2018年12月に公開され、平成最後の劇場版仮面ライダーとなった『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』が8月16日よりNETFLIXにて配信開始した。
「仮面ライダー=虚構の存在」ということを物語に組み込んだ異色作であり、所謂「春映画1」的なお祭り要素も含んだ作品である本作。
あらすじの紹介と併せて、ネタバレ有りで見所を紹介する。
『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』
公開当時の現行作品「仮面ライダージオウ」とその前年放映された「仮面ライダービルド」を中心としたクロスオーバー作品で監督は山口恭平、脚本は下山健人、脚本監修は小林靖子がそれぞれ担当した。
ビルドTVシリーズ終了後の「新世界」の様子、ジオウTVシリーズでは描かれなかった「クウガ」「W」のライドウォッチ入手の過程、仮面ライダーがTVで放映されているフィクション作品である世界…と非常に多くの内容が盛り込まれ、上映時間も仮面ライダー映画としては異例の長さである100分という本作。
「MOVIE対戦2010」から続く仮面ライダー冬の映画シリーズ、2016年からは「仮面ライダー平成ジェネレーションズ」と改め、本作『FOREVER』の前年公開の『平成ジェネレーションズFINAL』は登場作品の設定を活かしたキャラクターの共演を描き、ストレートな「ヒーローもの」「仮面ライダー」映画として好評を博した。
一方で、『FOREVER』は仮面ライダーがフィクションのキャラクターであり、虚構の存在であることを強調する展開で「平成仮面ライダー」という20年続いた一大コンテンツを振り返って描くような構造になっている。
現実におけるフィクションのヒーローが持つ役割・意味を問う《ネタバレ有り》
本作では、仮面ライダーがTV放映されておりフィクション作品として楽しまれている世界(≒現実世界)の青年がイマジン(仮面ライダー電王における怪人)と契約し「仮面ライダーに会いたい」という願いを実現する形で、ビルドやジオウのキャラクターがその世界に現れるという展開になる。
この世界は本作の敵役「ティード」が仮面ライダークウガの誕生を阻止し、平成ライダーの歴史が失われたことで生まれた世界のため、我々が生きる現実の世界をそのまま描いたわけではないが、劇中の扱いとしてはほぼ現実と同じである。
仮面ライダーのキャラクターではなくなり、普通の高校生になったゲイツやツクヨミの姿や、登場人物の1人が、武田航平演じる仮面ライダーグリスこと猿渡一海に対して「ビルドの一海?キバの音也?」と質問する様子が描かれるなど、コミカルな描写が多い前半に対し、騒動の発端「久永アタル(写真左)」によって「現実で辛いことがあっても虚構の存在であるライダー(ヒーロー)は何もしてくれない」といった現実でもしばしば議題となる問いが提議され、また自分の存在が虚構なのかと取り乱すジオウ=常磐ソウゴの姿も描かれる。
そうした展開の中で、ビルドこと桐生戦兎の存在が活きており、ビルド本編で「存在しない人間」「作られたヒーロー」であることに苦悩しそれを乗り越えた戦兎は「現実と虚構の差に大した意味はない」と事態を冷静に判断しジオウをリードする役割を果たす。
加えて、仮面ライダー電王における「記憶こそが時間」というテーマに則り、虚構の存在であっても視聴者の記憶に残っていればそこには確実に存在する。フィクションの存在だとしても視聴者はそこから勇気付けられたり、ポジティブな感情を得たりする。という本作なりのアンサーを提示する。
そうした一連の展開の集大成が終盤の平成ライダー総登場シーンであり、仮面ライダーに声援を送る街の人々の姿はこれまで仮面ライダーを応援して、様々なことを学んできた我々視聴者の姿と同一であり、自分を重ねて感情移入できるシークエンスとなっている。
物語や設定の整合性には怪しい部分も存在するが、ファンの声援を受け登場・活躍するライダーの姿には胸打たれるものがある。自分の中でお気に入りのライダーが存在する方やこれまで視聴を継続してきた方は非常に燃える展開となっている。
そうした、虚構のヒーローと視聴者の関係の描き方やビルド本編後の後日談として非常に面白い作品となっている。
電王の役割、佐藤健のサプライズ客演
前述の通り、本作では電王の設定・テーマと同様「人々の記憶」を重視した内容となっており、TVシリーズ以外でも『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』等の劇場版作品でも同様のテーマを軸にした物語がこれまでも描かれてきた。
本作で何と言っても重大な要素は電王の主人公「野上良太郎」を演じた佐藤健の出演である。
情報統制により、出演情報が伏せられたまま迎えた公開初日、劇場で良太郎の登場に驚きの声が漏れ出たしまった方も少なくないだろう。
2008年のTVシリーズ終了後、ほぼ毎年のように電王が登場する劇場版作品が公開されているが、そのほとんどが良太郎不在(もしくは少年姿の良太郎)で、イマジンの直接変身やNEW電王こと野上幸太郎の登場によるものであり『さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』が佐藤健最後の良太郎としての出演となっていた。
様々な憶測がなされ、佐藤健が演じる良太郎の不在が当然の状態となっていた中での佐藤健のサプライズ客演には、多くの電王ファンが歓喜した。
不在が当然となりながらも、野上良太郎は確実に存在しファンも忘れることはなかった。そうした作品のテーマともマッチするメタ的な背景に乗せてモモタロスが投げかける「俺たちもお前を忘れるかよ」というセリフは視聴者の気持ちとシンクロし非常に胸が熱くなるものだった。
単純なファンサービスに留まらず、本作のテーマを象徴するようなやり取りで非常に重要なシーンだ。
全編ウラタロスが憑依した状態での登場となるが、上記のモモタロスのセリフを投げかけられた後に目の色が通常に戻る(良太郎、佐藤健としての応答)のもグッとくる演出である。
電王最終回でのセリフ「いつか未来で」が11年経って実現したような良太郎の登場は必見だ。
ストーリー上疑問も残るが…
本作は敵役のティードの目的がいまいち分かりづらいことやWの要素が非常に薄く取り入れられたことによってライドウォッチ入手の過程やアナザーWの扱いが非常に雑に描かれている点など少々勿体ない点も目立つが、虚構のヒーローの役割やそのヒーローと視聴者の関係性を電王、ビルドのキャラクター・世界観を活かして描いた点は一見の価値がある。
後に公開された『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』でも本作で扱われたようなメタ要素やテーマが盛り込まれており、併せて鑑賞しても面白いかもしれない。
未鑑賞の方はNETFLIXで配信が始まったこの機会にぜひ鑑賞を!
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常磐ソウゴと桐生戦兎の世界に、異変が生じていた。まるで別人と入れ替わるように、仲間たちが次々と記憶を失っていくのだ。さらに、二人の前に現れたスーパータイムジャッカ―・ティード。彼はアナザー電王とアナザーWという強力な手先を差し向け、一人の少年・シンゴを追っていた。シンゴを守る戦いの中で、ソウゴは仮面ライダー好きの青年アタルに出会う。一方ティードに単身戦いを挑んだ戦兎は、洗脳され操られてしまい…。強大な敵を前にシンゴを救おうともがくソウゴたちだったが、そんな中アタルがある告白をする。「仮面ライダーは、現実の存在じゃない。」彼は謎のイマジン・フータロスと密かに契約を結んでいた。その言葉の真意とは一体…?なぜ、いつから、仮面ライダーは虚構の存在となってしまったのか?謎が深まって行く中、ソウゴと戦兎が追うティードの姿は、初代平成仮面ライダー誕生の地・九郎ヶ岳遺跡にあった――。