「JOKER」笑い声が超辛い…バットマンの宿敵、生誕の秘密を新たに描いた映画

私はこれまでキマってて人が死ぬ作品ばっかり紹介してるのですが、主に精神世界や幻覚・妄想……といった題材の描かれ方に興味がある訳なのね。
夢もトリップ描写もその一種だと思ってる。
薬物ってのはあくまでその作品内での精神世界を開く鍵でしかないんだな。
以前に紹介した『ミッドナイト・ゴスペル』なんかは作品内で正にそういう話をしている。(ずっとそんな話しかしてない、とも言う)

エンターテインメントって、その時代時代にジャンルの流行り廃りなんかがある。
例えば80年代は、大衆向けにわかりやすい娯楽作品なんかが多かった。SFとかオカルトとか、未知の領域が題材のワクワクするフィクション作品が多かったよね。
映画とかゲームとか、エンターテインメント作品からは、それが公開された当時の時代背景や一般的な人物像が見て取れるのも醍醐味。

どの時代が来ても、みんな心折れる経験や傷つく経験をしたことがあると思う。
その時の身悶えするような感情や心理表現の比喩に”トリップ描写”ってピッタリなのよ。
特に、ハッピーなキャラクタ―より、苦難を受けているキャラクタ―の深層心理を表している演出が多い。きっと、もやもやしたものの方が幸せよりも複雑な感情だからだろうね。

あと、人の”喜び”が普遍的なように、”苦しみ”も普遍的。
だから精神世界ってたぶんどの時代でも出てくる表現なんですよね。

不思議なことに、そういった荒んだり混沌とした精神世界の表現がある作品に”理解された”気がすることがある。
だからたまには、目を背けたいような陰惨な作品を観ることで心が癒されたりもするのです。

そんなわけで、今回はこれをチョイス。

『JOKER』

公開当時、えらく話題になりましたねえ。

私は、DCのやるせない感じとか人間的な苦悩が好きなので意気揚々と観に行ったんだけど。
マーベルのTシャツ着たカップルが入ってきて、出ていくときに物凄い神妙な顔してたのを覚えてる。
別れてないといいけど。

アメリカでは暴動を避けるために映画館が厳重警戒なんかもされたりして…。
日本で、比較的平和に「仕事行きたくない」って毎日喚いている私からすれば考えられないような話なんだけど。
今の世界情勢をみていると、あの判断も頷けるなって印象。

ジョーカー生誕秘話というと、ウォッチメンを生んだアラン・ムーアの作品『バットマン:キリングジョーク』がよく引き合いに出される。

あれもすごく好きな作品なんだけど、この映画は「キリングジョークに限りなく近い解釈の別の世界線」って感じ。個人的に、あえて言えば、だけどね。

あれとの大きな違いは、”バットマンは出てこない”という点。
あくまで”ジョーカーになった時”の話なの。

これってすごいことで。
ヒーローのオリジンとかってよくあるよね。バットマンでも傑作とよく言われてるダークナイト三部作の『バットマン ビギンズ』でオリジンをやってる。
でもヴィラン側のオリジンで、メインになるヒーローが一切出てこないって点からもこの作品の特殊さが伝わると思う。

この映画での、ジョーカーは何の象徴か。
今回のジョーカーは、みんなから崇められている悪のカリスマじゃない。
そう、まだヴィランですらない。この時点でアーサーという一般人なの。
しかも、金もなければ恋人もいない。親の介護に追われてるのに精神的な病を抱えていて良い仕事にもつけない、という正に社会的弱者。

そんな訳で、ありとあらゆる方向から、アーサーのメンタルはドンドン追い込まれていく。
まるでオシャレカフェに貼られたポスターのような色彩で描かれていくその内容はリアルにエグイ
バーン!死んだ!悲しい!わーん!みたいな内容じゃなくて、ほんとにひしひしと「うわぁ…」って言ってしまうような嫌な感じ。

でもね、この映画の恐ろしいところはね「そういうことあるな」って思っちゃうこと。
あるんだよな、そういう嫌なことが続くことって……。

嘘みたいな幸せをずっと持っている完璧なキャラクタ―より、自分と少しだけ違うキャラクタ―の方が共感できたりするよね。
少し上なら手が届きそうで、少し下ならそうはなりたくないという気持ちで。

”誰でもジョーカーになり得る。”なんて触れ込みを公開当時よく見かけた。
でも、そうじゃなくて、誰でもジョーカーを生み出してしまう傲慢さとか勝手さとか、アーサーになり得る不満と孤独を抱いているんじゃないのかな、なんて思う。

特に、私みたいなどっちつかずな人間は、”アーサー”でも、”司会者”でも、どっちにも当てはまるような気がしてるよ。

あの時、アーサーにしてあげられることは何だった?
あの時、アーサーとして出来たことは?

これは、追い込まれたアーサーの視点で進んでいく映画。
全体を通して主人公のアーサー(のちのジョーカー)の精神世界というか、幻覚が出てくる。
それはもうリアルで、正直映画を最後まで観てもどれが現実だったのかわからなくなるほどのものが。

ハッピーなカラーリングと笑顔。
この偉大なコメディアンに大いに騙されて欲しい

……今回はちょっと真面目にライターしてたりして。
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九龍きのこ
ミュージカルを歌って踊る。 海外アニメやら映画やら、尖った作品と可愛い世界観が大好き。なお、可愛いの定義が狂っている自覚は往々にしてある模様。 ジャッキー・チェンを見て中国拳法を始めるも続けられなかった。 オカルト哲学誌、月刊ムーの愛読者。

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