映画史上最高のカルト映画三部作と呼ばれる『死霊のはらわた』シリーズ!
まだ観たことがない方も「手がチェーンソーのやつ」「めっちゃ血でるやつ」「死者の書」あたりの要素はなんとなく知っているのではないでしょうか?
今回は『死霊のはらわた』シリーズ未視聴の方向けにどんな映画なのかを紹介します!
『死霊のはらわた』シリーズ概要
1981年に公開された『死霊のはらわた』(原題: The Evil Dead)から始まり、87年公開の『死霊のはらわたII』(原題:Evil Dead II )、93年の『キャプテン・スーパーマーケット(死霊のはらわたIII)』(原題:Army of Darkness)が一連のシリーズで、監督は後にスパイダーマンシリーズの監督に抜擢されたサム・ライミ、主人公アッシュは全作ブルース・キャンベルが演じています。
1作目と同タイトルの2013年公開の『死霊のはらわた』(原題: Evil Dead)はリメイク版で、『ドント・ブリーズ』で知られるフェデ・アルバレスが監督を務めました。
そして2015年、アッシュが主役の正当続編『死霊のはらわた リターンズ』がドラマシリーズで公開されました。
『新・死霊のはらわた』や『死霊のはらわた 最・終・章』はシリーズと無関係の作品で、邦題でシリーズ作品っぽく見せかけているアレ(沈黙シリーズとか、続 荒野の用心棒とか)なのでご注意ください。『死霊の盆踊り』も無関係です。
シリーズの繋がりについて、1(無印)→2→3(キャプテン・スーパーマーケット)→リターンズのような時系列で進むわけではなく、1は単独作品、2は1のセルフリメイク的作品で、また3の始まりが2の終わりと異なるため直接的にはつながっておらず、リターンズも2からの続編という扱いになります(シーズン1制作時に3の使用権が得られらなかったことも関係)。
2013年のリメイク版も3部作との関連はありません。
そのため極端な話、どこから観ても良いわけですが、それぞれの作風やキャラクターの違いを楽しむために公開順で観ることをお勧めします。
伝説の1作目『死霊のはらわた』(1981)
サム・ライミが中学生の頃からの友人ブルース・キャンベルと組んで制作した長編デビュー作『死霊のはらわた』(1981)
山小屋で遊ぶ5人の若者達がうっかり「死者の書」を読んでしまい、森に封印されていた死霊が蘇りアッシュ一行を襲う。といった内容で、蘇った死霊に取り憑かれると恐ろしい形相になり狂ったように暴走することから、ジャンル分けとしてはゾンビ映画として扱われる場合が多いです。
「スプラッター」というワードが国内でキャッチコピーとして初めて使用された映画が本作で、死霊に取り憑かれた人間を倒すにはこれでもかというほど全身をバラバラにしなければならないため血がバッシャバッシャ出るような徹底したゴア描写が特徴です。
コマ撮りクレイアニメも用いながら表現されるそうした過剰なゴア描写や「死霊目線」を演出した大胆なカメラワークを特徴とした、低予算なインディー映画ながらもアングラな魅力が詰まった作品です。
エンパイア誌が発表した「最高の米インディペンデント映画50本(50 Greatest American Independent Movies)」では15位にランクイン!(死霊のはらわたIIは5位!)
後のシリーズではコミカルなヒーロー像を確立していくアッシュも割と普通の青年として描かれるため、今観ると逆に新鮮な印象も受けます。
ホラーとコメディのバランスが最高!『死霊のはらわたII』(1987)
1のセルフリメイクをしつつ、トンデモ要素をこれでもか!と追加したのが本作です。
冒頭で1作目と同様の内容を高速で展開しつつ、その後は主人公アッシュの手に悪霊が取り付き、自らの手と戦う名シーン(ブルース・キャンベルの演技がすごい)や、その取り憑かれた手を切り落としチェーンソーを装着するトンデモ展開が繰り広げられ、その後タイムスリップするなど、1作目とは打って変わって全体的にコメディ要素が強い作品になっています。
予算集めに苦労し、低予算で制作された1作目に比べ、予算が潤沢になったこともあり派手な演出も多く、尋常じゃない量の血が吹き出るのも非常に楽しい。チェーンソーとショットガンで戦うアッシュのヒロイックなイメージも本作が原点です。
ただし、死霊に襲われたり、自らも取り憑かれたりするような過酷な状況の中見えるアッシュの狂気や死霊との死闘などホラー要素も濃く、恐怖と笑いの紙一重感が非常に心地良い映画に仕上がっています。死霊のはらわたシリーズを「ホラーコメディ」作品としてイメージづけた本作は、後の続編『リターンズ』にもつながっていくシリーズの根幹とも言える作品なので最優先での鑑賞をお勧めします。
完全なコメディー作品!『キャプテン・スーパーマーケット(死霊のはらわたIII)』(1993)
邦題がおかしなことになっていますが、アッシュがスーパーで働いているのでこんな邦題です。原題は「Army of Darkness」
本作は良くも悪くも完全にコメディ作品になっており、ホラー要素はほぼありません。
まず、オープニングで「Bruce Campbell VS Army of Darkness」と表記され、完全に遊んでいます。
中世にタイムスリップしたアッシュがショットガンや現代科学の知識を駆使して死霊軍団と戦う、2作目以上にトンデモ映画になっています。
「俺の名はアッシュ、奴隷だ」という凄まじい自己紹介や、中世の人々をビビらせるために発砲し「こいつはショットガンだ!」と叫ぶ、非常にアホなアッシュを楽しめる本作。
『リターンズ』における抜けているアッシュのキャラクター性は本作のアッシュから持ってきているように見受けられるので、先に観た方がより深く『リターンズ』を楽しめると思います。
しばらくDVDにプレ値が付いていて入手しづらかったのですが、2019年にブルーレイが発売され、現在非常に観やすくなっているので、ぜひご鑑賞ください。
フェデ・アルバレスによるリメイク作!『死霊のはらわた』(2013)
2013年公開のこちらは『ドント・ブリーズ』や『蜘蛛の巣を払う女』の監督として知られるフェデ・アルバレスの長編映画デビュー作です。
本作は、オリジナル版とは設定もガラッと変更しており、主人公は薬物依存の「ミア」。そのミアのリハビリの為に山小屋を訪れた若者達を死霊が襲うといった内容になっています。
地下室、大量の血、死霊視点のカメラワーク、木に襲われる、チェーンソー、死者の書などオリジナル版の象徴的な要素を踏襲しつつも、コメディ要素がほぼ無くホラー作品として徹底しているため『死霊のはらわたII』以降の作風をイメージしていると痛い目を見ます。
というか映像的にも「痛い」映像が多く、血がピューピュー出て「やりすぎだろ」と笑えるオリジナル版と比べてリアルに痛そうな映像(顔面に注射器が刺さりまくったり、顔面にネイルガンで釘を打ち付けたり)が鮮烈です。
終盤はかなり「はらわたっぽい」展開になり、「おなじみのあの人」の登場もあるので、見て損はないと思います。
中年アッシュが帰ってきた!『死霊のはらわた リターンズ』
全体的に漂うB級感はオリジナル三部作や、サム・ライミが『スパイダーマン』でメジャーな監督になる以前にプロデューサーとして携わっていたドラマを彷彿とさせる本作。
『死霊のはらわた』の特徴である死霊視点のカメラワークや派手な特撮(血がバッシャバッシャ出ます)等アナログな演出も取り入れられ、オリジナルの『死霊のはらわた』テイストに溢れています。
30年前は、まぁ好青年と言えなくもない青年だったアッシュもおっさんになり、たるんだ腹をコルセットで縛ってごまかし、嘘の武勇伝を語りナンパした女性とトイレでセックスするような毎日を過ごしている。
そんなアッシュがクソしょうもない理由で死闘の末に封印した悪霊をうっかり解き放ってしまう…そんなダメなおっさんとなったアッシュの物語が本作です。
シーズン3まで制作され、各シーズン10話ずつ、合計30話で完結した本作。
1話あたり30分前後で構成されているため、海外ドラマとしては比較的コンパクトで入門にもおすすめです。
当初はhulu独占配信でしたが、現在はNETFLIXにて視聴可能です。
MARVELヒーローとも共演!スピンオフ作品群
日本では未発売のゲーム作品をはじめ、映像作品外にも広がるはらわたワールド!
『リターンズ』の公開に併せて、『Dead by Daylight』に登場したのも記憶に新しいですが、コミックでは原作映画やゲーム以上にやりたい放題のアッシュ…
例えば、ホラー映画界のアイコン的二大キャラクターの死闘を描いた『フレディVSジェイソン』にアッシュも混ざっちゃった『Freddy vs. Jason vs. Ash』
ゾンビ感染が広まりヒーローもヴィランもゾンビ化してしている世界を描くMARVELの人気シリーズ、『マーベル・ゾンビーズ』(Marvel Zombies)とのクロスオーバー企画『Marvel Zombies vs. The Army of Darkness』
こうしたメジャータイトルとのコラボ以外でも、1990年に公開したサム・ライミ監督作のヒーロー映画『ダークマン』や人気アメコミシリーズ『ヴァンピレラ』との共演、変り種としては死霊軍団から「オバマ大統領」を守る『Army of Darkness: Ash Saves Obama』
KISSのメンバーと共闘する『Kiss/Army of Darkness』といったトンデモコミックも存在します。
『死霊のはらわたII』以降のコミカルでヒロイックなキャラクター像や、時空を超える「死者の書」の力が他作品とのコラボに非常に親和性が高く、かなりフットワーク軽く他作品のフィールドに出現するアッシュ。
映像作品でのアッシュのイカす活躍に惚れてしまった方はこういったスピンオフ/クロスオーバーも手に取ってみてはいかがでしょうか。
今後どうなる!死霊のはらわたワールド
先日、新作映画が『Evil Dead Now』というタイトルで製作されており、また、新たな脚本・監督として『ゴーストトレイン』(2013)や『ホール・イン・ザ・グラウンド』(2019)のリー・クローニンが起用されていることが明らかになりました。主人公も新たな女性主人公を据え、アッシュ不在、ライミ&キャンベルもプロデューサーとしての関与に止まるとのことです。
新作への期待も高まる一方で、オリジナルのようなコメディ路線かリメイク版のようなホラー路線かどちらに舵を切るか未知数のためやや不安も残ります。
一方、『ドクター・ストレンジ』続編の監督に抜擢されたサム・ライミ監督。
スパイダーマンシリーズでもちゃっかり全作カメオ出演を果たしていたブルース・キャンベルはMCUにも出演してしまうのか!
ドラマシリーズの展開や、奇妙なクロスオーバーでここ数年ホットなはらわたワールド!ぜひ新作公開前に触れていただければ幸いです!
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