クリーチャーだらけでドッタンバッタン大騒ぎ!モンスター・ヴァース史上最も知名度の低い『髑髏島』も観てほしいので魅力を解説

ツナ缶食べたい

 皆さんは、『ゴジラxコング 新たなる帝国』はご覧になられただろうか。

 失礼、愚問でした。ゴジラとコングが取っ組み合いの大喧嘩をして、和解したとなればハイローばりに爆走し、結果としてエジプトのピラミッドがボロボロになったり、リオデジャネイロが氷漬けになったりするのだから、これ以上に優先して観るべき映画は他にないと言っていいだろう。

 では、『髑髏島』はいかがだろうか。

 そう、髑髏島。いやいや、『キングコング:髑髏島の巨神』じゃなくて、アニメの『髑髏島』の方。え?知らん?実写じゃなくてアニメのコングのやつ。ってかネトフリ入ってる?違う違うゴジラが出るのはApple+の配信ドラマの方で……マジで知らん???コングのアニメよ?

 ……というわけで、今回は実際に観たという人がなぜか少ないNetflix独占配信アニメ『髑髏島』をご紹介。

 オタクの「あんなこといいな できたらいいな」を叶えてくれる、夢を創る企業レジェンダリー社が製作する一連の怪獣映画ユニバースこと「モンスター・ヴァース」は、実は映画の他にも前日譚となるコミックや、ゴジラが登場し日本ロケを敢行したことで国内でも話題となった配信ドラマ『モナーク: レガシー・オブ・モンスターズ』など、実に多角的な展開をしている。

 このユニバースは映画を追うだけでも問題無く楽しめるのだけれど、『新たなる帝国』に登場するティアマット(ゴジラに殺されるマンダみたいな海竜タイタン)は実はコミック『ゴジラ:ドミニオン』が初登場で、まさかの映像作品への参戦にコアなモンスター・ヴァースファンが熱狂する嬉しいサプライズだったのだ。

 複数の媒体で世界観を広げつつあるモンスター・ヴァースだが、その中でも正史とされる映像作品の一つが、今回ご紹介する『髑髏島』である。本作は『キングコング 髑髏島の巨神』とギャレス・エドワーズ版『GODZILLA(2014)』との間に位置するエピソードで、不幸な事故により髑髏島に辿り着いてしまった若者たちが島の巨大原生生物から逃げ惑う、サバイバル・アドベンチャーとなっている。

 かつて遭遇した未知の巨大生物を追い求め、航海を続ける船長のキャップと日本人研究者のヒロ。その息子にあたるチャーリーとマイクは親友同士だが、チャーリーはあてのない航海生活に疲弊し、大学に進学するという“普通の生活”に憧れていた。

 そんな中、チャーリーは海を漂流していたアニーという少女を救出するのだが、今度はアニーを追って武器を持った男たちが船に侵入してくる。一触即発の状況の中、船にはアニーが恐れる“怪物”が迫っていた。巨大な触手を持つ生物によって、船は大破し沈没。命からがら逃げ切ったチャーリーとマイクが目を覚ますと、そこは巨大生物がひしめく未開の島、スカル・アイランド(髑髏島)だった。

 『キングコング 髑髏島の巨神』を初めて観た際、私はそこに住む未知の生物に驚愕し、ワクワクしたことを覚えている。竹林に擬態する巨大クモ、四つ足で向かってくる巨大トカゲに、海中には大ダコが潜んでいる。人間は銃火器を小脇に抱え島を探索すれど、驚異的な大きさと殺傷力を有する生物たちに蹂躙され、無惨に殺されてゆく。自分がこんな目に合うのは御免被りたいが、日本版のキャッチコピー「この島で、人類は最弱」をそのまま表したかのようなモンスターの大暴れに、不謹慎な興奮を抑えられなかった。

 本作『髑髏島』は、まさにその要素を抜き出して拡大させた一作となる。髑髏島にはまだまだ奇っ怪な生物がウヨウヨいて、宝石に擬態化した巨大アリや砂浜に潜み近づく者をデカい鋏で引きずり込む巨大カニ、海には巨大イカ怪獣クラーケンが住み着き、コイツを倒さない限り海や空路での脱出は不可能となっている。またしても人類は最弱の状況下で、主人公たちは行く先々で巨大生物と出会い、命からがら逃げ惑う。果たして、この魔の島から脱出できるのか―?

 巨大生物の住む島でサバイバルをすることになってしまった不幸な主人公チャーリーは、海洋探検に全力を注ぐ父キャップから離れたがっていて、大学へ進むことを望む普通のティーンエイジャー。他の十代と同じ生活、異性との触れ合いへの憧れを抱き、それが叶わない現状に皮肉を返す毎日だが、野生少女アニーとの出会いを通じて極限状況のサバイバルに置かれても少しずつ笑顔を取り戻していく、悲観よりは楽観的な主人公。

 チャーリーの親友マイクは年上の兄貴分として振る舞いつつ、クラーケンの襲撃で父を失った心の傷、その際に負った胸の傷の両方を抱えながらも、常にユーモアを欠かさないチャーリーとの会話劇はこのアニメから陰惨さを払拭してくれる。

 ヒロイン兼もう一人の主人公であるアニーは、野性的で外の世界を知らない風であり、事実彼女は幼少期にとある事故を経験したことで誰よりも生存能力に長けた少女として成長するしかなく、戦闘要員として頼りない男子共を引っ張っていく存在だ。彼女の相棒である巨大犬ドッグ(本当にドッグという名前だ)は島を生き延びる上で欠かせない戦力かつ移動手段であり、彼女とドッグの馴れ初めやなぜ大人たちに追われているのか、の理由が本作の物語を牽引する縦軸となっている。

 一方、大人サイドで唯一の生存者であるチャーリーの父キャップは、島に銃火器を持ち込みアニーを捜索する謎の部隊と接触する。その部隊を率いる女性科学者のアイリーンはアニーを連れ帰るためにこの危険な島に舞い降りたわけだが、いくら武装したとはいえ髑髏島の厳しい環境は彼らに生存を許さなかった。彼女の『ジュラシック・パークIII』を彷彿とさせるドラマには新鮮味はないかもしれないが、その動機の切実さはモンスターだらけの島に自ら出向く理由には十分だろう。

 我らがコング兄貴は今回も頼れる存在であり、基本的には島に出向いて下等モンスターをむしゃむしゃ喰らっては寝床に帰る生活を送ってはいるが、その強力無比な力は意図せずしてチャーリーたちの助けとなり、髑髏島の王者としてどのモンスターも一目置く存在であることが伝わるようになっている。唯一互角の力を持っているのが海の化け物クラーケンくらいで、最終決戦は陸の王者VS海の王者による熾烈なバトルが楽しめる。クライマックスはまさに『GODZILLA(2014)』における名台詞”Let them fight”を踏襲した展開が待ち受けており、ケン・ワタナベのDNAが強く根付いているところは日本のファンとして素直に嬉しい。

 と、ここまで『髑髏島』がどんな作品であるかを語ってきたわけだが、本作が話題になりにくいタイプの作品である、ということは否定できない。本作のアニメーションを手掛けたのは同じくNetflix『キャッスルヴァニア』『Masters of the Universe』のパワーハウス・アニメーションだが、絵柄が日本のアニメのそれではないことはTrailerを観れば明らかだ。

 また、本作はモンスター・ヴァースの基本設定である地球空洞説についても台詞で触れられるが、本当に「触れられる」程度で、このユニバースをさらに深堀りするような新情報はあまりお目にかかれない。本作の作り手はコングやモンスター・ヴァース世界をさらに押し広げるよりも、不運なサバイバルに巻き込まれることになった少年少女にスポットを当て、今作の思わせぶりなラストシーンを観れば何を描きたかったのかは一目瞭然だが、それが視聴者の期待に応えたものであったかは、本作の知名度が物語っているだろう。

 このように、たとえファンであっても満点を与えられない一作なのは告白しつつも、では本作に時間を割く価値がないと言うと、そこまで貶したくなるような一作とも言い難いのである。

 多種多様なモンスターがひっきりなしに登場し、不用意にそれに近づいた人間たちが右往左往しながら逃げ惑う様は画面越しに観る分には楽しくて、出番は短くともコングのパワフルな戦闘スタイルは他を圧倒し、人間サイドのピンチに現れる彼の頼もしさは実写映画シリーズにも通ずる部分がある。

 チャーリーとマイク、あるいはアニーを挟んだ子どもたちのやり取りも、ジョークや皮肉を交えながらのそれは緊張感を削ぎつつも見逃せない面白さがあり、逢坂良太さんや本泉莉奈さんが担当した日本語吹き替え音声のおかげでそれらを見過ごすことなく鑑賞できるのは、本作への評価を大きく引き上げることとなった。

 そしてもう一つ付け加えるのなら、本作は見やすいのも魅力、ということだ。通常のTVアニメ1話分に近い20~26分尺で全8話と、実にコンパクト。Netflixは2024年4月現在、アニメなら『GAMERA -Rebirth-』や『パシフィック・リム:暗黒の大陸』に『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』、実写なら平成ガメラ3部作に『ランペイジ 巨獣大乱闘』などが揃っており、怪獣コンテンツがたくさん楽しめるようになっている。

 気になっていた作品をイッキ見するも良し、『ゴジラ-1.0』や『ゴジラxコング 新たなる帝国』で怪獣の魅力に目覚めたキッズを英才教育するのにもNetflixは今うってつけのサービスとなっている。その鑑賞予定リストに『髑髏島』も加えていただけたら、モンスター・ヴァースのさらなる発展にも微力ながら貢献できるかもしれない。

 怪獣映画の春の時代が少しでも長く続くように、モンスター・ヴァースでも肩身の狭い『髑髏島』のことを思い出して、再生ボタンを押してほしい。私からのお願いは、それだけだ。

Netflix:https://www.netflix.com/title/81312426

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