『ルース・エドガー』で見るガチンコ心理バトル、テメエの”ものさし”で俺を測るんじゃねえ…

こんにちは、ヤマダです。
今回は、上映中の映画『ルース・エドガー』を鑑賞したのでレビューを書きたいと思います。

(C)2019 DFG PICTURES INC.

黒人の少年や教師が主要人物なので、昨今ニュースでも取り上げられている「人種問題」をテーマにした作品かと思いきや…。高校生VS教師による、日常に潜む心理バトルが繰り広げられていました。ある意味、難しく考えずに見ても楽しめる心理サスペンス作品です。

『ルース・エドガー』あらすじ

あらすじ

バージニア州アーリントン。白人の養父母と暮らす黒人の学生ルース・エドガー(ケルビン・ハリソン・Jr.)はアフリカの戦火の国エリトリアで生まれた過去を克服し、今は校内一の優等生として皆から親しまれている。そんな模範的な生徒ルースだが、ある課題の原稿に「意見の対立は銃で解決する」と書いたことから、ベテランの歴史教師ハリエット・ウィルソン(オクタヴィア・スペンサー)に、危険な思想を持つ人物として注視される。ハリエットはルースに無断でロッカーを調べると、中から違法の花火が発見された。しかしルースは、ハリエットが教育熱心な反面、生徒にレッテルを貼って自分の価値観を押し付けることが苦痛だとこぼす。この一件からルースとハリエットの間には不穏な緊張感が立ち込めるようになり、養父母もルースをどこまで信用するべきなのか苦悩することになる…。

※ちなみにルースの出身地であるエリトリアはアフリカ東部にあり、「アフリカの北朝鮮」といわれるほどの独裁国家。1993年に独立し、現在は紛争もなく治安も安定しているそうです。おそらくルースが生まれたのは2000年頃(作中のカレンダーが2017年だったような…違ったらスイマセン…)なので、当時は「エチオピア・エリトリア国境紛争」の最中だったと思われます。

エチオピア・エリトリア国境紛争(エチオピア・エリトリアこっきょうふんそう)は、1998年5月6日から2000年6月18日までの間、アフリカのエチオピアとエリトリア間で行われた戦争のことである。発端は国境紛争ではあるが、互いの首都を空爆しあうなど、規模は極めて大きく、犠牲者も多かった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2%E5%9B%BD%E5%A2%83%E7%B4%9B%E4%BA%89

監督・脚本を務めるのは、Netflixオリジナル『クローバーフィールド・パラドックス』(18)で監督に抜擢されたジュリアス・オナー。前作は宇宙が舞台ですが、今作の舞台は監督が学生時代に通った地元です。

主人公ルースの養父母は『ザ・リング』(02)のナオミ・ワッツと『レザボア・ドッグス』(92)のティム・ロスが演じました。

“紛争”や”人種”など、かなりシリアスな言葉が続いていますが、正直これらの情報を知らなくても『ルース・エドガー』は充分面白い…。上半期ベスト5に入る面白さでした。

日常に潜む心理戦がエグい…イヤミス要素もてんこ盛り

(C)2019 DFG PICTURES INC.

『ルース・エドガー』最大の見どころは、優等生ルースとベテラン教師ハリエットによる、水面下スレスレで行われる心理バトルです。

2人とも周囲の評判は良いので、あからさまな嫌悪感は一切出しません。その代わり、会話の節々に「お前絶対相手のこと嫌いだろ…」と思うほどのキツいやり取りを楽しむことができます。ルースに至っては、自分に疑いがかけられていることを逆手にとって、ハリエットを挑発するような言動をサラッと行います。違法な花火を所持していることがバレたのに「僕が1番好きな祝日は独立記念日なんですよ(独立記念日では打ち上げ花火を上げるのが定番)」とか言うし…。

ルースの裏の顔を「過激なテーマを扱った課題」と「違法な花火」から勘付いたハリエットは、自分の考えに一切の疑いを持つことなく、ルースが危険な人物ではないかと決めつけて行動するように。

(C)2019 DFG PICTURES INC.

その一方で、ハリエットは自分の価値基準で生徒にレッテルを貼る(作中では素行不良な黒人学生に「お前のような黒人がいるから、差別は消えない」といったことを遠回しに発言する)クセがあり、それをルースは我慢ならないと言います。

自分の価値基準を疑わない教師と、他人の価値基準で測られることが嫌でたまらない生徒。
2人の心理戦は養父母はもちろん、ルースの友人やハリエットの家族を巻き込んでいきます。そして、ルースがなぜ危険な思想に染まったような課題を提出し、花火を持っていたのか?という答えも明らかになっていくのです。

ネタバレ回避のため多くは言えませんが、イヤミス要素も満載であり、そこそこの部外者なのに何故かパトカーで連行されるなど、マジでイヤミス以外の要素が殆どありません。一応学校が舞台なので、青春要素で緩急つけた演出があるのかなあ…と思っていると、ずっと重厚な演出によって息苦しい思いをすることになります。

ホラー映画にも共通する『ルース・エドガー』流の追い込み演出

私は『ルース・エドガー』を見る数日前に、『オーメン』(76)や『エスター』(09)といった子どもが怖いタイプのホラー映画を見ていました。
そこで気づいたのが、これらの作品と『ルース・エドガー』の共通点です。

それは加害者なのに、(子どもという立場を利用して)被害者ヅラを続けるということです。

これは自分が被害にあっているのに、「相手は子供だから、そんな事するわけない」と誰からも信用してもらえず、被害者が孤立していく構成でもあります。
『オーメン』『エスター』では、周囲の人間が不可解な死や致命傷を追うものの、誰からも「子ども」が原因だと信用してもらえず、主人公が孤軍奮闘を強いられます。

ルースはこの構成を利用しているからこそ、優等生ヅラを下げてハリエットを挑発しているのです。

(C)2019 DFG PICTURES INC.
(この顔である)

さらに、ルースは持ち前の頭脳と顔の広さで巧妙な伏線を張り、ハリエットを追い詰めていきます。それはホラー映画さながらの追い込みっぷり…。下手なスリラーよりゾッとするルースの伏線回収は必見です。絶対敵に回したくない。だってルースは山犬の子どもでも精神異常者でもなく、普通の高校生でコレですから…。

ナオミ・ワッツとティム・ロスの夫婦、また大変な目に合う

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『ルース・エドガー』で、ルースの養父母であるエドガー夫妻を演じるナオミ・ワッツとティム・ロス。2人が車に乗っているシーンを見て既視感を覚えたのですが…。

これ、『ファニーゲームU.S.A.』(08)以来の再タッグじゃん!

【説明しよう!】『ファニーゲームU.S.A.』とは?

『ファニーゲームU.S.A.』とは、1997年に公開された『ファニーゲーム』の監督であるミヒャエル・ハネケがハリウッドでセルフリメイクした作品。その内容はあまりにも不条理かつ胸糞なため、「鬱映画」としてもカルト的評判を集めている。この映画が好きと公言すると、自身の信用を地に落とす可能性があるので注意が必要。私はDVDを持っています。

『ルース・エドガー』でも最初こそ仲良し夫婦でしたが、ルースの一件により夫婦仲は目も当てられないほど悪化していきます。この2人が夫婦役を演じると、ろくなことが起きない…(褒)

公式サイトでも、「ナオミ・ワッツとティム・ロスが『ファニーゲームU.S.A.』以来の再タッグ!」といった打ち出し方をしていないあたり、作品のストーリーなどに類似性はないものの、結構デリケートな問題なのかもしれません…。(ちなみに『ファニーゲームU.S.A.』と『ルース・エドガー』は配給会社が同じ「東京テアトル」)

お前の価値基準で他人を測るな!

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『ルース・エドガー』はキャチコピーにもある”天才か怪物か”以上に、人の価値基準を変えることの難しさ、他人の価値基準で測られてしまう人間の苦悩を描いていると思います。

ルースはなぜ、あんな課題を出して花火まで持ち込んだのか?その動機と結果が分かったとき、ルースへの賛否は大きく分かれると思います。そして、ラストでルースの行動は彼にどんな変化をもたらしたのか注目してみると、本作のエグみがより増すことでしょう…。

すでに首都圏では公開が終了しつつありますが、これから公開する地域もまだまだあるみたいなので、気になった方は是非見てほしいです。見て「うわあ…」て打ちひしがれてほしい…。

ちなみに鑑賞前には公式サイトにある「著名人コメント」を読むのもおすすめです。ここまで全員のコメントに「うんうん…!」とうなずけるのも珍しい気がします。
http://luce-edgar.com/comment/index.html

是非劇場でみて、ぐぬ〜って唸りながら映画館をあとにしましょう!それでは!

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