白石晃士監督の最新作である『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』が8月27日に公開されました!
遅ればせながら本作を見てきたのですが、これが本当に素晴らしい傑作!と劇場で震え上がってしまったのでさっそくネタバレなしのレビューを。
劇場公開が短い作品なのだそうですが、白石監督作品が好きな方は必見!と言える内容になっております。
最初からアクセル全開! 白石ユニバースを隠さずに始まるオカルトの森
白石監督作品といえば『ノロイ』『オカルト』『カルト』『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』といったフェイクドキュメンタリーの作品群。
近年では『貞子VS伽耶子』等、フェイクドキュメンタリーではない作品も監督していますが、それぞれ白石監督の独自の世界観であるクトゥルフ神話をモチーフにした異界の神(のようなもの)と超能力のせめぎ合い、といった要素が魅力的な作家性となっています。
これまでの作品群では従来の一般的なホラー映画やフェイクドキュメンタリーの筋書きを踏襲しつつ、徐々にギアを上げていき後半から一気に『恐怖』だけではない様々な要素を内包したホラー映画となっていましたが、本作『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』は一味違います。
開幕の前日譚的な短編映画『訪問者』から既に白石監督節が全開。
「これこれこういう怪異があってそれを追って行くと実は……」と「よくあるホラー」から徐々に独自の世界へズラして行くのではなく、開幕から「白石監督の作品だ!」となる要素がドンドン出てきます。
世界からズレた狂気に見える人々、霊体ミミズ、霊能力者等……これまでの白石監督作品を追ってきた人は「うおおお!」となる知っている要素が盛りだくさん。
本作ではこれまでの作品以上に「白石ユニバースの先を見せる」という覚悟を感じることが出来ます。
白石監督作品ではおなじみの宇野祥平の演じる江野祥平、イケメン霊媒師ナナシなど、他のホラー映画では中々見れない要素のオンパレードに開幕からテンションがマックスになる作品となっています。
絶妙に「嫌だ……」と感じる奇妙なキャラクターのリアリティ
過去の白石監督作品の特徴でもあるのですが「傍から見るとどう考えても狂気に堕ちている人間」が今作でもガッツリ出てきます。
作中で語られる『霊体ミミズ』などの存在を認識しているようであり、見て行くにつれて「あれ、もしかするとこの人はまともなのか?」と思う瞬間が出てくるという、見ていて正気と狂気の境目がわからなくなる人物造形。
作品内で起きている超常現象などは、映画を見ている私たちからは全くの非日常のようなことばかり起きるんですが、そんな中で「傍から見るとどう考えても狂気に堕ちている人間」の持つリアリティは異常なものになっています。
こう、見ていて「ああ、なんか見たことあるな……」という質感が確かにそこにあるんですよね。夜の繁華街みたいな人流の多い街で時折見るようなリアリティのある、「確かにそこにいる人」を描くのが非常に上手い。
本作も含めて白石監督作品は「ありえないだろそれは!」と思ってしまうようなことを「これが現実です!ドキュメンタリーです!」と堂々と撮って行くフェイクドキュメンタリーであることを逆手にとった手法が見応えがあるのですが、ともすればリアリティなく空中分解しそうな要素をとても地に足のついた生々しい人物描写で現実味を補強していくのが本作でも本当に見事。
開幕からそういった人物がガンガン出てくるため超常現象だけではない、恐怖感もガッツリあります。
正気と狂気の境目のわからなくなる恐怖
本作はホラー作品でありながら、予告映像でもあるようにイケメン霊媒師が出てきて『世界を救う』ような話になっていくのですが、それでも通底するものとしてやはりホラー要素はあると思います。(とはいえ風変わりな恐怖ではあるのですが)
上記の人物描写とも重なるのですが、「何が本当なのかわからない」ままで作品が進行していくため、コミカルに感じる展開やイケメン霊能力者ナナシが出てきてもなお「このまま展開して大丈夫なのか?」という不安感がありました。
作中のイケメン霊能力者などの『一握りの人』には異常自体の法則がわかっている様子であったり、状況的に味方である、というのは見ていて推測出来るのですが、主人公である黒石監督や助監督の市川、観客である私たちにはその法則が見えません。
あくまで状況証拠で「正しいことを言っていたらしい」「味方らしい」が出てくるだけです。
一体何が正気で狂気なのか、見ているうちに作品に取り込まれて行く感覚。
作品の世界観が展開されていく興奮と同時に、そんな不安感も並走していく、そんな一貫したホラー要素もある作品だと思います。
どちらが正しいのか、それについては是非本編を見ていただければと思う作品です。
とはいえ非常に魅力的なキャラクターたち、そして想像もつかない展開へ広がって行く物語のドライブ感
と、書いてきましたが本作のキャラクターたちは非常に魅力的です。
主人公である黒石監督や助監督である市川、謎の正義のボランティア江野祥平、イケメンホスト風霊能力者であるナナシなど、アクの強いキャラクターたちがどんどん投入され、物語は加速していきます。
それぞれ「ホラー映画でこんな濃いキャラクターが出せるんだ!」と思うような味わいのある登場人物ばかりです。
少年漫画のようなキャラの立った登場人物ばかりのため『キャラクター物』として楽しむことも出来るのが本作となっています。
恐怖体験の入口、と思った映画撮影の依頼から「世界を救う」かのような壮大な戦いになっていく本作のドライブ感は他の作品では味わえない唯一無二の魅力となっています。
白石監督作品を既に見ているファンには「これが『カルト』の先……!」と興奮するような展開や、過去作の要素も盛りだくさん。これまでの作品の総決算、到達点とも言える作品になっております。
と、オンリーワンの魅力を持った本作『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』夏の終わりにいかがでしょうか?
三週間の限定公開とのことなので見ようと思っている方は是非!
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