鑑賞難度の高いレア映画『アーチ&シパック -世界ウンコ大戦争- 』の誤解を解きたい!

今日、紹介したい映画は『アーチ&シパック -世界ウンコ大戦争- 』という名前の映画です。本作を知らないという人は、いったいどんなイロモノ映画なんだろうとか、いかにもB級映画なタイトルの映画じゃないか、とかいろんなことを思うと思います。
はっきり言わせてもらいます。
私はこの映画がすっごく大好きで、もっともっと広く知られて欲しい高エンターテイメント作品だと思っているということを!

『アーチ&シパック -世界ウンコ大戦争- 』とはどんな映画か

あらすじ

正確な時期も定かではない未来。人類は、中央政府の統治下に置かれた砂漠の真ん中に巨大な都市に人々は住んでいた。地球の資源が枯渇したこの時代では、人の排せつ物が資源として、重宝されていた。政府は排せつ物の生産を奨励するため、市民の肛門にチップを入れて管理を行い、市民に下剤として薬物のアイスキャンディーを支給していた。
そんな中、アイスキャンディー強盗で生計をたてるチンピラのアーチとシパックは、イプニという女性に出会う。彼女は、フロシキギャングと呼ばれる集団によって肛門に特殊なチップを埋め込まれ、驚異的な排便能力を手に入れていた。その彼女を追うフロシキギャング、そしてそれに対抗する政府、さらにはヤクザたちも巻き込んでの戦いがはじまるのだった。

『アーチ&シパック -世界ウンコ大戦争- 』は2012年に日本公開を果たした韓国のアニメーション映画です。本国での公開はもっと早く、2006年に公開されており、6年近くの時間差で日本上陸を果たしたというわけです。製作期間は8年、製作費は3憶5000万円と言われており、大作といっても過言ではないスケールで製作された作品です。
興行的には成功とはいい難い成績だったのですが、第11回SICAFソウル国際漫画アニメーションフェスティバル長編部門のグランプリや、第40回シッチェス・カタロニア国際映画祭の最優秀アニメーション賞などを受賞しており、国内外で評価を受けている作品です。

見どころはキレッキレのアクション

本作の見どころはなんと言ってもアクションシーン。思わず見惚れる戦闘シーンがこれでもかと用意されています。中でも注目は政府のエリートサイボーグである”ゲッコー”。『ロボコップ』をフィーチャーしたこのキャラクターは、圧倒的な戦闘能力を持っており、圧倒的な体術や射撃能力で任務を遂行します。彼がみせてくれるアクションシーンの数々には思わず溜息が漏れます。

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そして、そのゲッコーを相手取るのがこの映画のマスコットキャラクター的存在でもある”フロシキ”たち。薬物アイスキャンディーの中毒と副作用により全身が真っ青になり、体が縮んだうえに排便機能も生殖機能も失ったという、かわいそうな設定のギャングたち。このフロシキたちが見事なまでのやられ役に徹しているところも忘れてはいけません。ある時は撃ち殺され、またある時は刺し殺され、そしてまたある時は爆発に木っ端みじんにされる。それでも必死に薬物アイスキャンディーのために、身を投げ出すけなげなフロシキたちが可愛く、彼らが悲鳴をあげて殺されていく姿には、なんとも言えない快感があります。

副題のようなスカトロ描写はほぼなし!?

キャラクターが撃ち殺されたりといったバイオレンス描写が苦手とかでなければ、ぜひともこの『アーチ&シパック -世界ウンコ大戦争- 』をおすすめしたいのですが、おそらく多くの人が気になるのがこの副題。”世界ウンコ大戦争”というとんでもなくインパクトのあるフレーズですよ。
こんな副題が付いているということは、この映画にはスカトロ描写があるのではないか。出血シーンとかはいいけど、ウンコ描写をちょっと…という人も居るのではないでしょうか。しかし、そんなあなたも安心してください。この映画では物としてのウンコはほぼほぼ登場しません。唯一、世界観の説明のための劇中映像に、ミッキーマウスっぽいキャラクターが排便をするというシーンが数秒登場しますが、それ以外はほぼ皆無。ある意味、挑戦的な内容という意味では必見な内容ですし、ウンコはほとんど警戒する必要はありません。
むしろ、逆にスカトロ描写を期待していた皆様にこそ謝っておきます。申し訳ありません。この映画では期待できるようなウンコ描写はありません。せっかくこのサブタイトルに期待して、この紹介を読んでくれているのかもしれませんが断言しておきます。この映画には排便描写こそ数回あれど、ウンコはほとんど出てきません。
もともと、原題は『アーチ&シパック』というタイトルで、『世界ウンコ大戦争』というフレーズは付いていませんでした。この副題は日本が独自に付けたものだったのです。目を引くためのアイディアだったと思うのですが、作品内容を勘違いさせるような内容なだけに、悪手という見方もできるでしょう。

世界ウンコ大戦争はもっと真面目な由来だ!

そもそも”世界ウンコ大戦争”と言うと幼稚な内容に聞こえますが、あらすじを読んでいただけば分かるように、本作ではあくまでも枯渇した資源をめぐった戦いを描いているわけです。排せつ物を資源とした世界を描いた作品といえば『マッドマックス サンダードーム』があります。同作では豚の排せつ物からメタンガスを得てエネルギーとしていた世界での出来事を描いていました。本作はそんな世界観をパロディした作品とも言えます。設定的なおかしさから、排せつ物を資源とした世界を描いたわけではないということは、把握しておきたいところです。
本作にはそのほかにもいろんなパロディ要素が確認できます。明らかにDCヒーローと思われる衣装や、『エイリアン2』や『ミザリー』のパロディと思われるポスターなども劇中に登場します。そういった画面の隅々にも見どころがあるということも、映画が好きな人にはポイントとなるのではないでしょうか。

観るのも困難!?未配信のレア映画?

そして、一つ大きな問題があります。
なんとこの作品、2020年5月現在、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスなどではまだ配信が行なわれていません。今本作を観るのであれば、ハピネットよりかつてリリースされたDVDを購入するか、レンタルサービス店などを利用してDVDをレンタルするしかないのです。ある意味、観るのも難しい状況となっている映画なのです。
そういった状況も踏まえて、多くの人に知っておいてほしいです。ぜひお近くのTSUTAYAさんなどで見かけたら、貴重なのでぜひ借りてみておいた方が良いということ。そして、VODサービスを提供する側に所属している皆様。ぜひ『アーチ&シパック -世界ウンコ大戦争- 』を配信ラインナップに入れてほしいということ。この2点のお願いをしたところで、この記事を締めくくらせていただきます。『アーチ&シパック -世界ウンコ大戦争- 』に幸あれ。

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