『スモール・ソルジャーズ』レビュー/『グレムリン』の監督が描くハイテクおもちゃ戦争【NETFLIXオススメ】

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1998年公開の『スモール・ソルジャーズ』が7/1からNETFLIXで配信開始しましたよ!

グレムリンで知られるジョー・ダンテ監督作で、ティーンの頃のキルスティン・ダンストも出演している「おもちゃ同士の抗争」に人間が巻き込まれる。そんな映画『スモール・ソルジャーズ』を紹介します。

スモール・ソルジャーズ(1998)

あらすじ

ある玩具メーカーが大企業グループのグロボテック社に買収され、後にコマンドー・エリートという正義の兵隊と、プレゼンの際、グロボテック社長の一声で悪役扱いされてしまったゴーゴナイトというモンスターのフィギュアを発売した。
ある日、玩具屋の息子アラン(グレゴリー・スミス)は、コマンドー・エリートのチップ・ハザード(トミー・リー・ジョーンズ)とゴーゴナイトのアーチャー(フランク・ランジェラ)のフィギュアを発売前に開封してしまう。だが、フィギュアにはグロボテック社が開発した軍事用のチップが埋め込められており、自由に動き回り、人と会話ができるという代物であった。ゴーゴナイト殲滅をプログラムされたコマンドー・エリートは行動に移るが、そのことに関しグロボテック社に問い合わせたアランは発売前と言うこともあり、まともに取り合ってもらえず、その間にフィギュアたちは人間を巻き込んで戦争を始める。

本作公開3年前(1995年)にあの『トイ・ストーリー』が公開されており、あちらではおもちゃに命(魂)があるような描き方をしていましたが、本作は軍事用のチップによって非常に高度な思考・学習能力を獲得したおもちゃが登場します。現代のペッパーに近い存在ですね。
このおもちゃはそうした高い思考・学習能力はあるもののおもちゃの世界観設定である「ソルジャーがモンスターを殲滅する」という基本プログラムにしたがって動作しており、そのせいでおもちゃ同士の抗争が勃発します。
それに人間が巻き込まれていくというのが基本的なストーリーですが、そうした大味なストーリーの中にホットな要素が詰め込まれ未だにB級映画クラスタから人気の根強い作品です。

フルCGではない故の不気味さとリアルさ

本作ではおもちゃの描写をCG+アニマトロニクスで行っており、本物感が非常に強い。
ストーリー上、モンスター側の「ゴーゴナイト」が主人公と行動を共にし、兵士人形が敵という立場になるのですが、モンスター側も造形が不気味で、敵の兵士も尖ったデザインの顔付きで妙に生々しく動くので、多少愛嬌はあるものの非常に不気味なんですよね…(猫はかわいい)

©︎1998 Dreamworks LLC and Universal City Studios, Inc. and Amblin Entertainment, Inc.

途中、バービー人形を魔改造したアマゾネス軍団も登場して、そのあたりは普通にホラーです。

©︎1998 Dreamworks LLC and Universal City Studios, Inc. and Amblin Entertainment, Inc.

「おもちゃが意思を持って動く」物語の根幹をホンモノで表現しているわけなので今見ても色褪せない魅力があります。
この辺りは、ジョー・ダンテ監督の「グレムリン」の不気味さに通じるものがありますね。
余談ですが『グレムリン』でもミキサーでグレムリンをミンチにして始末する衝撃的なシーンがありましたが、本作でもミキサー(ディスポーザー)で敵を始末するシーンがあり、ジョー監督のが見受けられますね。

ほどよいバトル感、火の玉レシーブとスパイスガールズ

軍事用のチップが搭載され、恐ろしい戦闘力を持つ兵士人形(モンスター側は穏やかなので戦いを好まない)、しかし、所詮はおもちゃなので叩けば壊れるし、武器などもガレージにある日用品をカスタムしたものなので、人間が太刀打ちできないレベルではありません。
このあたりもかなり『グレムリン』と通じるものがあり、兵士が燃えるボールを家の中に打ち出してきた際に主人公の母親がテニスラケットで打ち返して応戦したり、キルスティン・ダンストが芝刈り機で敵を殲滅したり…

©︎1998 Dreamworks LLC and Universal City Studios, Inc. and Amblin Entertainment, Inc.

敵の戦闘力がほどよい調整のためコミカルなバトル描写がとても楽しい作品になっています。ただし、敵も当たれば死ぬかもしれないような武器(ネイルガンやチェーンソーなど)も使うためある程度緊迫感もあります。
本作で非常に好きなシーンが、家に立てこもる主人公一行を包囲した兵士人形達が大音量でSpice GirlsWannabeを流すシーン。

単なる近所迷惑でしかなく、ご近所レベルの「小さな戦争」感が表れているユーモラスなシーンでかなり好きですね。

©︎1998 Dreamworks LLC and Universal City Studios, Inc. and Amblin Entertainment, Inc.

コミック版もめっちゃいいぞ!読んでくれ!

本作、コミカライズされており、作者は『機獣新世紀 ZOIDS』『エイジ’87』で知られる上山道郎先生です。
日本が舞台で、キャラクターもオリジナルという映画とは別物なコミック版ですが、基本的なストーリーの流れは共通でおもちゃ同士の抗争に巻き込まれる少年少女の姿を描きます。
映画と非常に異なる部分として、おもちゃにめちゃくちゃ人間味がある点で兵士人形は「崇高な理念の下行動する兵士」としての高潔さが描かれ、モンスターの代表アーチャーは少年との友情を強く結びます。

映画のようなリアルなおもちゃとしての描写が少ない分、キャラクターとしての密度は濃く、最終決戦もめちゃくちゃ熱いんですよ。
というか、自分はコミック→映画の順で通ってしまったので、当時、映画でのアーチャーのあっさりした感情描写に驚きました。

映画とは異なるものの、かなり面白いコミック版『スモール・ソルジャーズ』、権利の関係で再販は見込めない状況にあり、中古では数万円(現在相場は¥20,000前後)で取引されているなかなか入手難易度の高いグッズですが、何かの間違いでブックオフで100円とかで見かけたら即買いしましょう。

『機獣新世紀 ZOIDS』もアニメ版ゾイドとは全然違う話になっていったものの独自の世界観を広げた傑作だったので上山道郎先生の、既存の設定で独自の世界を作り上げていくような技術の高さに脱帽です。
最近、『機獣新世紀 ZOIDS』も新装版が出たところなのでこちらも併せてお勧めいたします。

傑作B級映画、『スモール・ソルジャーズ』、配信によって観やすくなりましたので、ぜひこの機会にNETFLIXで鑑賞してみてはいかがでしょうか?

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