フィリピンに数多あるバットマンの世界

かに三匹

バットマンは世界中で愛されたヒーローだけにエピゴーネンも多い。例えばメキシコでは『La mujer murciélago』(1968年)というバットウーマンが活躍しマッドサイエンティストが作り出した半魚人と戦う映画が作られた(なんと『ダークナイト・レディ』という邦題で日本国内でもDVD化もされている)。

また韓国では、黄色いバットマンが活躍するアニメ『黒い星と黄金コウモリ』や、現代人が日本統治時代の韓国にタイムスリップしバットマンに変身して日本人と戦う『鳳仙花学堂』というコメディ実写作品がある。

スーパーベータマンというヒーローや真っ黒な鷲のヒーローイーグルマンというのもいる(本当はバットマンと名付けたかったのだろうなあという感じのヒーローだ)。他の国でもバットマンは作られているのかもしれないが(是非情報を教えてください!)、今回はフィリピンで製作されたバットマンを紹介したい。

フィリピンには多くのバットマンがある。『Alyas Batman at Robin』(1965年)、『James Batman』(1966年)、『Batman Fights Dracula』(1967年)、『Batwoman and Robin』(1972年)、『Batwoman and Robin Meet the Queen of the Vampires』(1972年)、『Fight! Batman, Fight!』(1973年)、『Alyas Batman en Robin』(1991年)といった作品が作られたのだそうだ。今では幻の作品となっていて(フィルムが紛失している!)視聴する事が出来ない作品が多い。残念だ。

例えば『Batman Fights Dracula』のフィルムはロストしているが、ネット上の情報によるとバットマンに対抗するため悪の科学者がドラキュラを支配しバットマンと戦わせるという内容らしい。バットマンはドラキュラを解放し、ラストはバットマンがドラキュラに正義の説教をするという。いったいどんな映画だったのか。

『Batwoman and Robin Meet the Queen of the Vampires』はタイトルだけしか手がかりがないがバットウーマンとロビンが吸血鬼の女王と出会うなんて非常にワクワクする。『Fight! Batman, Fight!』ではバットマンにジョーカー、バットガールにキャットウーマンが登場するようだ。ポスターでは赤い衣装を着たバットマンが機関銃を乱射する様子が描かれており、これも非常に気になるのである。どこかでフィルムが発見されないものだろうか。

現在、視聴できるのは、『James Batman』、『Alyas Batman en Robin』のみである。ソフト化されたかどうかも不明だ。今回はこれを紹介したい。『James Batman』は『ジェームズ バットマン』と訳せばよいのか。白黒映画だ。内容は核兵器を使って地球征服を企む悪のシンジケートをジェームズとバットマン&ロビンが追い詰めるという話だ。

アクションも工夫されている。最初は仲が悪いジェームズとバットマン&ロビンは、任務の為に手を組むことになる。注目すべき点は2つある。ジェームズの名前である。サイトによって、ジェームズ・ボンドとはっきりと書かれている解説もあるし、ジェームズ・ヒカと書かれているサイトもある。いずれにせよ、007のジェームズ・ボンドを意識した配役である事は間違いないだろう。

ジェームズ・ボンドとバットマンのクロスオーバーがフィリピンで、いつの間にか、なされていたのである。これはワクワクする。

そして次はバットマンの胸のマークだ。よくわからない変なマークが描かれている。何か意味があるのか? それとも、あるいは、これはいざという時にバットマンではないという言い訳をするために、わざとそうしたのではないか?
 まあ推測でしかないが、これも怪しさを醸し出している。なおジェームズとバットマンは両方ともドルフィーという俳優が演じている。ドルフィーはフィリピンの特撮ヒーローもので1970年代に製作された『キャプテン・バーベル』でも主役を演じている。人気俳優だったのだろう。

そして1991年に制作された『Alyas Batman en Robin』という作品も現存しているようだ。『別名バットマンとロビン』と訳すようだ(自動翻訳)。これはカラー作品でバットマンの活躍を描いている。1991年という時期から考えてアメリカで製作されたティム・バートン版の『バットマン』や『バットマン リターンズ』のヒットを当て込んで、その間に押し込んだものだろうか。

内容はジョーカーやペンギンを相手にバットマンとロビンが戦うという誰でも考え付くようなものだ。全員フィリピンの俳優が演じているバットマンだ。しかもバットマンのデザインはテレビ版のものに準拠している。当時でも流石に古臭くないか?

さらにエンディングではヒーローの仮装をした人々が踊るのだがなぜかスパイダーマンも加わっている。お前DCじゃないだろう? こんないい加減なバットマンだが、アクションもヌルくて1990年代の作品だとは、どう見ても思えないのである。おそらくパロディー的な映画ではあるが。とはいえこの映画の事を知ったワーナー・ブラザースは抗議を行い製作会社などが変更されて2年遅れで公開されたという経緯があるそうだ。という訳で世界は広い。

今後も色んな世界のバットマンを探してみたいものである。なおアメリカのコンテンツの影響を受けたフィリピン映画は他にもあってタイトルがそのままな『スーパーガール』(1973年)、アメリカの『HE MAN』の実写版ともいうべき『HEE MAN』(1985年)というものもあったりするのであった。

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