海外向けガンダムだって! 大丈夫かな(不安)
見たぜ! NETFLIXの『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』。ガンダム好きだから……。
本作はNETFLIX発のガンダム作品というだけでなく、脚本や監督をはじめ多くの海外スタッフも参加しているなど、かなり海外展開を意識した作品となっている。あとは「映像づくりにはUnreal Engine5を使ってるよ!」とかも各所でアピールしてるけど、それはまあ……あんまり見てるほうには関係ないよな。ゲームだったらちょっとはオッと思うかもしんないけど……。だって『 MS IGLOO』見てるときに「なんのソフト使って作ってるのかな?」とか考えなかったもんな。同業者は気になるかもしれないけどさ。
話が逸れました。そんなわけでついにネトフリ発でガンダムだ! 海外で売るぞ! 感がすごい本作、正直見る前はちょっと警戒してました。なんかあんまり……私は好きになれないタイプのガンダムかもしれないな! って気持ちが。正直。
でも見てみたら存外ええやんけ! こんなんでいい。これくらいでいい。くらいのちょうどいい好きのポジションに収まってくれました。いまは結構プラモが欲しいぜ。今日はそのへんの、なにを警戒してたかのあたりも踏まえて話そうかな。
まあそもそも……ガンダムの新作って時点でまあまあ緊張するじゃん! 毎回「楽しめるだろうか……私は……」って不安になる。別に楽しんでる比率の方が圧倒的に多いはずなんだが……。
『ガンダムSEED FREEDOM』のときだって「本当に完成したのか……」「なにが起こるかわからないからなる早で見るか……」って初日の朝イチで見に行ったもんな。どうだったっかって? 帰り道にビックカメラでHGライジングフリーダムガンダムを買って帰ったぜ。
そういう意味だと『ガンダムUC』とか『閃光のハサウェイ』は先に原作読んでたからそんなに警戒心無かったな……。いや『ハサウェイ』はしてたかもしれん。「原作通りじゃなくて『UC』要素盛られてたらイヤかもな…」って思いながら見に行った記憶あるわ。
ていうかまあ、シリーズものだと大体いつも不安ですよね。『ゴジラ』も毎回不安になって速攻で見に行ったりしがちだわそういえば。『仮面ライダー』くらい毎年やってるとそんなに心配しないんだけど……。間隔がマチマチだから不安になるのかなあ⁉︎ ガンダムエース読んで場数を踏めってことか?
で、そんなわけで今回も結構不安な要素あったんですよ!
監督とか脚本が日本の方じゃないし……。なんか「一年戦争舞台でミリタリー感強そう」ってのもなんか……正直印象だけだと「そういうのもう良くないっすか?」って気持ちが割とあったし……。あとなによりやっぱガンダムとザクのデザインがあんまりピンときてなかった。
ガンダムはさ、まあ「好みではないな」くらいで全然いい。「今回はこういう感じでやります!」って主張に満ちてる。攻めてるよな。ジムも含めて「これは超新型の新しいガンダムですっていうより今回の映像化の雰囲気がこうってだけなんです。いやまあ新型? ではあるんですけど……」みたいな……。意思はわかる。あとビーム・サーベルのギミックがかっこいい。
でもザクはな〜。なんかあんまり好きじゃなかったな。なんか、あくまでザクだし……で、それにしちゃ線、多すぎって思うし……。なんかゴツいし……。あとはこれはもう好みの範疇なんだけど俺様はこういう「ミリタリー調だと……リアルで……なんかいい!」みたいな砂埃舞う雰囲気があんまり好きじゃないんだ。でも『ガンダムセンチネル』はリアルってなんなんでしょうね……みたいなのを考察してがんばってるところが好きだし『 MSV』のプラモの説明書に書かれてる文章も好きだな。なんでこのザクがあんまり好きじゃなかったんだろう。このへんは今後もうちょっと自覚して考えながらガンダムに触れていくべきかもしれん。
この無識別型ザクってのもさ、マゼラアタックのフェンダーつけて、それで意味あるんかい2枚重ねてもザクの盾のが強いだろなんなんだとか思ってたわけですよ。うーーん大丈夫かこのガンダム。楽しめるのか。いわゆるノットフォーミーなやつなんじゃねえか?
でもまあ、こういうときって早めに見ないとなあなあで見ないまま時が過ぎそうだから今回も急いで見ましたよ。
ふつうにおもしろくてオモチャも欲しくなったので良かったです
んでー冒頭にも書いたけどこれがまた心配はすべて杞憂でおもしろかったわけです。よかったー!
なんかね、ちょうどよくおもしろいのが気持ちよかったです。
「これちょっとすっごいすっごいすっごい! すごいもの見ちゃった!!!」って感じではなくて「あー いいね。こういうの いいよね。こういうの見るとさ 楽しいよね」って気持ちになれてすごくよかった。前者の体験は後者の体験の上位互換ってわけではなくて、まあすごがるのも結構疲れるじゃないですか。ビビるし。後者の体験の良さってのもあるなと思った。よかったぜ。
なんだろうな、ガンダム好きな人って結構、一枚岩ではないわけですよ。めちゃめちゃ種類あるから「ガンダム好きな人には2種類いてね……」みたいな言い方も良くない、人類はアースノイドとスペースノイドに分けられるわけじゃん? くらい乱暴な物言いなんですけど、すいませんそういう自覚があるうえで言うと超ざっくり無理やり分けると……。
「富野由悠季が見せてくれる人類観……? 愛……? そういうのがいい」という人と、「なんかロボットで……戦争したり……政治があって……そういう感じとあとプラモとゲームが好き」って人がいるわけじゃないですか。両立してる人もたくさんいるけど。まあそういう、なんだ、個人というよりは人格……? ペルソナ……? があって、あるんですけど今回の『復讐のレクイエム』は前者はあんまり無くて9割後者です。つまりプラモっ子ゲームっ子大歓喜な内容となっております。
まず冒頭で「ルーマニア 11月6日──」って出るところからいいよね。オッ! やってんねえ! って思える。11月でルーマニアとかそのへん辺りの話ってことはこれはオデッサ周りで負けてひどい目にあう話なんですね! って脳がチューニングされて頭のなかに『ギレンの野望』のオデッサのエリアマップが表示されて「いま行軍してるのはマップのあのあたりかな?」って思ったりしてしまう。いやルーマニアってオデッサのエリアマップ内に無くて隣エリアとかかもしれないけど(地理弱い)。とにかくそういう風に脳がチューニングされてしまうわけです。もう、ゲームとかやってるとそのへんってすでに「体験」としてインストールされてっからサ……。
オデッサ作戦ってのはジオンにとっては本当にやべえレベルの負け戦で、ここで負けちゃったのがきっかけでズルズル敗戦に追い込まれたまであるくらいの戦いなので、つまりそのあたりが題材のジオン目線の作品ってことは、もうこれからロクなことが起きねえんだな! って予感できるわけです。だから、まあもう、うれしいよね。
あとなんか、私には無い習慣なんだけどNHKの歴史大河ドラマをずっと見てる人の感覚ってこんな感じなのかなとちょっと思った。日付でピン! と来る感じ。私は一年戦争でしかできないです。でもこういう感覚ってやっぱりうれしいよな。
不思議なちょうどよさがある
で、さっきも言ったんだけどなんかこの作品ちょうどいいんだよな。バランスがいい。山本選手。
例えばキャラクターの描写。あんまりいい人すぎたり、高潔な理想家すぎたりとか、あるいはめちゃめちゃ嫌なやつだったりしない。例えば『0080』ほど気持ちのいい男たちだったり『0083』ほど加速した思想の人たちだったり、『IGLOO』ほどいくらなんでも連邦のこと悪役にしすぎだろ! だったりしない。みんななんか……まあいいところも悪いところもあるよなって言う、ギリギリいいラインに立っている。
例えば主人公の相方的にそれなりに活躍する、部下のルショーンがいる。こいつが、見る前はザクの解説文とか読みながら「ああ、若いからビビりやろうで哀れに泣き叫びながら死んだりするポジションなのかなあ」とか思ってた。でも結構、ガッツのあるやつで頼りになるし……かといって頼りになりすぎもせず、適度に愚かで話を引っ掻き回してもくれて、なんというか緩急にちょうどいい人材であった。適度にいいやつで適度にムカつくけどムカつきの元が取れてるのでそんなにムカつかない。君、いいね。
主人公のソラリがまたやたらとバランス感覚があって、なんというかあの世界の中なりでの愚かさというか本人が抱えてる過ち、葛藤、罪の意識みたいなのは当然ある(人間だからねえ)んだけど作劇上というか、ドラマを見てる我々視点での「そういうことするの、無いわー」的な愚かさが無い。いっつも冷静。
そんでまあまあちょうどよく強いので、愚かな部下の失態とか強すぎガンダムの大暴れに対して適度に抵抗したり逃げたりできて、なんかいい塩梅に収めてくれるので視聴者的な「あぁーもっとこうすればいいのにー」という気持ちを抑えてくれるしなんか知らないうちに適度に好感度が上がっている。いいキャラじゃん。
リサイクルセンターの司令を務めているヤザン声の少佐も印象的だ。迷い込んできたソラリたちに「出てって〜」って言ったり、「勝手にザク修理すな〜」って怒ったりするヘイト担当。なんだけどそういった怒りには正当な理由があるし、軍隊ってやっぱ上の人の命令聞かないとヤバい面もあるから筋は通ってる。
ソラリがザクに関して歯向かう根拠もニュータイプ的勘でしかないし、まあグラナダとかの人なら聞いてくれるかもしれないけどオデッサの閑職の人に理解してやれっていうのは酷だよな……。
それでいてやるときにはやってくれるので私のなかではこいつ結構いいヤツです。ヘイト管理がうまいと思う!
ガンダムさんも、ビーム・ライフルが確殺で怖すぎなんだけど、見てると案外サーベル抜いていなさせてくれたり、殴ったり蹴ったりしてくれたりで意外なほどプロレスに付き合ってくれてる感がある。圧倒的に強いけど塩ばっかりじゃないんだよ! 傷ついたジムを懸命に守るシーンなんっかは泣けるね。
敵同士がべらべら喋ってるところを見守るところなんかヌルすぎるんじゃないかと思ったりもするけど、でもパイロットがパイロットだからな。そういうところもあるかもしれない。
あとオタク小ネタの挟み方がちょうどいいよな。
例えば登場人物のなかにやたらパンクで、ちょっとこいつだけ倫理観低めだな……ってヤツがいるんだけどこいつが雑談のなかでしれっと「タイガーバウムにいた頃は……」とか言うんだよ。タイガーバウム。タイガーバウムか……。タイガーバウム出身ならまあ……ちょっと変かもな! みたいな納得がちょっと発生してしまう。変だもんなあのコロニー……。スタンパ・ハロイって宇宙世紀70年代から偉かったんだろうか。10年前くらいならギリあり得るか。
あとザクの修理中にさらっと出る「ルウムのころにマシンガンの口径を変えた……」とかもちょっといいよな。多分旧ザクの105mmマシンガンからザクの120mmマシンガンへの変遷の話をしてるんだと思うんだけど……実際はどうだろうね? 06ザクの開発と120mmマシンガンの開発って同じくらいに終わらせてんじゃねえかなって気がするので実際はルウムよりちょっと早いんじゃない? って気もするけど……でも現場感覚だと「おっ これが120mm、これが新型のザクかー」ってなったのが単にルウムだったのかもしれないし、あるいはそもそもザクマシンガンの話なんかしてなくて歩兵のアサルトライフルの話とかをしていたのかもしれない。この「いまの話で見てるほうはいろいろ妄想できるけど、劇中だとほんとただの雑談なのでサッと聞かされてサッと終わる」感じもちょうどいい。これで延々この話続けられたら「いまその話いいだろ!!! 進めろ!!!」ってなっちゃうもんな
グフカスタムのプラモを出してくれ
個人的には終わり方があっさり……というか「えっ!? それで急に終わりにするん!?」「確かにやることやったけど急に畳みすぎでは」「トランスフォーマーの終わり方かい」って感じでそんなに好きじゃなかったけど、全体的には非常に楽しめたしサクッと見られたのでとても良かった。案外「ただのロボットが出てくる軽めの戦争映画」的にも見られるので「あんまガンダム知らんけどネトフリでやってるから見よっかなー」という人にも見やすい作品だったんじゃないかな。そういう意味では「NETFLIXでガンダムやって外国人スタッフも起用して新しいい流れをやりたいぜ」ってミッションは達成できててえらいんじゃないかなー。いやよくやってると思うぜ。
最初は欲しくなかったザクとガンダムもまんまと欲しくなってるしプラモが再販したら買いたいなあと思います。やっぱキャラものIPはオモチャの販促してもらって買っちゃうまでやってナンボだからね。
でも一番欲しいのはグフです。グフ出して。よろしく。
ザクより強いぜ! ってのがすごい出てたし、でもそれでもガンダムには敵わないって塩梅が良かったし、アンカーのヒートロッドを活かすシーンもあったしで非常に良かった。このデザインのグフカス出してマジで。頼みます。売れると思うよホント……買うからさ! なっ! お願いします。