『インセプション』脳に渡辺謙を植え付けろ/マシーナリーとも子映画コラム

ぜんぜん違うじゃん! 脳内『インセプション』

 今回は『インセプション』見たぜ! 前からなんとなく興味あるなーと思ってたけど見てなかった映画だわ。見る前に特に改めて情報を集めたりとかはしなかったんだけど……この映画については上映当時から「難解だ!」と言われてた記憶があった。確か上映時だかテレビ放映時だかに「この映画は夢が何層にも重なっててすごく複雑なんだよ」みたいなことを図解とともに言われてた。そういう記憶がある。その図を見て私は勝手に脳内で『インセプション』の物語を想像した……。
 この映画は夢を扱っているだけあってとても神秘的なストーリーなんだ。主人公は割とフォーマルな格好をしているが……彼はきっと天使や夢魔といった存在で、人の夢の中に入ってその人を救ったりとかなんかそういうことをするストーリーなんだな……と勝手に思い込んでいた。数年間。その勝手に想像したストーリーから「面白そうな映画だな……。そのうち見てみたいぜ」と思っていた。

 で、見たんだけどさ違うじゃん‼︎‼︎ SF犯罪ものじゃねーか! 特に神秘的な話ではない! どっちかというとサイバーパンク……な世界観ではないんだけど、なんかPKDとかギブスンの話でこういうの読んだことある気がするなー的な独自設定ルールSFアドベンチャーという感じの……。えっ、主人公ぜんぜん夢魔じゃないじゃん。うだつの上がらないディカプリオじゃん。で、ストーリーも私はてっきり「あまりに複雑かつ難解なのでモヤモヤする展開がたくさんあり見た者によって解釈がものすごくわかれるがそれが魅力なタイプの映画なのだろう」と勝手に思ってたけど特にそういうことはなくて、ルール設定は複雑だけど割とトントン拍子でテンポよく進むしハラハラワクワクできてスカッとするタイプの映画だった。ぜんぜん想像と違うじゃん! 見る前は「2時間半あるのかー。こんな難しそうな映画を2時間半見たら疲れちゃうかもなあ」とちょっとネガティブになってたけどあっという間に見終わったわ。なんでこうなった?


仕事を依頼した犯罪者集団がスムーズに仕事できるようにエアラインごと買収工作したことをドヤ顔でアピールする渡辺謙(かわいい)
© 2010 Warner Bros. Ent.

 で、ここからさらに勝手な話なんだけど私長い間『インセプション』と『コンスタンティン』が頭の中でゴッチャになってたんだよな……。「なんで!?」って言わないでくれ私にもわからないんだ……。今調べたら公開時期も違うし!! なんで? で、『コンスタンティン』はまああれ悪魔とか天使の話じゃないですか。まあ『コンスタンティン』も見たことないんだけど……。それでなんか、何かが起こって混じってしまって頭の中で『インセプション』は神秘的なストーリーだ……と勝手に思い込んでしまったんだな。うむ。なんだこの身の上話は?
 ちなみに『コンスタンティン』と『インセプション』の区別がつくようになったきっかけはある日DCコミックのクロスオーバーものを読んでたらバットマンだかの傍らにコンスタンティンがいて「へぇー、今まで知らなかったけどコンスタンティンってDCのキャラだったんだ」ってなったからだった。まあその後も『インセプション』について勝手に作られてしまったイメージは消えることがなかったんだけど……。以上、脳内で勝手に作り上げた『インセプション』のフェイクストーリーについてでした。あるいはこれも私の脳に……ディカプリオや渡辺謙みたいな奴らがやってきてインセプションしたのかもしれませんね?(皆さんはここで「うるせーよ!」と言ってください)

頭の中に「渡辺謙はかわいい」というアイディアを埋め込むんだ

眠ったまま宙に浮いてディカプリオたちと紐で縛られてぷかぷか輸送される渡辺謙(かわいい)
© 2010 Warner Bros. Ent.

 マジで映画の内容とぜんぜん関係ない話を長々としてしまって悪かった。映画の話もしよう。この映画は「夢の中に入ってアイディアを埋め込む犯罪を成功させるぞ!」という映画です。犯罪映画なのでカーチェイスや銃撃戦、殴り合いなどがガンガン巻き起こって非常にテンション上がる展開目白押しなんだけど、それでいてそれらの行動は全て夢の中で起こっていることなので登場人物が物語の大半スヤスヤと眠っているのがノンキな絵面でなんだかほのぼのしてしまうという妙な魅力がある。さらに「夢の中で寝て夢を見る」「さらにその先の夢の中で寝て夢を見る」という、惰眠を貪ることが大好きなムービーナーズ読者諸兄垂涎のシチュエーションが展開されるため、血湧き肉躍るアクション展開を見ながら頭の奥底では「この映画見終わったら絶対寝るぞ!!!」という欲望が渦巻くという妙な視聴体験を味わうことができます。だってみんなスヤスヤ気持ち良さそうに寝てるんだもの。

スヤスヤ眠ったままエレベーターの床面にしこたま押し付けられる渡辺謙(かわいい)
© 2010 Warner Bros. Ent.

 この映画でいちばん注目してしまうのはやはり渡辺謙演じるサイトウだろう。正直「また渡辺謙かよ!!!」という気持ちもあるし、特に序盤はテンション落ちつき目のいつもの渡辺謙なので「渡辺謙だなあ」という感じで見られるのだが、だんだんこの渡辺謙、大企業の社長で依頼人というポジションのくせに犯罪者集団に混ざったことでテンションが上昇していき目が離せなくなってしまう。嘘だろ、渡辺謙が……かわいい⁉︎
 中盤、仲間が変装したと思い込んでターゲットの親しい人物(※)に向かってものすごい笑顔で「よっ! まぁ〜た得意の変身かぁ?」と話しかける姿はあまりにキュートすぎて「どうした謙!!!!!!!!」と叫んでしまうこと請け合いです。君はもう渡辺謙に夢中だ!!

※正しくは「ターゲットの親しい人物を模した夢の中に出てくる潜在意識」……NPCみたいなもの

 そして驚くべきことにこの映画、主人公のディカプリオには愛する妻がおり、その妻も物語の最重要人物として映画の終盤まで出ずっぱりなのにも関わらず……正ヒロインが渡辺謙なのだ! いや、マジで。「視聴者にとっての真のヒロイン」じゃなくて物語上でも「こんなの渡辺謙が正ヒロインじゃねーか!」って椅子からぶっ倒れるような話なの! 私は何を見せられているんだ?
 というわけで『インセプション』、渡辺謙に感情をズタズタにされてしまいたい人類にはおすすめです。あと先述のサイバーパンク物とか『ジョジョ』とかの能力者バトルみたいな、「てめーのルールの中で頭を使って工夫して戦う展開」が好きな人にもおすすめ。仲間探しパートとか楽しいよ!

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