6/19(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて開催された「未体験ゾーンの映画たち2020 延長戦」。
日本公開が見送られてしまう怪作が見られると話題で、毎年恒例になった特集が拡大された企画だ。
そのラインナップでひとつ気になるものがあった。ロシアのSF超大作『アトラクション 侵略』(20)である。
なんと2017年に新宿シネマカリテで行われた特集企画「カリコレ2017/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2017」にて上映された『アトラクション 制圧』(17)の正統な続編なのだ。
本国では続編まで作られているのに、それも含めて日本の一般的な劇場公開が見送られるのはなんとも切ない…。せっかくなので、前作『アトラクション 制圧』を鑑賞してみた。
最初は地球人と宇宙人の過激な衝突が描かれると思っていたが…?見てみると結構ピュアなストーリーだった。
『アトラクション 制圧』あらすじ
巨大な球体宇宙船がモスクワに飛来し、ビルをなぎ倒して多くの死傷者を出しながら着陸した。異星人との初めての遭遇に人々が戸惑う中、ロシア政府は即座に戒厳令を敷き事態の収拾を図ろうとする。一方、ロシア軍司令官の娘ユリアは異星人の科学技術者ヘイコンと出会い、ヘイコンが故郷の惑星へ帰るために必要なデバイス「シルク」探しを手伝うことに。異星人に対する排斥の気運が高まる中、ヘイコンと一緒に過ごすうちに自分が彼を愛し始めていることに気づくユリアだったが……。
『アトラクション 制圧』から見る“当たり屋”要素
まずはじめに言うべきことがある。あらすじを読むと、なんだか宇宙船がモスクワの町をぶっ壊してまで着陸してきたような文章だが、過失の割合で言えばほとんどロシア軍のせいである。
突如現れた未確認飛行物体に驚いた軍は、脇目も振らずミサイルを発射。
すると宇宙船はいとも簡単に墜落した。モスクワの建物をなぎ倒し、ヒロイン・ユリアの親友も轢き殺す。
軍もこの事態に慎重な姿勢を維持するようになるが、何故か政府はずっと喧嘩腰で「はやく宇宙人始末してよ!」の一点張り。
まだ何もしていない宇宙船にミサイルをぶつけておいて、始末を命じるとは物騒な…ほとんど当たり屋の心理である。
ちなみにこの墜落“事故”で市民の死傷者は200人以上に及んだ。
なお、「それって宇宙人のせいじゃなくね?」という演出はこれだけに収まらず、ヒロインの親友の死を宇宙人のせいにして、復讐を誓う者なども登場する。
…それはさておき、この墜落シーンの迫力は凄まじいく、ストーリーにノれなくてもこのシーンは大きい画面で是非見てほしい。多分、本作のK点はここである。
当たり屋映画から一変、『アトラクション 制圧』から見る“ボーイ・ミーツ・ガール”
こんな展開を聞くと、宇宙人と地球人の衝突は避けられないように思えるが…。
本作の宇宙人、見た目は人間と変わらないのだ。予告でも見られる物騒なヤツ(画像参照)は強化スーツだった。
『地球の静止する日』(51)で登場する宇宙人も、人間と同じ姿になって人々の生活に紛れていたが、こちらの宇宙人・ヘイコンはそこまで器用ではない様子。
うっかりヒロインと出くわしたことで、ヒロイン・ユリアの彼氏とその仲間たちに奇襲をかけられ、瀕死の傷を負ってしまう。
ところがユリアによって救出されたことで、次第に2人の距離が縮まっていく。気づけば一緒にライブハウスに行くような仲になっていた。
なんでそんな急に仲良くなんだよ!と思うかも知れないが、ヘイコンの星では“不死”が成立している代わりに、“愛”という概念がない。
だからこそ、自分をかばうユリアに対して今まで感じたことのなかった“愛”を感じ、急速に距離が縮まっているのだ(書いてて恥ずかしくなってきた…)
宇宙人より怖い、闇落ち彼氏
ここでひとつの問題が発生する。ユリアを守るために、ヘイコンをボコったユリアの彼氏の存在である。
ヘイコンはさらなる奇襲から逃れるために、強化スーツを脱ぎ捨てて隠れるが、そのスーツを彼氏たちが持ち帰ってしまう。
さらにユリアがヘイコンとクラブにいるところを、仲間の1人が見つけたことで彼氏は激怒。仲間を引き連れてヘイコンを襲う。
しかし本気を出した宇宙人になんて勝てるわけもなく、なすすべもなく殴り返される彼氏たち。仲間の1人がヘイコンに向けて銃を発射すると、もみ合いになっていた別の仲間に被弾してしまい、死亡。
怒り狂った彼氏は民衆を焚き付け、ついに宇宙船襲撃を決行する(また宇宙人のせいにしてる…)
それだけにとどまらず、彼氏はなんとヘイコンの強化スーツを身にまとい、再びヘイコンに襲いかかる。
その結果、宇宙人の姿をした人間が、人間の姿をした宇宙人をボコボコにするという、珍妙なシーンが爆誕した。闇落ちもここまで来ると、清々しささえ感じてしまう…。
ビジュアルやCGはすごい
ストーリーにはややツッコみどころがあるかも知れないが(何ならヒロインでさえ「ミサイル撃たなきゃよかったじゃん!」とツッコんでいる)エビで有名な『第9地区』(09)や、『エリジウム』(13)を手掛けたスタッフが関わっているだけあり、その完成度は日本公開を見送るにはもったいないレベル。
絶対に映画館のスクリーンで見たほうが良い作品である。
宇宙船の独特なビジュアルや、水で修理・運転できる地球にめちゃ優しい仕様も好感度高め。
ただし、続編『アトラクション 侵略』の予告を見ると、どうも水が脅威になっているようだ。
そもそも『アトラクション 制圧』のラストは、誰がどう見ても「続編はないだろう」と思う結末だった。
闇落ち彼氏のせいで瀕死の状態になったユリアとヘイコンは、宇宙船で治療を受け、ユリアの治療と代償にヘイコンは永遠の命を失う。
その後、ヘイコンを乗せた宇宙船はモスクワを去り、人類との衝突は無事免れた。めでたしめでたし…。(そもそも宇宙船は、間違えて地球に着てしまっただけだった)
そんなラストから3年。なぜか同じ宇宙人が侵略しにきてしまった。やっぱりいきなりミサイルぶつけたこと、怒ってるんじゃ…。気になる…続編気になるぞ…。
都内の上映は7月10日からとなっているが、どうもすでに公開は終了している様子…。
おまけに筆者は地方に住んでいるため、続編を見られるとしても随分先のことになるだろう。
どうか続編を鑑賞できるチャンスのある方は、やっぱり宇宙人が怒っていたのどうかだけでも教えて下さい…。
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