皆さん、遂にこの日が来ましたね。
そう…あのパーマー・ロッキーによる怪作『SCARLET WARNING 666』のBlu-rayの発売日ですね。
とは言っても、残念ながら国内発売ではなくGrindhouse Releasingのリリースしたものがパーマー・ロッキーを愛する者たちの手に届き始めたという事である。リリース自体は1週間ほど前に行われているのだが、国内でもちらほらと手にしているという情報を耳にしていた。
そして、当然編集部の手にも無事届いている。




3000枚限定のうち2800番台という、この作品の爆発的な人気さが伺える。
さらに国連番号で2814は「人体に病毒をうつしやすい感染性物質」となっている。まさしくこの作品に相応しいナンバーを与えられており、この作品との運命を感じる。


ここで、大変おこがましいがパーマー・ロッキーと今作の『SCARLET WARNING 666』について説明させて頂こう。
彼の情報は大変少なく色んな場所から引用しているのでその信憑性は確かではないのをご了承頂きたい。
まず、パーマー・ロッキーとは誰なのか?
1921年生まれの俳優兼監督で、音楽家でもあり、そして詐欺師でもある。
パーマー・ロッキーは生まれてすぐ母とは死別、父はその後精神病棟に入れられそのまま死別している。その後大学で哲学の博士号を取得し、映画の脚本を学ぶべくイギリスへと渡りシェパートン・スタジオに入っていたという。しかし、脚本家にはならずアメリカに戻ることになり、彼は彼自身の為に映画を作り始めた。
当然、映画作りには多大な資金が必要になるのだが、パーマー・ロッキーは一説にはテキサス州の主婦たちから借金や嘘に近い融資を受けていたのだ。これが詐欺師と呼ばれる所以だ。
一説とは言ったが実際に借金のことで訴訟を起こされていたりはしたので恐らく事実である。
彼は兎に角働こうとせず、妻のクッキーが数年にわたる残業をしてくれていたおかげで初監督作『It Happened One Weekend』は1974年に遂に完成する。
その完成までも非常に難航しており、スタッフや出演者と揉めては新しいスタッフと出演者を探し撮影していたような状態であったという。
情熱のあるタイプのカスだという事がよく分かる。
完成した映画は1週間のプレミア上映だったのだが、劇場は爆笑の渦だったという。しかし、それはパーマー・ロッキーの求めているものでは無かった。
そう、異様なまでに不出来な映画に皆が嘲笑していた。というより、当時視聴した貴重な話によると
「こんな映画見たことが無かった」
「わけがわからなくて笑うしかなかった」
「あまりにも笑い過ぎて外に出て廊下で笑っていた」
という感じで、所謂嘲笑というよりは訳の分からないものを目撃してしまい笑っていたというのだ。
これは今の不出来なものを笑うという文化とは違う文脈だったのではないだろうか。いや、結果的に不出来さを笑っているのは間違っていないのだが。
そんな観客たちにパーマー・ロッキーは当然怒った。何故かというと、彼はこの作品で本気でオスカーを狙っていたからだ。
彼はその怒りを情熱として燃やして映画を再編集し『Rockey’s Style』、『Scarlet Love』、『Scarlet Warning 666』と制作していった。この辺に関しては妻のクッキーとは既に別れた後のせいか、詳細が見つからなかった。
その後、パーマー・ロッキーは96年に亡くなり映画のフィルムも完全にロストすることになる。


パーマー・ロッキーという名が世間に知れ渡るのは映画ではなく、音楽の方面であった。
94年に再編集版の際にリリースしたレコードがRE/SEARCH 誌「Incedibly Strange Music」に取り上げられ、LPはプレ値になり後に再販されるような事態にまでなった。
これはすさまじい事だ。何故ならまだフィルムはロストしたまま。つまり、実体のない映画のサントラを皆でありがたがっていたのだ。異常事態以外の何物でもない。
2019年、GrindhouseReleasingの公式Youtubeに最終編集版である『SCARLET WARNING 666』が見つかったというアナウンスがあったのだ。
アカデミーの保管庫で奇跡的に見つかり、それをオリジナルネガからリマスターすること7年…遂にリリースされたのである。
この映画『SCARLET WARNING 666』は、様々なドラマを孕んで2026年に世に放たれたのだが、この作品自体にドラマは無い。ストーリーが無い(に等しい)
というか、これは映画なのか???
もう堅苦しい言い回しも辞めます。現在夜中の4時なので。
2回観てみたが、ずっとわけがわからず、しつこいメインテーマとおじさんの半裸と不快感MAXのキスの嵐で胸やけのする107分だった。
パーマー・ロッキー演じる双子のブルースとジャック、更には妹のジャッキーがいて、ジャッキーは殺されているのだがどうやらジャックが殺したのではないか?でも変な連中が出てきたり、悪魔崇拝っぽい話も出てきて…
2回観てもこのぐらいしか分かりませんでした。
というのも、双子を演じるのはいいのだが誰が誰だか全く分からない。服装が変わったり、年齢が変わったり…追撮を重ねているせいでこれが役作りで姿を変えているのか、撮影時の都合で姿が変わっているのか…なんなら双子以外の役も演じたせいで見ているだけで混乱してしまう。
そんな混乱を更に混乱させるのがひっきりなしに入る音楽とナレーション。映画ってこんなに音楽とナレーションを延々入れて良いんだっけ?と思うぐらい何かの音が常に鳴っているような状態だ。
しかも、このナレーションがまたひどいというか、メタ的な視点で解説やよく分からない事をずっと言っている。や、休ませてくれ!
理解できないストーリー、画面、音楽、ナレーション。すべてが駄作として満点だ…満点なのだが…


所謂「クソ映画」というにはなんだか違う。いや、間違いなく映画という範疇の出来ではないのだけど、これを指さしながら笑えるほどポップな出来ではない。なんというか、本気がとてつもなく伝わってしまう分、こちらもエネルギーを吸い取られまくる。
熱量を受けきる為の熱量をこちらも持たなければならないということだ。
少なくともこのレビューというか、何かを書き留めてやろうという気が無ければ20時から夜中の4時まで2回も観れなかっただろう。軟弱なおじさんの半裸が沢山出てくるのに、妙に骨太な奇作だ。
想像してほしい、目の前に必死で本気の50代のおじさんが居たら笑えるだろうか?最初は笑えるかもしれない。でも、このおじさんは107分も自分の目の前にいるのだ。笑えないを通り越して死期を悟った武士ぐらいこちらの顔もこわばってしまった。
笑えない、っていうのは面白くないとかそういう低次元の話じゃない。なんかこっちも居直らないといけない気がしちゃうっていうだけだ。
わけの分からないシーンやおかしなシーンはやっぱり沢山ある。沢山あるが、そのどれもが虚栄心のステータス999のおじさんのかっこつけた言い回しとセクシーシーンに繋がっている。
痛々しいメタナレーションも含めて心の柔らかい部分を攻撃されている気分だ。
最初、アウトサイダーアートと評しているが脚本を学びにイギリスにわたっているから違うのでは?と思っていたが、断片はアウトサイダー味がある。でも、最終編集版である本作はアウトサイダーなはずのものが追撮やナレーションの追加でドンドンと変容していったような味がある。
それは、あの時劇場で笑われた経験がアートの部分を消し、拭い切れない虚栄心と「また笑われるのでは?」という恐怖を拭い去るために鋼鉄のドレスを作品に着せてしまったのではないだろうか。
隙を見せたと思う瞬間にメインテーマが流れ、ナレーションで補足をする。笑う隙なんか与えてやるもんか!いいから映画を観てくれ!という必死さがフィルムから伝わってきた。
笑えるアウトサイダーが少しの意見や恐怖心などの力を借りて、ウィンチェスター・ミステリー・ハウスのようにより歪なものに仕上がっていた。それはもう笑えるだろうか?
いや、間違いなく最初と最後は笑えたんだけど、最後に笑えたのはなんだか10周ぐらい感情が回ってようやく笑えた。
生き様と言うほどカッコよくも無いしクリエイターとしての狂気や熱気とは違う、パーマー・ロッキーの人柄がしっかりと残っているデスマスクのような作品であった。
これを究極の駄作だという人も当時から沢山いるが、この最終版は究極の駄作と言い切るにはまだ時代が早い。40年倉庫で寝かせていてもまだこれの裁定を下すべきじゃないと確信出来る。
これの裁定を未来で下す為にまだ観ていない人はGrindhouse ReleasingでBlu-rayを購入しよう!
というか、もうこれを見極める為に3回目は観たくないんです!誰か代わりに見極めてください!
https://shop.grindhousereleasing.com/products/palmer-rockeys-scarlet-warning-666-deluxe-3-disc-blu-ray-set-only-3000-numbered-units







