『search/サーチ』奇抜なだけじゃない!全編PC画面上で展開する映画【NETFLIX配信開始】

2018年に公開され、「全編PC画面上で進行する映画」として話題になった映画『search/サーチ』。
8月7日からNETFLIXにて視聴可能になった本作、リモート○○が普及し、PC画面上で会議や飲み会などが行われるようになった昨今の時勢にもマッチした作品だろう。

search/サーチ』(原題:Searching

あらすじ

物語の全てがパソコンの画面上で進行するという異色の展開による新感覚シチュエーション・スリラー。行方不明になった高校生の娘の行方を探す父親が、彼女が利用していたSNSなどから彼女の知られざる一面を垣間見ることになる。

PC画面上で進行する演出の効果・チャガンティ監督の手腕

監督のアニーシュ・チャガンティは全編をグーグル・グラスで撮影したショートムービー『SEEDS』を2014年に公開し、リリースから24時間で100万回以上再生される大反響を呼んだ。それがきっかけとなりGoogleで勤務していたという異色の経歴を持つ。

そんな奇才チャガンティ監督の映画デビュー作が本作『search/サーチ』なのである。

映像制作において、テクノロジー由来の新鮮さを求めるチャガンティ監督が本作で取り入れた演出「PC画面上での進行」は「アンフレンデッド」(2016)や、最近だと日テレ制作のドラマ『リモートで殺される』でも用いられている手法だが、こうした奇抜な手法を導入した結果「アイディアは良かったんだけど…」となってしまうケースも少なくない。
しかし、本作では「SNSを通じて娘の失踪の理由・犯人を追求する」というストーリーが演出とマッチし、効果的にアイディアが用いられている。

© 2018 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC.

映画の冒頭が「PC」の原初体験から始まり、記録されているホームビデオによって家族の過去と現在を提示したうえで事件へと突入する。
そうした冒頭から主人公デビットの操作するPC画面を通して、主人公への感情移入、映画への没入感が高まる。
Facebookで娘の友人にローラー作戦で聞き込みを行うような地道な調査から、娘のライブ配信のアーカイブまでチェックして事件解決の糸口になる要因を追う主人公にシンクロして、観ている自分も操作の進展に合わせて一喜一憂できるような展開が、見慣れたツールやアプリの操作によって効果的に描かれている。

Facebook、Instagram、tumblr…現代に生きる若者ならばほぼ確実に使っているであろう実際のツールの足跡を辿り娘の動きを追う過程で、自らの知らない娘の姿が見えてくるという娘からしたらネットでの活動が親バレするというちょっと「ウッッ…」となってしまうような展開だが、こうしたツールの使用描写がリアルで映画への没入感が損なわれない点に当時27才で、かつテクニカルなバックグラウンドを持つチャガンティ監督の手腕が発揮されている。

© 2018 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC.
せっかく配信をしても冷やかししか来ないような経験はきっと皆さんもあるはず…

映画のウリでもある「PC画面上のみで進行する」という制約があるものの、face timeでのビデオ通話や、ニュース映像を画面上に映すことで主人公から見たネットの世界以外にも、他者から見た主人公の様子や、大衆の事件の認識も描写され、主人公の視点・認識とのギャップが描かれる点も面白い。

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これらの演出・物語によって、最初は「親父、やめてくれ…」と思いながら見ていた主人公に感情移入し、だんだんと一緒に操作しているような気分にもなってくる構成をぜひ体験してみて欲しい。

ネットの匿名性を利用したホラー描写 ※ネタバレ有り

前述の通り、チャガンティ監督は現代のテクノロジーやネット文化、SNSに肯定的なスタンスが見て取れるが、『search/サーチ』ではそれらのポジティブな面のみならず、ネガティブな面も描写し「あくまで使用者・使い方次第である」点を描いている。

© 2018 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC.

娘のほぼ無観客ライブのリスナー「フィッシュ&チップス」。はじめはアイコン設定がないが、次に現れる時には女性のアイコンが使用され娘とも仲良くなっている。

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終盤明らかになるが、この「フィッシュ&チップス」は女性ではない。
アイコンもモデルの画像を利用したものだった。

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不穏なBGMが鳴り、ライブ配信画面と偶然見つけたモデルの画像を見る目線、そこからアップになるアイコン画像…この一連のシーン、罪のないはずの(むしろ無断使用されている被害者)モデルの顔もなんだか不気味に見えてくる完全にホラーな演出でゾッとする。

この「フィッシュ&チップス」ライブ配信に訪れた初手で「好きなポケモン」を聞いてくる。

© 2018 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC.

それに対し「記憶を消せるし、かわいいから」ユクシーが好きだと答える娘。年齢的にもダイパ世代だろう。冒頭で示される母親との死別が「消したい記憶」で、幼い頃にそうした思いが強まった結果好きなポケモンが「ユクシー」になったことが予想され物悲しさを覚える回答だが、その後逆に同じ質問をされた「フィッシュ&チップス」は「カクレオン」と回答する。

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カクレオンといえば、ポケモンルビー・サファイアで初登場し姿が背景と同化しており、デボンスコープというアイテムによって正体を見破る必要がある特殊なポケモンだ(夢特性でへんげんじざいでもある)。つまり、自分の姿を隠し、使用するSNS毎に変幻自在にキャラクターを変えられるネットの匿名性を表している。
この回答も初見では流して見てしまいそうだが、「フィッシュ&チップス」の正体を知ってから考えるとこちらもゾクッとしてしまうような回答である。

こうした、アイコンやアバター、ハンドルネームを変えることで複数の人格を運用できるのはネットの匿名性の良い部分でも有り、悪い部分でもある。
現実でもよく起こるこうした議題をホラー的かつシニカルに描きつつも、主人公はネットやSNSの利便性を用いて捜査を進めることでネット・SNSの良し悪しは「あくまで使用者・使い方次第である」を描く本作『search/サーチ』を通して、現代でネット・SNSが不可欠な生活を送る我々はその使用法について今一度考えてみると面白いかもしれない。

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