ソーの次にはこれを観よ!!「SF超人ヘラクレス」は低予算……でも、愛がある

 「マイティ・ソー」シリーズ最新作「ソー:ラブ&サンダー」が今月公開されました。

 マイティ・ソーは、神々の世界から追放され地球に落とされたソーが、人間たちと交流を深めながら成長していく物語。今回はどんな冒険が展開していくのでしょうか。
 ところで、「マイティ」ときいて「ソー」の次に連想するのはやっぱり「マイティ・ハーキュリー」ですよね。ハーキュリーとはヘラクレスのことですよね。ヘラクレスが主人公の映画って結構たくさんありますよね。

 ということで!
 今回は「SF超人ヘラクレス」をご紹介しましょう。
 なんで?????????

「SF超人ヘラクレス」を観る前の諸注意と豆知識

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「SF超人ヘラクレス」は1970年に公開されたアメリカ映画。当時一大ムーブメントとなっていた「アメリカン・ニューシネマ」の波には一切乗らず、スカイツリーのように、牛久大仏のように、公園のオッサンのように、その居様は堂々としていらっしゃいます。

 はやめに言っときますが、「SF超人」と名乗っておきながら、この映画に「SF要素」はほとんどありません。なぜってこれは邦題だからです(原題は「Hercules In New York」)。

 邦題を真に受けサイエンス・フィクションを期待してしまうと、あなたは人生の貴重な90分を空虚に費やし、気力をすり減らし、その日のToDoを放棄し、「今夜は丁寧にメシを作りたいんだったわ仕込みもガッツリ時間かけてうまいしコスパも高い晩飯にするんだった」そのやる気は失われ、もう今日はええわ、今日は弁当かなんか買ってきたらええ、財布の紐もゆるみ、一度の油断が度重なる散財を招き、予約していたゲームソフトを泣く泣くキャンセル、オンラインで盛り上がる友達の輪に入れず、あ~あこんなことならあのときあんな映画観なければなあトホホ~……ということにもなってまいります。

 したがって、「SF」という言葉は一切無視してください。

 もうひとつ特記しておきたいのは、この「SF超人ヘラクレス」こそがアーノルド・シュワルツェネッガーの映画初出演作。「ターミネーター」「コマンドー」「トータル・リコール」など、80~90年代のシュワちゃんの華々しい大活躍は誰もが知る通りですが、本作での彼はまだ初々しい雰囲気。

「シュワルツェネッガーという名前は長過ぎる!」とアーノルド・ストロングに改名させられ、「なまりがキツすぎる!」とアフレコで別の俳優の声をかぶせられ……散々な目にあっているシュワちゃんですが、現在配信されているバージョンではちゃんとシュワちゃんの声を聞くことができますよ。

 ではあらすじに……あっ、ごめんなさいもうひとつだけ。
 低予算です。

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演技はあどけないけれど、既に肉体はミスター・ユニバース

あらすじ
 神々が住む山「オリュンポス」で、ゼウスとヘラクレスが言い争っている。ヘラクレスは、数千年以上も続いている山での生活にいい加減うんざりなのだ。「お父さん!僕を人間界へ行かせてください」あまりにしつこくせがまれるものだから、ゼウスはとうとうヘラクレスを山から落としてしまった。

 ヘラクレスは落ちた先でプレッツィという男と知り合い、彼の案内のもと、行く先々で暴れ散らす。持ち前の圧倒的なパワーを惜しみなく発揮しまくるヘラクレスは、瞬く間に世間の注目の的になった。

 ゼウスの妻・ジュノーは、ゼウスの浮気が原因で生まれたヘラクレスを良く思っておらず、人間界にいるうちに始末してしまおうと画策し、義憤の女神ネメシスと冥府の神プルートーにヘラクレスの弱体化に手を貸すよう命じる。ニューヨークでは、ヘラクレスが大金を賭けたウェイトリフティング勝負に挑もうとしていたが、その裏にはマフィアの目論見があった……。

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健康診断の待合室みたいなとこから全土に中継される重量挙げ対決

 読んでいただくとわかるように、この映画ではギリシャ神話とローマ神話の神々が混在しているのですが、あまり気にしないほうがいいですよ。そんなところでいちいち躓いてる場合ではないからです。

オリュンポスは公園だった!!始まった瞬間わかる予算不足

 物語はオリュンポスでのヘラクレスとゼウスの口論から始まります。このシーンの絵面を見て、早くも不安を抱く方がいらっしゃるかもしれません。「公園っぽさ」がチラ見えしているから。

 次のカットに移り、上空から撮られたオリュンポスがあらわになると……。

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 もうモロ見えです。

 ニューヨークが舞台なんで「ニューヨーク 公園 花壇」で検索をかけてみると、セントラルパーク内にあります「コンサバトリーガーデン」だということが一瞬で判明しました。確かにちょっとそれっぽさはあるんですが、妙心寺で西遊記を撮るようなもんです。画像に2本見えるギリシャっぽい柱だけは用意したみたいですが、セット全体をこしらえるのはしんどいということですよね。なるほどなるほどね。

 というわけで、開幕から1分も経たないうちに、破滅的予算不足を私たちは教えられる。このスピード感はとても大切で、観てる途中で「あれっ予算不足か……?」と気がかりになるよりも、最初の時点で「なるほど予算がないんだな〜!」と知っておいた方が、こちらもそれ相応の覚悟を決められるというもの。

 その後も、ゼウスがヘラクレスの様子をチェックするため用意した水晶がただのメッチャでかい電球だったり、ヒグマが着ぐるみだったりします。着ぐるみなのは別にええですよ。でも、ディズニーランドで見るミニーマウスみたいな大きさなんですよね。ヒグマをみてよ。

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 画面 暗ッッッ!!!

あなたを脱力させ続ける劇伴!!環境音も

 劇伴音楽にも触れておきましょう。本作で流れる楽曲はすべてマンドリンの音色で統一されており、特にメインテーマは耳に残るポップなメロディで私は好きなんですが、いついかなる時もマンドリンなので全身の力が虚脱していきます。ホンマにいつでもマンドリン。状況的に緊迫感がほしい場面でもマンドリン。「フィレンツェのおいしいパン屋さん」「世界のわんちゃんねこちゃん大集合」的な雰囲気がぬぐえません。でもまあ、コメディだからこれでいいんですけどね。

 あと気になるのは環境音ですね。「えっ環境音は入っちゃうものでしょ?」そうなんすけど、むしろ入っていないと不自然だったりもするんですけど、天界で車のクラクションが聞こえるのは笑っちまいますよ。でも撮り直せ!というわけにもいかないんですよね、フィルムもタダじゃないですから……。

 でもまあ、コメディだからこれでいいんですけどね。いいのかなあ。

 ちなみに絶対鳴ってはいけない場所でクラクションが鳴る場面は何度もあります。正しい回数をはがきで送って、ヘラクレスグッズを当てよう!!

予算がなくてもキャラは立つ!!登場シーンにこだわりを見た

 基本的に脚本はグダグダなんですが、人物設定にもあやふやな部分があり、総合的に見るとふわふわです。

 プレッツィはそこまでブレないです。小心者ながら度胸はあり、時にはヘラクレスと一緒に悪いことをするけど、ピンチの時にはかばおうとしてくれる。マイルドヤンキーの先輩後輩みたいなもんです。

 ヘラクレスのニューヨークでのガールフレンド・カレンは「ヘラクレスぅ!?頭おかしいよあんなヤツ!!」とキレまくった次のシーンで「今日のデート楽しかった♡」なんつってて怖いです。

 カレンの父親(教授)に至っては「あのヘラクレスってのは面白いやつだね~興味深いね~いいよいいよ~」とか言ってるだけで何のサポートもしてくれず、存在意義がありません。いいよいいよ~。

 逆に、ものすごいキャラ立ちしてる人物もいます。たとえば、ヘラクレスを冥界に連れて行こうと暗躍するプルートー。

 この映画では、実は現代においても神々が人間界に干渉していることが冒頭で示されます。実際、ヘラクレスより先に地上に来てるやつもいれば、あとから来るやつもいる。で、ヘラクレスはゼウスに雷とともに落とされてしまってますが、他の神は普通にヘリコプターに乗ってきたりするんですよ。対してプルートーは冥界に住む神なので、地下鉄からやって来ます。この対比は結構好きです。

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 このシーンは正直むっっっちゃかっこいいです。むっっっちゃかっこいいんですが、このプルートーさんは色んな人に「また会うことになる……」と言っておきながら、その後二度と登場しません。ぱちこいてんじゃないよ。

 チョイ役でもちょっとした決め台詞があったり、お話の中にはギャグの天丼もあります。脚本や演出に難があるとしても、最低限守らなければならない設定のルールをつくり、その中でキャラクターの魅力を引き立てようとする。そういう部分も確かにこの映画にはあります。

 教授はいる意味ないけどね。
 ※教授役のジェームズ・カレンは「バタリアン」でメチャクチャ活躍してはるので、バタリアンを観てください。

チープ=バッドではない!!唯一無二のシーンを観よ

 そういうわけで「SF超人ヘラクレス」を語らせていただきました。これまでに何回も観ていましたが記事を書くにあたってさらに2回観なおしています。はじめは、鑑賞中のツッコミどころを箇条書きにして紹介していくつもりでしたが、20ページぐらい必要になることがわかりましたので、こういうカタチにしました。

 色々言ってしまいましたけど私はこの映画が大好きなんですよ。

 近場のロケで全部解決してたり登場人物の言動が支離滅裂だったり撮影が難しい箇所をごまかしでしのいだりしてますが、でも「面白い作品を作るぞ~~!」という気概は不思議と伝わってきます。愛があります。愛があるから、ふとまた観たくなるのです。

 特に、終盤には「カーチェイス」の場面がありますが、ここでの映像体験は他の作品では味わうことのできないものです。スタッフの熱意が欠けているならこんなシーンは生まれていないはずです。

 お粗末なコメディ映画と切り捨てるにはもったいない作品です。私のようにツッコミどころを探し続けてもいいし、ヘラクレスとプレッツィの友情物語と捉えてその成り行きを見守るのもいい。あなただけの楽しみ方を見つけてくださいね。教授はまじで意味ないですけどね。

 ここまで読んで「なんか気になるな~」と思った方は、観たらハマると思います。話の導入部分だけみると「ソー」と似てますから、「ラブサンダーが観たいけど映画館1800円って高いよ……」とお悩みの方は「SF超人ヘラクレス」を選んでみては? AmazonPrimeなら100円で観られますよ! これは48時間レンタルの形式なので、その気になれば100円で32回、1800円払えば576回視聴できますが、1800円持ってんなら「ソー」観に行った方がいいですよ。

 それでは今回はここまで!
 読んでくださってありがとうございました!!

「SF超人ヘラクレス」HERCULES IN NEW YORK
(1970年・アメリカ)

監督:アーサー・アラン・シーデルマン
脚本:オードリー・ウィスバーグ
音楽:ジョン・バラモス
出演:アーノルド・ストロング(シュワルツェネッガー)
   アーノルド・スタング
   アーネスト・グレイブス
   ジェームズ・カレン ほか

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Twitterにて「おい犬」「縦読み発見コーナー」など他の追随を許さないコンテンツに取り組み続け、孤立する。好きな映画は90年代までのディズニー長編アニメ(特に『眠れる森の美女』)と『陽炎座』。 Twitter: @manimaniwani note: https://note.com/harumaniwani

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