ネトフリオリジナルは実験場だ
地上波で観られないようなアニメやドラマ等様々な作品が生み出される一方で、継続されず流星のように消えていく作品が多々ある。2022年中にキャンセルされた作品は20作品以上にも及び、その中には話題になった作品もチラホラ…。
例えば、以前ムービーナーズでも取り上げた洗脳アニメ『ミッドナイト・ゴスペル』のシーズン2はひっそりとキャンセルされてしまった。
確かに、万人受けは絶対しない作品ではあるんですが、2020年当時かなり話題になったのもあり意外な決断に感じる。
他にはウェスカーが黒人になったり、合成用にペイントを開いているのがバレたりして物議を超醸した『バイオハザード』も即キャンセルされてしまった。これは、正直打倒かも。
アニメやゲームの実写ドラマ化が多いネトフリだが、2021年には『カウボーイビバップ』が僅か3週間と異例な早さでキャンセルされたというのも記憶に新しい。正直ネトフリオリジナルは企画こそ良いのに、やや見当違いの方向性で作品を輩出しては捨てていくという印象が強い。
冒頭で実験場と言ったが、その実態はいたずらにコンテンツをこねくり回しては作品の出来とは別に数字だけで判断し捨て去っていく遊び要素の無いコンテンツの墓場だ。
その中には『ミッドナイト・ゴスペル』のようにカルト作品に成りえるはずだったコンテンツも沢山ある。今回紹介するのはそんなカルト人気を持ちえる可能性があった2019年の終末青春ドラマ『デイブレイク ~世界が終わったその先で~』
まさに『実験的』ともいうべき表現
ある日突然ミサイルが落ちてきて、人類が死滅した!…わけではなく大人とパグはゾンビのようになってしまった。高校生以下の若者たちはその影響を受けなかったためそれぞれのグループを作り街で勢力争いを始める…。
主人公のジョシュはそんな終末世界で生死不明の恋人サム
予告ではまさに青年たちがワチャワチャして、思い思いの武装をしているあたり「コメディ版マッドマックスなんだろうな」という趣なんだけど…
そうだけど…そうじゃない!
この作品まず1話の時点で痺れたのだが、キャラクターが第四の壁をバンバン超えてくる。
コメディ要素が強い作品だからっていうのもあるんだけど、ガンガン画面のこちら側に話しかけてくる。しかも、更に良いのはその壁を越えた状態でシームレスに回想に入る演出が本当に…良い!
『生半可な見せ方はせずに、面白い表現を盛るぞ!』みたいなものを画面上からバリバリ感じ、映像の構成や構図もヘンテコで悪い表現になるかもしれないが作品全体に青さをどこかに感じる。
そう、青春ドラマではあるが制作側にも青さを感じる事の出来る作品でそれが見事にマッチしているのは貴重だったのだ。
オタクカルチャーにもやたら入れ込んでいる
これまた一話の時点でになってしまうが、主人公のジョシュが今の生活を表すのに「グランドセフトオートみたいだ」と言ったり子供の頃ポケモンカードをやって膨大なコレクションがあると発言したり。
その中でも印象的だったのは刀と銃どちらが強いか?という論争になっている所に通りかかった校長が「オーバーウォッチならソンブラを使う。透明になれれば銃も刀も関係ないだろ?」と言い放つ。校長までオタクというか、作品全体がオタク仕様なのも今思うと一般ウケしない要因だったのかも。
でも好きだよね、こういうの…オタクだもの…
映像面だけじゃない!ストーリーと音楽も高水準
ここまでだとハッキリ言えば映像面が尖っただけのありそうな作品。でも、そうではないカルト作品に成りえたと言い切れるのはまさにそのストーリーの優秀さ。
青春モノとして素晴らしいのは当然、ジョシュとサムの物語はどういう決着をつけるのか…そもそもシーズン1で決着がつくのか?と思うかもしれないが、ある種の決着はシーズン1のうちにつく。
その決着のつけ方が素晴らしく、特に8話「フードデリバリー」はなかなかに衝撃的な回だった。一見してしまえばただのなんてことない回に見えるが、物語の根幹を揺るがすような回になっている。
オタク的に言えば「何も言わず8話まで見て!」だ。
そんな作品を支える楽曲も素晴らしく、サントラこそ出ていないが音楽担当のアンドリュー・ロッキングトンがYouTubeにアップロードされている。作品を観た後に存在しないシーズン2を思いながら聴こう。
面白かったし唯一性もあったけどなんでキャンセルするのよ
正直オタクに寄り添い過ぎた部分と尖った演出構成が目立って好きになれない人が居るのも納得できる。それでも日本でもチラホラこの作品が好きな人がいるし、ハマらなかった人でも0点をつけるような両極端な作品じゃない。
切るには早計だったのではないか…とモヤモヤしてしまう。
ネトフリオリジナルは結局どういう方針何だろうか。尖るのか?それとも無難になるのか?
少なくとも現状では「尖ってるように見える無難な作品」だけが生き残ってる印象しかない。それはDevilman Crybabyの頃から薄々感じていたのだけど、冒険心がある作品に見えてそうでもない作品を求めているのかもしれない。
それじゃあ張子の虎だ。
冒頭でも説明した通りネトフリオリジナルは実験場であり墓場でもある。2019年の時点ではまだ「ネトフリは色んなコンテンツを受け入れてくれる」と好意的に取られていた(少なくとも日本のSNS上では)裏ではこういった作品がひっそりと捨てられていった。
昨年ネトフリは業績悪化をし、会員が減少傾向に入った。安心しているあの作品もこれからキャンセルされるかもしれない。
Netflixページ:https://www.netflix.com/title/80197462
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