやってるなあ、映画が」と思ってはいたんだけど好きな映画の続編なのにまったく見に行く気持ちが湧き上がらなくてスルーしてた。その後も見ずに生きてきた。

ってかほんとは3部作なんだよな。
『デスペラード』の前に、前日譚というわけではないけどプロトタイプ的なものらしい『エル・マリアッチ』という作品があるのも知識で知っていた。でも見たことない。
じゃあせっかくだしこの機会に『エル・マリアッチ』見てみるか! って探したらYouTubeにあるのね!

ソニー・ピクチャーズが無料公開してんのね。へぇー。
半年前からアップされてるみたいなんだけどこれいつまで見られるんでしょうね。ラッキー。

意外と笑えてキュートな映画でした

主演は後に『デスペラード』でカンパを演じるカルロス・ガラルドー。覇気無いな~

いや、ほんと作風が違ってちょっと驚きました。
言うなら『デスペラード』ってヒーロー映画じゃないですか。や、ヒーローものというより西部劇的な文脈だろって言われたらそうなんですが、要するにまあ英雄譚じゃん?
でも『エル・マリアッチ』はなんかどちらかというとユーモア映画の趣きがある。アクションもあるし銃撃戦もある。人も死ぬし悲しいシーンもあるんだけど、なんかどちらかというとユーモアだなあという印象が強い。

序盤、お店でギターを弾かせてくれというマリアッチに対して登場するシンセサイザー親父。このシーン見たときに「えっ こういう映画!?」ってちょっとビビった。演奏フニャフニャだし

『デスペラード』もギャグだろみたいなシーンもあったけどね。それこそカンパとキーノのシーンなんて全部ツッコミどころでギャグだ。マジでなんなんだあいつら。でもやっぱり基本はバンデラス……カッコよすぎるぜ! って映画じゃん? いや最後に見たのもうめちゃくちゃ前なので思い出の中で美化されてる可能性はあるけど。今度見直そ……(こういうときに見直してから書くという発想がないのがダメ)。

でも『エル・マリアッチ』は主人公もなんか情けないし、ふにゃふにゃしてる。ギターが弾けるモヤシ野郎という感じだ。なぜか銃撃つとすごい命中率で心臓に当てるけど。

あらすじ自体も、街のギャングたちに復讐を目論む男が「黒い服にギターケース」という特徴でしか共有されなかったせいで、マリアッチ見習いの主人公と勘違いされて命を狙われる……というトボけたストーリー。いや、『ゴルゴ13』の「間違えられた男」とか大好きだから『エル・マリアッチ』もすごーく楽しめたけどね! 「こういう系!?」ってなっただけで

勘違いされてるのでキル数が合算されていく。めちゃくちゃ笑える

これは私の勝手な想像であって、実際にロバート・ロドリゲスがそう言ってたのを読んだ、とかそういうわけではない……というのを念頭に置いて聞いて欲しいんだけど、私は『エル・マリアッチ』を見て、この映画がユーモア映画のような作りになっているのはある種の照れ隠しなんじゃないかなと思った。
本当はカッコいいものを作りたい。だけどど直球だと照れがあるから、あくまで全体的にはユーモア作品という形を取った。
その形を、本気でカッコいいと思ったものを一途に作ったうえでスパイス的にユーモアを散りばめた作品が後の『デスペラード』なんじゃないかと。
そう思うと『エル・マリアッチ』についてもただ単に笑える映画だな、と思う以上の愛着が湧いてくるのであります。
今度『レジェンド・オブ・メキシコ』も見てみるよ! ありがとなロドリゲス。

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