この10年で一番怖い!沖縄ホラープロジェクト『疫《えやみ》』シリーズについて

人間食べ食べカエル

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今年3月に日本で公開されたニコラス・ケイジ、マイカ・モンロー共演のホラー映画『ロングレッグス』。この映画のポスターに書かれた「この10年で最も怖い映画」というワードは非常に強いインパクトがあり、私含め多くの人に期待をさせた。私自身は色々立て込んで結局『ロングレッグス』をまだ観られていないので、本当にそのレベルで怖かったのか何とも言えない。

このポスターをきっかけに「そういえば自分の中でこの10年で最も怖かったのって何だろう」と考えた時に、一つの作品が頭に浮かんだ。それは、『疫(えやみ)』である。

『疫(えやみ)』はYouTubeで無料公開されているホラーシリーズだ。この作品は沖縄ホラープロジェクトの一環で製作されたもので、人気商業施設イオンモール沖縄ライカムで開催されるお化け屋敷と連動したドラマというのがウリになっている。

ドラマの中では、沖縄の地に渦巻く恐ろしい呪いを描いていく。沖縄にかつて「ナヒヤサマ」という神を祀る地域があった。それに関わってしまった者は例外なく呪われ、恐ろしい目に遭ってしまう。このナヒヤサマに触れてしまった人たちの恐怖体験をオムニバス形式で1話ずつ描く。この作りと、呪いの理不尽さもあって少し『呪怨』っぽさも感じられる。

だが、かなりやりすぎでコミカルさも感じられるあちらとは異なり、『疫』の方は奇をてらわずに淡々と、一切の容赦なく、徹底的に観る者を恐怖の底に突き落としていく。

1話目からただならぬ空気を感じることが出来る。とある空き家を訪れた、不動産屋の男女2人。そこで社員の女性は謎の影を目撃する。さらに、家の中を見たら天井からぶら下がる人の姿が……。

ここで特筆すべきは、このくだりは全て白昼に起きるという点だ。沖縄と聞いてイメージするあの青く澄み渡る空。強く照り付ける太陽。そこに堂々と霊を出す。それなのに酷く不気味で恐ろしい。明るい日中に、壁から半分はみ出て見える人影。あの姿は一発で脳裏に焼き付いた。この恐ろしさはOV版『ほんとにあった怖い話』の『霊が棲みつく家』というエピソードに通じるものがある。あちらも日中に黒い男の影を出して恐怖を作り出していた。

明るさは霊の恐怖を描く障害になるもの、という先入観を打ち砕く強烈な作品だったが、「疫」もそれをやり遂げている。このファーストインパクトで間違いなくノックアウトされると思う。恐怖度が高すぎて、とても1話十数分とは思えない疲労感を味わうことが出来る。これをウッカリ寝る前に観ようものなら、もう、大変なことになりますよ。

物語は後半に進むにつれ、次第に呪いが広まっていく。それこそ疫病のように。ナヒヤサマに関わる映像を見た人、話を聞いた人などが次々と消えていく。そして、いよいよ最終話になると更なる拡散を示唆して物語は終わる。終盤でも真っ白な明るい場所で悍ましい怪異を映し出している。リビングにいる人間が狂ったように笑い始めて、やがて……。これがマジで悪夢モノ。令和にここまで禍々しい映像表現を拝めるとは思っていなかった。

あと毎回、話の最後に、本来は提供クレジットを映していると思しき映像が出てくるのだが、これが本当に洒落にならないくらい怖い。薄暗い闇の中に女性がただただ佇んでいるだけの映像が、しばらくの間映し出される。本当にただ立っているだけなのだが、ずっと眺めているうちになんだか少し近づいているような気もするし、次の瞬間には動き出すんじゃないかと思ってしまって目が離せない。怖いのに目を離すともっと怖いから動くことが出来ないという最悪の悪循環を味わうことが出来る。ある意味、このドラマの本番はこの映像かもしれない。

ちなみにテレビ放送だと女性の顔が見えたとの報告もあるようで、それを聞いたときはチビるかと思いました。

このドラマがホラー好きを中心に大きく話題を呼んだのが2023年。その翌年には続編が公開された。その名も『続・疫(えやみ)~浸食~』である。今回はなんと、1作目はあくまでドラマで、あれは劇中劇だと明言し、前回出てきたキャストたちが今回は本人として再登場する。そしてフィクションであると思われたナヒヤサマが実在し、そのドラマに関わった者たちを呪いにかけていくというメタ的な構造の展開になっているのだ。

現実と虚構の境目をブチ壊しにかかる非常に恐ろしい作りである。フィクションとリアルを交じり合わせていく手法は最近よく見られるもので、主にモキュメンタリー形式の作品で取り入れられていたが、本作はあくまでも映像作品という体をを保っているのが珍しい。とはいえ今回は一部にファウンドフッテージ演出を取り入れているのだが、その点は追って再度触れていきたい。

さて、この続・疫の恐怖度はどうなのだろうか。これがもう今回も勘弁してくれ!!ってレベルだった。この続編によって、本シリーズが単なる奇跡ではなく、製作者たちが実力で生み出した最恐ホラーであることが証明された。

相変わらず1話目から心霊の手数が凄い。真昼間の路上に佇むだけで本当に怖い霊の姿を皮切りに、車の中にいる笑っている女、半分見える人影、そして強烈なジャンプスケアと、この10分の中にあらゆるショックシーンが網羅されている。極悪ホラーの幕の内弁当みたいな内容だ。後半にかけても尻すぼみになることは決してなく、むしろ恐怖度が上がっていく。いったいどうなっているんだ……。

鶴田法男監督が確立したJホラー的演出をアップデートしたような見せ場もあれば、今までに体感したことのない新確度のショック描写が矢継ぎ早に襲ってくる。そして今回は、前述したようにファウンドフッテージ形式の映像も取り入れられているのだが、これが異様に生々しく、本作のもつ禍々しさをさらに引き立てることに成功している。

SAASが広まった後の2003年あたりに撮影されたインタビュー映像(絶妙な年代設定!!)に映り込んだ人影の恐ろしさといったら!

もしこれが「本当にあった!呪いのビデオ」に収録されていたら、間違いなくその巻は殿堂入りしていたことだろう。メタ演出も効果的に物語に取り入れており、まさに副題の通り現実世界が呪いに侵食される様が絶望感たっぷりに描かれている。今回もクライマックスには「これ、どうにもならんやん……」と絶句せざるを得ない展開が待ち受けているので、是非、気合を入れてから臨んでほしい。前作をさらに超えるヤバさを味わうことが出来る。

シリーズを通して描かれる、沖縄の地に渦巻く底の見えない呪い。それが拡散し、浸食し、気づけばこっちまで巻き込まれているような感覚を覚える恐ろしさが魅力だ。太陽が燦燦と輝く沖縄の風景描写とのギャップも唯一無二。これが無料でYouTubeで観られるのは果たしていいのか?お化け屋敷が主目的とはいえ、映像の方でもお金を取ったほうがいいのでは?と思ってしまうほどのクオリティ。これはいつかブルーレイBOXを出してほしいです。有無をいわず速攻で購入させて頂きます。これこそがJホラー復活の狼煙。後世に残していきたい本当に怖い作品だ。

そして、この原稿を書いているうちに第3弾の製作も発表された。今度のタイトルは『続・疫(えやみ)~生贄~』。この不穏極まりない副題を見る限り、またもやロクでもない悲惨な事態が巻き起こりそうだ。また、キャストも一新されており、また新しいホラードラマが繰り広げられることが予想される。再び最恐レベルの心霊悪行を作り出して、日本の夏を真っ黒に塗りつぶしてほしい。

公式Youtube1話

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