本日ご紹介するのは『あなたに触らせて』という映画、この映画の最もフックになっている要素が見出しの通り「口と肛門が逆転している少女」が出るという点なのですが、最初そのような映画があると知った際は『恐怖の口が目女』
のようなギャグホラー作品か…?と思ったのですが、全然違いました。
ジャンル上は「コメディー」作品に分類されていますが、どのような映画なのか紹介いたします。
『あなたに触らせて』(原題:Pieles/英題:Skins)
本作は2017年に第67回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で上映されたスペイン映画で、現在はNETFLIXにて視聴可能です。
監督のエドゥアルド・カサノバは本作で長編監督デビューを果たしています。
「口が肛門少女」サマンサの他、目の無い娼婦や顔が半分垂れ下がった女性、軟骨無形成症で四肢が短い女性などが登場し、それぞれが少しずつ関わりながら自分の幸せを見つけていく群像劇の構造になっています。
そうした身体的な奇形を持つキャラクターを描く一方で、人魚に憧れ自らの脚を傷つける男性や、目のない娼婦を騙し盗みを働く者、奇形愛好家などを登場させ、身体的な問題と心的な問題を対のように描いています。
身体的、心的問わず自分が抱える課題を人との関わりで改善し、各々の幸せを見つけていく…といったありがちなストーリーの映画ではあるものの、キャラクターの造形のみならず非常に印象的なピンク・ラベンダーで埋め尽くされた舞台美術!
この徹底的なパステルカラーでメルヘンな雰囲気を演出することで、キャラクターが直面する社会からの拒絶や残酷な現実が一層引き立つような印象を受けます。
重いテーマを扱い、残酷な描写もありますが、ブラックジョーク的な演出やテンポよく進行するストーリー、77分とコンパクトな映画なので観やすいと思います。
本作は、スペイン・マラガ映画祭2017 オフィシャル・セレクション 長編コンペティション部門ヤング審査員賞やイマジン・フィルム・フェスティバル2017メリエス賞などを受賞している作品で、長編デビュー作でその独特のセンスを発揮したエドゥアルド・カサノバ監督は1991年生まれ(若い!)で俳優としての経験も豊富なイケメンでございます。
YouTubeチャンネルにて多くのショートムービーやMVを公開しており、『あなたに触らせて』に通じるカサノバ監督の世界観を楽しむことができるので、興味のある方はぜひ見てみてください。
普遍的なテーマを強烈なキャラクター造形と舞台美術で描く『あなたに触らせて』。冒頭、突如全裸のババァが出現したり、性器がノーモザだったりする(NETFLIXって結構大らかなのね…)うえ、ラストでとんでもない映像を見せられるので心構えは必要ですが、構えができた方はぜひNETFLIXにてご覧ください!
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