今回は『ジェヴォーダンの獣』を見たぜ! 個人的にようやくって感じだ。
2001年フランス製のこの映画、ゲーマー的には『Bloodborne』の元ネタのひとつとして有名なんじゃないだろうか。
ジャケ絵で着てる服なんかモロじゃん。
私も『Bloodborne』が大好きで、この映画がモチーフになってると聞いて「え〜見てみたいぜ!!」ってずっと思ってたんだけどすでに現代ではレンタルビデオ店は死に体だし、配信とかも見当たらないしでなかなか見る機会が無いな〜って思ってたんだよね。
それが今年になって4Kリマスター版が発売されることとなり劇場でもリバイバル上映されたりと動きがあった。晴れてAmazon Prime Videoにも来たってわけよ。見放題対象じゃないがね。
そんなわけで五百円払って見ました。
本作はタイトルにもなっている「ジェヴォーダンの獣」についての物語。これは1760年代のフランスに現れ100人近い人を襲ったという謎の獣……つまりUMAみてえなもんだな。
その姿は巨大な狼のようだったと伝えられており、1765年には10歳に体長1m70㎝に及ぶ巨大な狼が仕留められ、その剥製がヴェルサイユ宮殿の王のもとに送られたという。しかしその後も「獣」による被害は続いた。その正体は未だに多くの説があり……当然「ただの狼だろ」という説も強いが……謎に包まれている。
本作は「ジェヴォーダンの獣」の伝説について独自の味付けをし、史実と織り交ぜた英雄譚として完成させている。
そう、この話、意外なことに……意外というか私が勝手に『Bloodborne』みたいなダークなお話なんだろう! って思ってただけなんだけども……英雄譚、ヒーローのお話なんですよ! 心構えができてなかったから面食らった。
冒頭、暴漢に襲われる老人と女!
この時代って治安悪ぃよなあ!
そこに我らが狩人……じゃなかった主人公たちが颯爽と現れる!
え!?
こっ……これ……カンフーじゃない!?
見せ方が完全にカンフー! えーっ!?
そんな華麗な棒術と蹴りを見せてくれた主人公のフロンサックくん。
こいつがなかなか万能な男で、ジェヴォーダンを襲う謎の「獣」について調査するためフランス国王から派遣された生物博士だ。騎士の称号も持っているらしく、哲学や芸能についてもひと席ぶてる程度に博識で、そのうえ元軍人でさっきカンフーを見せてくれたとおり腕っぷしも強い。
それでいて性格は温和で誰に対してもニコニコ笑顔で接し、適度の女遊びもする軽薄さも兼ね揃えているが友情には厚い。なんというかこいつのことをすごく好きになれるかどうかはともかく、嫌いになるのは難しいというすごく主人公としてちょうどいい好漢である。
そしてその相棒を務めるのがミステリアスな男、マニだ。インディアンである彼は作中最強レベルの戦闘りょくを持ち、動物のような反応速度とすばらしい体幹、バネで画面中を飛び回る。
さらにシャーマン的な能力まで持っているという無敵キャラだ。
フランス人にとって異文化そのものである彼は、ジェヴォーダンの貴族たちから野蛮人扱いされ軽く見られている。だが常に波紋が浮かばない湖のように穏やかな彼はその軽蔑を寡黙に受け流し、いつもアルカイックな笑みを浮かべている。だが、アメリカで出会ったフロンサックとは義兄弟の熱い絆で結ばれており、ふたりが力を合わせれば無敵のコンビなのだ。
ほぼグリーン・ホーネットっとカトーって感じなんだがこのコンビがジェヴォーダンの獣の謎に立ち向かうぜ! ヤーッ! っていう映画です。とくに『Bloodborne』感は無いです。
もう一人、語り部役の若公爵もナイスなキャラなので紹介しておきたい。
本作の語り部役として機能している彼は作中の謎や解決法を握ったものすごいキーパーソンというわけではないし、戦闘力もかなり低く弱い。だが作中貴重な、主人公たちに好意的な役柄で非常に好ましい。性格は全然違うけどジョジョ一部のスピードワゴンのようなヌルヌルの潤滑油として機能している。日をあけて久々に再会したマニと熱い抱擁を交わすシーンは不思議と泣けるぜ
マニの貯めがすごいのでぜひ映像を見てほしい
この映画、とにかく画になるシーンが多くてオシャレだ。どこを切り取ってもいいな〜って感じがキマってて眺めていて楽しい。
18世紀のフランスっぽい雰囲気も……いや全然詳しくないしもしかしたら精通して人から見たらツッコミどころが多い可能性もあるが、けっこう良さげに見える。全体的に抑えめの色彩のなか、貴族たちの派手な衣装がいい意味で浮いているのもいいねえ。
そしてたまらんのが変でかっこいい武器の数々!
序盤から片腕で使えるライフルとかが出てきてワクワクしちゃうね。
ほかにもトゲトゲ扇子や……
果てにはガリアンソードも登場!
そして先述した通りアクションもいい。
バトルシーンは1vs多のものが多くてそれをバサバサ捌いていく姿は見応えがあるぜ。そんななか、「獣」とのバトルシーンがいい変化球になっていてこれまたいい。
「獣」は、最初はチラチラと姿を見せるだけの展開が続くんだけどほかにリアルな狼とかがたくさん出てくるぶん「なんか……浮いてるよなあ! VFXが!」て感じがあり、あまりいい印象はなかった。
でもこれが実際にバトルシーンになると「こんなの勝てるわけないだろ!」って感じがあってなかなかいい。よくこういうVFXのバトルシーンを「テレビゲームみたいだな」みたいな方向でdisることがあるけど、本作の場合は「それまでガチで戦ってたのに急にゲームみたいな動きするやつ出てくるじゃん!」って感じの脅威が感じられて良かったよ。罠ぜんぜん効かねえし。
獣が単なる未知のモンスターというわけでもなく、その謎に向き合い、事件の最後まで向き合うのも好印象で、途中からちょっとストーリーは「ああそっちに行くのか なるほど」って感じになっていくんだけどそれでも「ああこれは『ジェヴォーダンの獣』ってタイトルだなあ」としみじみ終わってくれるのは結構よかったぜ。
ただちょっと長いっスね……。無駄なシーンがたくさんある! ってわけではない。むしろどれもちゃんと布石として機能してると思うんだけど単純に2時間半は長いよ!
「おっ、ついに獣ともバトルしたし謎も解けかけてるしこれは最後の30分くらいに突入したのかな?」ってシークバーを見てみたらまだ1時間以上あって腰抜かした。別にそのあとも楽しめたんだけどちょっと疲労感は覚えたぞ!
ディレクターズカット版だから長いのかしらんと思ったら元々140分くらいある映画ではあった。元々長いわ。
お話としてタメはしっかり効いてる構成だったし満足感あったけどね。
自分の職務の虚しさに打ちひしがれ、憧れの新天地に誘惑され諦観とともにジェヴォーダンを去ったフロンサック。村人の犠牲を聞かされても動こうとしない彼の足を再び彼の地に向かわせたのは女だった──のときは若干ズッコケたけども、その後フロンサックが真の戦士として覚醒するきっかけが恋愛よりも友情だったのは予想外でアツかったよ。
そこからのフロンサックはまさに鬼神の如き強さで……すまん、元軍人だからある程度強いのはわかるんだけどあんたあくまで学者として来てるんだよな!?
ちょっとヒくくらいの戦い方の引き出しを持っており、ズバズバ人を殺しまくるのでビビってしまった。強すぎるだろ。プレデターくらいなら倒せるんじゃないかコイツ。
最終的に物語が「歴史」に飲み込まれて終わるのも悲しく美しい余韻があって良い。「変な映画だなあ!」と言い切れるほど変ではないし、かといって「ものすごい素直におもしろいヒーロー映画だぜ!」ってほどまっすぐな映画でもない、でも独特の味がするおもしろい個性を持つ映画だった。おいしい珍味って感じだ。自分のなかのベスト10入りはさせないけど、「なんかちょっと変わったおもしろい映画が見たいな」と言われたら挙げたくなるような魅力がありました。おすすめだぜ。
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