最近のティム・バートン監督事情!35年ぶりの『ビートルジュース』新作前に起きたディズニーとの決裂や大成功作品の登場とは?

ネジムラ89

 35年ぶりというびっくりするほどの期間を経て、映画館に『ビートルジュース』が帰ってきます。2024年9月27日から『ビートルジュース ビートルジュース』が公開されました。

 監督を務めるティム・バートンさんももちろん前作から再登板。唯一無二と言っていい独特なストーリーセンスやキャラクター造形を今回も体験できます。それにしてもここまで続編の制作まで間が空いてしまったのはなぜなのでしょうか。最近のティム・バートン監督のお仕事を振り返りつつ、監督の“今”や“これから”を見据えていきます。

実はずっと前から企画が存在していた『ビートルジュース』続編

 『ビートルジュース』の後続企画自体はこれまでなかったわけではありません。1988年に公開され大ヒットとなった直後の1989年には早くも『ビートルジュース』のTVアニメシリーズが作られたり、映画を題材としたゲームがリリースされたり、各地のユニバーサル・スタジオのアトラクションに登場したりと映画に収まらない分野へと活躍を広げていきます。

 『ビートルジュース』はそれほどの成功作となったので映画のヒットの直後から、続編映画を制作するという企画自体は上がっていました。しかし、すっかりヒットメイカーとなったティム・バートン監督は『バットマン』シリーズなどビックバジェット企画をどんどん手がけていくようになり多忙さを増していくと共に、『ビートルジュース』は納得のいく脚本が完成しなかったりと難航して企画の実現がどんどん遠のいてしまっていました。

ディズニーとの決裂!実写版『ダンボ』の異様な内容

 ではなぜ急に『ビートルジュース』の企画が再び軌道に乗ったのか。それは最近のティム・バートン監督の動向からも見えてきます。
『バットマン』シリーズ以降も名作映画を数々送り出してきたティム・バートン監督。『シザーハンズ』、『マーズアタック』、『ビッグフィッシュ』、『チャーリーとチョコレート工場』などなど上げていけばキリがないほどさまざまなテイストの名作がワーナー・ブラザースやパラマウント、ソニー・ピクチャーズなど各所の映画制作会社から送り出されていきます。
 そして10年代に入るとついにウォルト・ディズニー・スタジオ系列からも長編映画が公開されていきます。『アリス・イン・ワンダーランド』や『フランケンウィニー』、実写版『ダンボ』などなど、記憶に新しい活躍の多くがディズニー制作となっています。

 ティム・バートン監督とディズニーの縁は古く、80年代の頃にはディズニーで映像制作に携わっており、この頃に長編映画『フランケンウィニー』のベースとなった短編映画などが生まれています。そういう意味ではディズニーは一番長い縁のある制作会社と言えます。

 そんなディズニーに対し、2022年にティム・バートン監督は決別とも受け取れる発言をフランスのリュミエール映画祭での記者会見で発しています。

Tim Burton Addresses “Surreal” U.K. Politics; ‘Beetlejuice 2’ & Why ‘Dumbo’ Will Likely Be His Last Film With Disney – Lumière Festival Tim Burton Jamboree Continues

https://deadline.com/2022/10/tim-burtonl-uk-politics-beetlejuice-dumbo-disney-lumiere-festival-1235152608/

 自身をダンボ、ディズニーをサーカスになぞらえ、ディズニーのスタンスとの不和を明らかにしました。
 実はこの実写版『ダンボ』はティム・バートンの発言が“さもありなん”と思えるような奇抜な内容となっているのが興味深いところ。小さなサーカスで過ごしていた主人公やダンボたちが有名な興行師の目に留まり、巨大な娯楽施設に取り込まれていくことになる…..そして、ダンボたちはそこから逃れようと奮闘していくことになります。これらの内容は元のアニメーション映画にはなかった要素で、ティム・バートン監督による大胆なアレンジが加えられた部分です。
 興行師によって買収が進み巨大化していく企業の様子は、マーベル・エンターテインメントやルーカス・フィルム、20世紀FOXを次々と買収していった当時のディズニーそのものとも重なります。よくぞそんな設定を映画のヴィランサイドとして描いたなと『ダンボ』やティム・バートン監督に衝撃を受けるとともに、批判的とも受け取れる内容をディズニーは自社作品としてよくぞ送り出せたと懐の広さを感じたものです。
 結局、2024年現在ティム・バートン監督は『ダンボ』以来ディズニーでの制作をしていません。

『ウェンズデー』のヒット!新たな作品へ!

 ディズニーとの合作を離れたティム・バートン監督。そんな彼がその後に手がけた作品が、今回の『ビートルジュース ビートルジュース』とも近い企画という印象を受けるNetflixのドラマシリーズ『ウェンズデー』です。なにを隠そう本作の主人公・ウェンズデーを演じるのは『ビートルジュースビートジュース』でヒロインに抜擢されているジェナ・オルテガさん。かつては映画の仕事への意識などいくつかの理由から『ウェンズデー』への出演オファーも何度か断っていたことをインタビューで語っていますが、満を持してティム・バートン監督の映画作品への出演を果たすこととなりました。

 そんな『ウェンズデー』の元となる『アダムス・ファミリー』シリーズも、そもそもティム・バートン監督との因縁のある作品です。1991年公開の映画『アダムス・ファミリー』は当初はティム・バートン監督にオファーがかかっていた作品であり、このドラマシリーズは20年越しにティム・バートン監督の『アダムス・ファミリー』を味わえる待望の企画でもあったわけです。ディズニーとの距離を置き、かつて実現しなかった仕事をここにきて再現するような形となっているのが最近のティム・バートン監督です。
 見事なのがこの『ウェンズデー』でもしっかりと結果を残していること。ドラマシリーズのリリース以来、『イカゲーム』や『ストレンジャー・シングス』シリーズなどに迫る視聴記録を獲得していることが発表されており、たちまちNetflixの一ブランドの地位を獲得しました。

まだまだ衰えぬティム・バートンブランド!次はこの作品!

 キャリアは40年を迎えたティム・バートン監督ですが、未だ人気が衰えていないことは昨今の活躍からも分かるでしょう。
 『ビートルジュース ビートルジュース』は米国での興行成績でも、初週末で1.1億ドルの結果を残して、早々に『ビートルジュース』の世界興収の成績を超えてきました。ここからまだまだ数字が延びていくことを考えるとその人気の凄まじさを感じます。
 そんなティム・バートン監督の次回作もすでに動き出しており、前述のドラマシリーズ『ウェンズデー』のシーズン2の企画が動き出しています。2025年にNetflixにて独占配信が予定されており、次回作でもティム・バートン監督・製作総指揮のクレジットが並ぶ作品となっています。今年で66歳を迎えたティム・バートン監督ですがまだまだまだ…..新たな映像作品で私たちを楽しませてくれるのではないでしょうか。

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