『メガマインド』レビュー/ドMヴィランが本気出す!日本未公開の隠れた良作

大いなる力を責任感ないヤツに与えるとオワリ

――大いなる力には大いなる責任が伴う

『スパイダーマン』に出てくるベンおじさんが作中で言った、スパイダーマンを観たことがある人なら知っているであろう有名なセリフだ。
しかし、このもろ逆を表してくれたヒーローもののアンチテーゼがこの作品、メガマインド。
日本では残念ながら未公開だったが、海外ではかなりのヒットを記録した隠れた良作だ。

メガマインドは悪の天才。彼はいつもメトロシティを守るスーパーヒーロー、メトロマンを目の敵にし、勝負を吹っかけてはボコボコにされる毎日を送っていた。
しかし、ある日メガマインドは予期せずして偶然メトロマンを骨にして倒してしまうのだ。
それからはメトロシティを占領し、思いつく限りの悪事を働くメガマインド。
しかし、なんでも手に入れた彼はなんとも言えない虚無感を感じていた。

宿敵を失ってしまった今、どんな悪事を働いたところで無意味だ、と。

そして彼は、新しく宿敵を作りあげることを思いつくのだ。
かなりのドMじゃないと思いつかないこのアイディア、彼のドM加減に拍手をしたいほどだ。

そして新たな自分をぶちのめしてくれるスーパーヒーローを創り出そうと奮闘するのだが、手違いでダメ男ハルにスーパーパワーを与えてしまうのだった……
努力もせず自堕落な生活をしてきたた無責任な人間に大いなる力を与えたらどうなるか。
大いなる力を無責任なヤツに与えるとヤバい。この一言に尽きる。

ハルは能力を悪用しはじめ、メタトロンを支配しようとし始めるのだ。
自分が悪役であるはずなのに、なぜか悪役が新しく出てきてしまい混乱するメガマインドだったが、事態を収束させるために動き始める。

周囲から認められず、常に悪者扱いされて育ってきたメガマインドは、とうとうヒーローという立場に立ち、悪に立ち向かうのだーー

©2010 DreamWorks Animation SKG, Inc.

スーパーヒーローもののオマージュ

ストーリーとしてはありきたりとはいえ、王道スーパーヒーローものの要素を綺麗に拾いながらもストーリーには起伏があるので、正直期待以上の作品だった。
作中に登場するメトロマンの銅が弱点で他の惑星出身であるという設定などもスーパーマンのクリプトナイトが弱点でクリプトン出身というところをオマージュしているように感じる、本作の主人公のメガマインドはアメコミに登場するような典型的な宇宙人悪役を彷彿とさせる、人間とは異なる青い肌色に後頭部が大きなキャラデザだった。一方、正義のヒーローとして描かれていたメトロマンは今までのアメコミに登場する、白人で筋肉質、かつガタイのいいディープボイスの持ち主というヒーローの典型像を綺麗にカバーしていた。このように従来のアメコミヒーローと比較しながら作品を観ることができるので、DCやMARVELなどが好きな層も楽しめるだろう。『シャザム』が好きな人はきっと好きだと思う。

制作会社は異なるが、イルミネーションの「怪盗グルー」シリーズに出てくるような、子供が考えるようなお茶目心あふれる「悪の発明品」も今作には多数登場するので、そういった童心にかえりながらワクワクしたい時に観るのもオススメだ。

挿入曲も70~80年代周辺のおそらく制作スタッフの趣味なんだろうな、というようなACDC、ガンズ・アンド・ローゼズなどの王道洋楽ロックを詰めこんでいるので、CGアニメーションだが家族揃って観られる作品だと思う。
アメリカでの公開年が2010年だったため、おそらく東日本大震災の影響で日本公開は叶わなかったのだろうが、隠れたマイナー良作なので一見の価値があるはず!

※2020年7月13日現在、NETFLIXにて視聴可能です。
視聴リンク『メガマインド』

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