【エッセイ】実録、鬱に効いた映画『エイリアンVS.プレデター』

ナ月

※あくまでも個人の体験なので試して鬱に効かなくても怒らないでください。

 ムービーナーズライターのナ月だ。めちゃめちゃ個人的な話をするぜ。編集部に良いって言われたから。懐が深いメディアだ。

 およそ3年前に鬱もどきになって以来、精神科に通院している。長〜い休養や投薬治療の甲斐あって、発症当時から比べると今は随分マシになった。

 発症したばかりの頃はそれはそれは辛くて、「横になったら何時間もまったく起き上がれない。そのまま気がついたら一日が終わっている」なんてことがよくあった。
 心配した妹が「なんか泣ける映画とか見るとストレス解消になるよ」と言ってきたので、近年で一番泣いた映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を見たりした。見るたびにモスラのシーンで号泣するのでたしかに少し効いた。

泣ける映画

発症からしばらく経って、少しだけ回復したな〜という頃。ある映画を無性に見たくなった。食欲、性欲、睡眠欲。あらゆる欲求という欲求が薄れて果てた鬱状態の精神に、久しぶりに芽生えたくっきりとした欲求だった。

 なんか、急に『エイリアンVS.プレデター』が見たくて仕方ねえ。AVPを見なきゃ。そう思ったのだ。

『エイリアンVSプレデター』に対する欲求は、次第に渇望といえるほどに強烈になっていった。

 鬱……鬱……鬱……AVP……鬱……鬱……AVP……鬱……AVP……AVP……AVPAVP……鬱……AVPAVPAVP!! エイリアンVS.プレデター!! エイリアン! VS.! プレデター! 見たい!!

 と言った具合に、まるで徐々に激しくなる和太鼓の演奏のようにAVP欲が強まっていった。
 元々好きな映画ではある。どうせ何度も見たくなることを見越して、この際なのでBlu-rayを購入した。ついでにAVP2も購入した。

 こんなところを読んでいる人には不要かもしれないが、一応念の為に『エイリアンVS.プレデター』がどんな映画なのか紹介しよう。

 南極の氷の下から急に熱源反応! そこには謎の古代遺跡があることが判明した! 調査にいくぜ! だがそこはプレデターどもが成人の儀式をするための遺跡だった! 中にはプレデターが連れ込んだエイリアンどもがウヨウヨしているぜ! エイリアンとプレデターの死闘に巻き込まれて死にまくる調査隊! 勝つのはエイリアンか!? それともプレデターか!?

 というような内容の映画だ。タイトルからわかるようにあのエイリアンあのプレデターのクロスオーバー作品。監督はバイオハザードシリーズのポール・W・S・アンダーソンだ。本作を含むすっとこどっこいバケモノアクション映画の名手だと思っている。

エイリアンの頭が串に刺したソーセージみたいになってるの好き

 このエイリアンVS.プレデターがかなり効いた。見ながら「今、確実に精神が癒えている」と実感するほど効いた。
 プレデターが勇ましく戦い、エイリアンが汁を垂らしながら暴れ狂い、人間が巻き込まれて雑に死ぬたびに心が大喜びして潤っていった。

「何かが食べたいという欲求がある時は、それは体がその食べ物に含まれる栄養成分を求めているのだ」という話を聞いたことがある。映画にも同じことが言えるのかもしれない。俺の精神が『エイリアンVS.プレデター』に含まれている全てを求めていたのかもしれない。

こういうクリア素材で光学迷彩と言い張ってるフィギュア好き

 なぜこれがメンタルに効いたのか、正直なところよくわからないが、わからないなりに当事者として考えてみよう。

『フレディVSジェイソン』『貞子VS伽倻子』『ゴジラVSコング』など、タイトルに「VS」とつくバケモノクロスオーバー映画は色々ある。今あげた3作品ともエイリアンVS.プレデター並に大好きな映画だ。
 まずクロスオーバーもの特有の、賑やかなお祭り感。クロスオーバーする作品のキャラクターそれぞれに見せ場が必要なので、単純に「ここがバケモノの見せ場だ〜!」みたいなシーンが2倍になる。
 さらには大抵「片方だけしか知らない人どころか、両方知らない人も見るかもしれない。わざわざ両作見ておかなくてもべつにいいようにしなきゃ」ということで、大変親切なストーリーになる。

バケモンにバケモンをぶつけると良い例

 つまり、すっごいわかりやすい話でバケモノが2倍大暴れする映画になりがち、と言えるのではないか。もちろんエイリアンVS.プレデターは完全に当てはまる。

 病んだ精神におかゆのような食べやすさで、なおかつ高エネルギーな映画。俺は無意識のうちに、エイリアンVS.プレデターにそのような要素を求めていたのではないだろうか。そうに違いない。そもそもエイリアンとプレデターが好きというのも重要ではあるのだろうけど。

 そういうわけで、鬱が辛かった時に『エイリアンVS.プレデター』にかなり癒されたという話だった。もちろん回復の直接的な要因は休養や抗うつ剤などの力だとは思うが、エイリアンとプレデターの死闘にかなり癒され助けられたのも事実だ。ありがとうエイリアン、ありがとうプレデター。

 もしもこれを読んでいるあなた自身か身の回りの人が鬱に苦しんでいて、何かしら救いを求めてこの記事にたどり着いたのであれば、こんな記事を参考にせずにまず精神科に予約の電話をする方がいい。そうしましょう。
 そして療養していくなかで「なんか急にあの映画みたい」という欲求が湧いてきた映画があれば、きっとその映画が精神に効くのではないかと思う。

 色々な映画を楽しむ余裕が復活した頃にでも『エイリアンVS.プレデター』を見て「ああ、あの時ナ月が言ってたのはこれか……」と思ってくれたら嬉しいぜ。

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