僕もトーディと友だちになりたい『変身戦士トランストーディ』の世界

かに三匹

この作品は韓国の特撮作品だ。1991年におもちゃ・プラモデルメーカーのアカデミー科学が製作した。

前後編で3時間を超える大作だ。7億ウォン(当時)の予算をかけて制作されたこの作品は、しかし反応が良くなく、それ以来アカデミー科学は自社で映像作品を作る事はなくなったのだという。
最近では日本でも放送された『アーマードサウルス』のスポンサーとなり玩具を発売していたというが確かに制作は大元メディアだった。反応が良くなかったと書いたが、なかなかの力作である反面、なんでこんな要素が入っているの? と疑問を抱く内容でもあり、紹介したい。

ストーリーは、15年前に謎の失踪を遂げた宇宙科学者がいた。李博士はその子供たちを戦士として育成し、超科学力でオルメカエイリアンと戦うトランスマンにする。オルメカエイリアンに星を滅ぼされ宇宙からやって来たトーディも加わりオルメカエイリアンに立ち向かう。主役はトランスマンの5人である。最初は3人で活躍するが途中で5人になる。トランスマンは一言で言えば戦隊だ。トランスドラゴン、トランスタイガー、トランスジャガー、トランスライオン、トランスイーグルの5人で構成される(ネコ科が3人もいるが気にならなかったのだろうか?)。

トランスマンと言えば現在ではトランスジェンダーを思い浮かべる人も多いだろうが、そういった意味ではなく、現代の技術を超えた人といった意味であるそうだ。韓国人の役者と白人、黒人の役者が5人を演じており、国際色豊かな戦隊である。
韓国には、当時、既に『超新星フラッシュマン』(1986年)が1989年に輸入されたのをはじめ、日本のスーパー戦隊シリーズがVHSで発売されており韓国内で大人気となっていた(なんでも最終回にフラッシュマンが宇宙に帰る際には全国の小学生が泣いたというエピソードもあるそうだ)。

地球防衛隊英雄フラッシュ より引用

『変身戦士トランストゥーディ』も、それに影響を受けた作品ではないかと思う。なお余談だが、韓国では、フラッシュマンの人気にあやかって主役がフラッシュマンにそっくりな『地球防衛隊英雄フラッシュ』(1990年)という作品も制作されている。5人のメンバーなのに3色しか色がないというメンバー構成(他のメンバーと同じ色が2人いるのである)に、ロボット戦闘シーンはアニメが挿入されるという作品である。このアニメ部分には『マイクロ特攻隊ダイヤトロン5』(1985年)という韓国アニメが使用されている(このアニメ、当時のタカラの玩具である「ダイアクロン」のロボットが主役で、『装甲騎兵ボトムズ』のスコープドッグに『伝説巨神イデオン』のキャラクターが悪役で登場したりと当時の日本アニメを知っている人が見ると???となる作品であったが、韓国以外でも『スペース・トランスフォーマー』というタイトルで輸出されたのだという)。

話を戻すと『変身戦士トランストーディ』はアクションにも力が入っていて山の造成地らしき場所(ここもスーパー戦隊っぽさがある)や観光地らしき場所で戦う姿は非常に好感が持てる。また玩具メーカーが製作しているだけあって、登場するメカニックの描写にも力が入っている。

ここまで読んだ読者は、「あ、つまり日本のスーパー戦隊の焼き直しなのだな?」と思うかもしれない。確かに、そうした部分は否定しない。だが、この作品に彩りを添えているのはタイトルにも搭乗するキャラクター、トーディである。こいつが破壊力のあるキャラクターなのである。アテナ姫(のちにトランスイーグルに変身することになるマヤのお姫様)が怪しい人物だとトランスマンたちに力づくで連行されそうになる。これが力ずくという表現に相応しい演技でトランスマンは後ろからアテナ姫を羽交い絞めにして銃を突きつける!
リアルと言えばリアルだが、本当に正義の味方なのか、トランスマンのメンバーは!? 

もっともアテナ姫も力ずくで抵抗する描写があるが。そのときにアテナ姫が叫ぶのである。「トーディ!」彼はアテナ姫と友達のカエル型のエイリアンだった。
光の球となって現れた(ここは宇宙刑事の影響?)トーディは、姫を助けるために、たちまちトランスマンたちと互角の戦いを繰り広げる。いや、むしろトーディの方が強いかも?

しかし3人掛かりで襲われトーディは捕まる。誤解は解け仲間になったトーディはトランスマンに負けぬ活躍をする。また地球の少年とも種族を超えた友情を結ぶ。湖のほとりで少年と握手するシーンは感動的だ。というか、前半はトーディが主役ではないかと思うくらいの存在感である。どれほど存在感があるかというと、トランスマンがのんびり釣りをしている間にアテナ姫を襲ってきたオルメカエイリアンに攻撃され、あっさり、死ぬ。

え、死ぬの?

この時点で第一部の中盤あたり。早すぎない? 葬式を行うアテナ姫や少年にトランスマンたち。しかし葬式の最中に襲ってきたオルメカエイリアンの猛威に、トーディは突然、蘇るのである。あっさりと! 

このシーンではお墓が突然爆発を起こし、中からトーディが起き上がるといった展開だ。トランスマンが変身するまではトーディがオルメカエイリアンの戦闘員を倒すのだ。また少年と一緒にトーディが遊んでいるシーンを見ると、当時に韓国の少年たちがトーディみたいな友達が欲しい! と願ったのだろうかと思う。
トーディはオルメカエイリアンと戦う時は踊りを交えながら戦う。あまりうまくないダンスだが。さらにトーディは武器におならも使う。こんなエイリアンとなら俺も友達になりたい。こんな風にトーディというキャラクターが強烈で単なる戦隊もののコピーに収まらない魅力を見せる作品であった。

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