えっえ~!?そんな原作改変アリなの!? NETFLIX版『三体』

マシーナリーとも子

『三体』がネトフリでドラマになったぞ~~!

うお〜! 話題のNETFLIX版『三体』をようやく見たッ!

https://www.netflix.com/title/81024821

「やべっ うかうかしてたらPrime Videoでも『Fallout』が始まる〜!?」と気づいて焦ってガガーッと見ました。急にオタク向けコンテンツをわっと投げかけないでくれ!
『三体』大好きなんだよね〜。原作の第一部が邦訳されたときからずっと追いかけてるよ。『三体X』だけちょっと水が合わなくて完読できなかったんだけど……。

https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014259/
『三体』シリーズ。劉慈欣によるSF小説。本編5冊、前日譚1冊、ファンメード作品1冊がすべて早川書房より邦訳本発売中。第一部は先日文庫版も出ました

さてあのやたらとスケールがデカく、超荒唐無稽な展開を「どけ! 俺はプロの科学者だぞ!」で無理やり言いくるめていた『三体』、映像化でどうなったのか……確かめてやるぜ!
ちなみに先んじて実写化されていたWOWOW版のドラマは未視聴です。こっちのほうが原作に近いっぽいね。

いちおうあらすじを説明しておきます

さて念のため説明しておくと原作小説『三体』は以下のような話だ。

中国人の科学者、葉文潔は文化大革命で物理学者の父親を殺された過去がある。そんな彼女はある日、巨大なパラボラアンテナが設置された謎の基地に配属され、ある特殊なプロジェクトに参加することになる。
それから四十数年後、ナノ・マテリアルプロジェクトを研究する科学者、汪淼は謎の会議に招集され世界中で科学者たちが自殺をし続けていること、そして科学者たちの団体「科学フロンティア」に潜入捜査をすることを求められる。紆余曲折の末、スパイに同意した彼の視界に謎の「カウントダウン」が浮かび上がる。
さらに汪淼は操作のなかでVRゲーム「三体」に取り組むことになる。一連の事件の裏に隠れる人類驚愕の真実とは……。

……と、第一部『三体』のお話はこんな感じです。公式のあらすじを横目で見ながら書きました。

そして第一部で明かされる驚愕の真実を受け継ぎ、第二部『黒暗森林』ではヤリチン男の羅輯が地球の命運を担う大役に抜擢されて七転八倒、第三部『死神永生』では航空宇宙エンジニアだけどふわふわなよなよした女の子、程心がシリーズ最大の超大スケールの旅を繰り広げることになります。

最終的に「ここまでする???」ってところまで話が行ってしまう『三体』シリーズ、わけのわからん概念をぶつけられて呆気に取られることこそSFの、センス・オブ・ワンダーの楽しみだとは思いますがそれにしても〜! という感じで超おもしろいのでぜひ読んでみてくださいね長いけど。私はとくに第二部が好きです。終わり方が爽快で。

改変が大胆すぎるッッッ

で、今回見たNETFLIX版『三体』はというと……

まず映像化は見事のひと言。冒頭でいきなり文化大革命をしっかり見せることから逃げてないし、この悲惨なシーンを見ることができただけで「うーんきっとこのドラマはおもしろいぞ」とちょっと安心することができた。

短編集とかアンソロジーにも収録されてたせいでやたら読まされた人間コンピュータがついに映像化されて感動

VRゲームの部分も見事だ。文章から想像することしかできなかった三連太陽の動きや、それに伴う脱水のプロセスとかも見られたのはうれしかった。あと「古筝作戦」な! ちょっとグロいけどあの様子をじっくり描いてくれたのは感謝だぜ。怖かったしすごかった。

しかし……しかしな! 決して「嫌い」ではないという前置きを置いたうえで言わざるを得ないが……原作改変が大胆すぎるだろッッ!!

すごい。すごいんだよ改変が。

なにがすごいって……まずね、主な舞台が原作では中国だったのにドラマ版はイギリスになってるんですよ。すごいことするなっっっ! いや、どうせアメリカとか飛んだりするとはいえだよ!?

そして先述の通り第一部の主人公的役割を担うキャラはナノ素材の研究者・汪淼という妻子持ちのオッサンなのだが、彼は今回のドラマ版ではオギー・サラザールという女性になりました。えぇ〜!?!?!?!!?!?!?

左がWOWOW版三体の「汪淼」。右がNETFLIX版での汪淼にあたる「オギー」。このふたりは同一人物というか並行同位体ということになる。嘘だろ!?

これだけでもすごいのになんと、オギーの周囲には同じ師に学んだ4人の仲間たちがいる! そして彼らはなんと第二部『黒暗森林』と第三部『死神永世』の主要登場人物をモチーフにしたキャラクターなのです。えっえ〜〜!?!?? やり口が派手すぎるだろ!!!!!!

ほかの作品に無理やり例えるなら「ガンダムの宇宙世紀作品をドラマにします!」って言うから見てみたらホワイトベースでサイド7から脱出するアムロのまわりにアムロとジュドーがいて彼らとは親友って設定になってるというか

あるいは「ジョジョ一部を実写化します!」って言うから見てみたらジョナサンとツェペリさんの横に承太郎と徐凛もいるみたいな、とにかく乱暴なことが行われているッッッ!!! なんで!? なんでただの実写化かと思ったらクロスオーバー作品みたいなことになってんの〜!!

これが羅輯!?
もう程心も出るの!?

しかも原作での羅輯にあたるソールと、先述のオギーは付き合っていたりする。つまり汪淼と羅輯が恋人同士ってコト!? き、気が狂う。

やることに臆面もなさすぎるだろ!

意図はわかるから嫌ではない

たださっきも言った通り、やってること自体に大いにビビりはするし、キャラクターごととか描写ごとの「これは嫌だな〜原作の方がよかったな」っていう好みの差はあれど……全体として「嫌」ではなかったね。なぜかというとそうした「意図」はドラマ本編を見ていれば理解できるし、目的も(少なくとも今のところは)成功しているように思えるからだ。

原作『三体』は結構冗長なところもある小説である。ハッキリ言って各シーン各シーンの描写がすっごい重い。だからツボにハマれば「ページをめくる手が止まらない!」にはなるんだけど、そうでない人は「とてもじゃないが読んでられない。しかもこんなにページ数あるうえに第三部まであんの!?」と気が滅入ってしまうだろう。そしてそういうじっくりとした展開は小説だからこそできる形式であり、素直な映像化にはあまり向いていないように思う。

でも多分このドラマの制作者たちはこう思ってしまったのね。「第一部で挫折しそうな人たちも第二部のアレや第三部のアレを味わうことができればきっと夢中になるのに! 早く味わってほしいよ!」と。そして彼らは実行した。「じゃあ第一部の時点で第二部や第三部の要素も出しちゃおっと!」と。ジョジョ一部を読んで「波紋とか冷凍法のバトルってなんか……おもしろくないよ!」と言ってる人たちにザ・ワールドやD4Cのことを教えるようなもんだ。乱暴だが……理解はできる!

日本刀持った着物来たキャラを早く見せたいの、わかる。わかるけども

また、それぞれの主人公同士に関係性が生じることのシナジーもちゃんとある気がする。原作ではそれぞれのキャラクターのつながりが薄く、「部を跨って人間関係が交わる!」みたいなことも無いことは無かったがそこは重大ではない、時間と宇宙の大河を味わってくれって感じだった。

でもドラマ版では羅輯にあたるソールと程心にあたるジン、雲天明にあたるウィルが親友同士というのが描かれててその描写自体がおもしろいし、原作を読んだ身からすれば今後どうなるんだろう? と思わされてビビった。雲天明の運命のシーンに羅輯が同席して、彼らふたりがジョークを交わしながら涙を流し手を重ねるんですよ! 夢みたいなシーンですごく感動した。

第7話すげ~~~良かったよ。考えてみれば汪淼と羅輯と程心は基本的に同じ時代の人間だし、羅輯と葉文潔、楊冬が顔見知りなのも原作通りだ。そこは無茶しすぎてない

原作ではしれっと「作れるよ」で済まされていた階梯計画の帆について、ナノ・プロジェクトを絡めることで第一部の要素と第三部の要素をガッチリ接着させているのには舌を巻いた。悔しいことに原作改変がうまいんだよこのドラマ! うまくいってるときのスパロボを遊んでいるような快感がある。

第一部の事件が進行してるあいだに第二部第三部のキャラクターも動いていることで彼らに人間的厚みが加わっているのも無視できないところで、例えば原作第三部の主人公・程心は、ちょっとか弱すぎて、ときにはその決断や生き方にイライラさせられることもあった。なんでこんな奴に第一部や第二部のキャラが守ってきた歴史を託さなきゃならんのだ? って気分になることがあった。

だがドラマ版の程心にあたるジンは、かなりタフに描かれているし少し汪淼の要素も割り振られていて活躍が増え、主人公としての格が存分に描かれてる。ここはかなりいい改変だと思ったな。

ただ星をもらっても喜ばないのはちと嫌だったな。原作だとここの程心がかわいいんですが

また、原作ではちょっと感情移入しづらかった程心と雲天明の心の交流についてもかなり尺が割かれていて「もともと親友同士でいまも交流がある」って描写が挟まれるだけで原作時点であった「いや、そうなるか……?」「ちょっとこれ、感動というよりもキモさを感じないか?」となっていた描写が自然に受け入れられるものになっていた。この辺はホント良かったと思うよ。

原作だとちょっとキモかった雲天明がちょうどよく「不幸な青年」になっていたのは受け入れやすかった

大史はちょっとイメージと違ったし丁儀に会いたかった

もちろん好みでなかったところもある。原作の第一部と前日譚で活躍する丁儀が出てこないのは残念だし、ずっと「もしかしてこのインド人……章北海なの!?!?!? イメージとあまりにかけ離れてるが……しかももしかして関一帆でもあろうとしてないかこいつ??」って心配になってるし、なにより原作の大人気キャラ、史強の活躍が薄味になったのも少し残念だ。上司があの人になってるのには膝を打ったけど。

タフなのはいいんだけどちょっとイメージと違うんだよな~~

なによりも史強がベネディクト・ウォンなのがちょっと解釈違いなんだよねー。これはほんと私の解釈違いってだけ、完全に好みの話でしかないんだけど個人的には史強のシルエットはウォンのような「丸」のシルエットではなくカクカクした「箱」のようなシルエットってイメージだったんだよね。既存のキャラクターでいうと『HELLTAKER』の主人公のような……そこでちょっとノれなかったのはあった。

あとこれは勝手な被害妄想そうなんだけどこのドラマ、芥AA出てこなそうじゃないですか!? なんか、いかにも芥AAの要素はオギーに吸収させますみたいな雰囲気がすげーするっ! 大好きなキャラなんだけどなー。いやまだ微塵も出てないからわかりませんけども。

とはいえやはりそれ以上に驚かされ、「なるほどっ!?」と思わされたシーンも多々あった。後半に向かうにつれ心当たりがない改変シーンも見られたし、なによりシーズン1の時点で出し惜しみなく「俺たちは黒暗森林も死神永世もやりまーす!」という気持ちが出ていて好感が持てた。今後が楽しみなドラマであることは間違いないですね。ここまでやるならいっそのことエンディングも改変してくれないかな〜! とすら思っているよ。事件とかはそのままやってくれて構わないからこう、ほらメンツとかをかんとか……お願いします! っていうか打ち切られないで完結するといいねほんとにね! じっくり見守っていこうと思います。

国連事務総長はむしろイメージ通りすぎてビビりました
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