原作がすごい好きな映画をようやく覚悟を持って見る『銀河ヒッチハイク・ガイド』

  • 2026年1月21日
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マシーナリーとも子

原作既読のメディアミックスは正しく評価するのが難しいぜ!

 新年あけましておめでとうございます。マシーナリーとも子です。正月とも午年とも関係なく『銀河ヒッチハイクガイド』を見ました。イギリス人のダグラス・アダムスが描いたSF小説を、2005年に映画化したものです。

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 私これねえ……原作小説がものすごく好きなんですよ! ちょっと迷うけど、やっぱりいちばん好きなSF小説ってこれかもしれない。

 しかし、だからこそ不安でもあった。ずっとその存在は知っており、評判が概ね上々な事も知っていた。だが、これまで見てこなかった。なぜか。それは原作が好きすぎるからだ。

 映画もそうだし、アニメもそうだが……「映像化」のメディアミックスで、原作既読の場合に満足できたことがあまり無い。

 これが、逆ならいいんですよ。映画化やアニメ化で知って、この作品はすごくおもしろいなあって思って、それで原作も読んでみようってした末に「あ、これ原作のほうが好きだな」になることはある。でもその場合って、映画やアニメも最初に好きになってるから「両方好きだけど、どちらかといえば原作のほうが好きだな」って関係性になれる。

 が、原作既読だとこれが難しい……。どんなに趣向を凝らした映像化を見せられても「私の脳内の映像化のほうがカッコよかったな」とか「マンガのほうがテンポが良かったな」と思ってしまうのだよね。これはむしろ「原作に忠実な作品」のほうが起きやすい。というか、原作に忠実なぶん「じゃあ、お話は知ってるからもう見なくてもいいか」ってなっちゃいがちでもある。そういう意味では『カラオケ行こ!』の映画はほんとうに完敗しましたね……。

https://m-nerds.com/tomoko_karaokeiko

 そういうわけで本作も「いちばん好きなSFかも!」と言いつつここまで見られていなかった。が、アマプラに配信来たし立ち向かうかいよいよ……。正月休みだしな……。とあまりハードルを上げないよう、「私はぜんぜん期待していませんよ」という態度を内心に抱えつつ再生ボタンを押したところ……。

 いきなり、原作でも印象的に登場する「イルカから人類に対してのメッセージ」が大合唱でオープニングテーマとして流れたので「じゃあもう私の負けでいいよ!」となりました。最高……。

なんだこの話

 本作のあらすじを説明するのはなかなか難しい。あまりにどうでもいい枝葉の情報が無数に現れては消えていく。それらの情報はダグラス・アダムスらしい皮肉やニヒリズムに満ちた独特のユーモアに満ちていて、そしてぜんぜん本筋に関係ない。いや、たまに思い出したように本筋に絡むこともあるが、大半は世界設定を彩るフレーバーに過ぎない。が、そのフレーバーが芳しすぎるのでおもしろい、という非常にユニークな作品となっている。変すぎる。変すぎるのだがおもしろすぎ、そしてこんな作風は真似しようと思ってできるものではないので未だに唯一無二のものとして存在している。

 そして本作はあまりにファンが多すぎ、Google検索にも本作をオマージュした機能が乗っけられているし、このお約束のフレーズは数多のSF作品にもパロディ的に登場する。例えばホヨバースのゲーム『崩壊スターレイル』にも登場して「まあ、作品の雰囲気的にも近いよな」とか思っていたんですがその後、全然銀河レベルの話ではない『ゼンレスゾーンゼロ』にも出てきて「ただこいつらが銀河ヒッチハイク・ガイド好きすぎるだけッッッ!」ってなった。

 閑話休題。

 それでも無理やりあらすじを説明しようとすると、本作は以下のような話だ。

 平凡なイギリス人、アーサーの家はこれから取り壊されようとしていた。高速道路建設工事のためだ。その工事のお知らせは9ヶ月前から貼り出されていたのだが、役所の地下という見に行くわけがない場所に貼り出されていたのでアーサーは気づけなかった。
 だが時を同じくして、地球上に巨大な宇宙船の一団が現れる。地球はこれから銀河高速道路の工事のため取り壊されるのだという。地球中で上がる抗議の声。だが工事業者の宇宙人は「50年前からアルファ・ケンタウリの役所に貼ってあっただろ」と呆れながら地球を破壊する……。

 アーサーは友人であり、実はベテルギウス星人で『銀河ヒッチハイク・ガイド』のライター/現地調査員だったフォードに救われ、地球人の生き残りとして旅をする羽目になる。手始めに地球をぶち壊した宇宙船団をヒッチハイクし……。

すいませんこのへんであらすじ紹介諦めていいですか。
なにせ「縦軸」みたいなものがあってないようなものなので……。
まあでも、つまり、こういう作品です。

かなり完璧な映画化!

 本作はかなり「原作に忠実」タイプの作品です。映画用に多少新要素を加えたり、新キャラクターを加えたりはしてるけど全体的には「そこまでやらなくても…」というくらい忠実!

 ビビったのは「地の文」の再現っぷり。原作はこれまでも述べたように、あまり本筋と関係ないユーモア溢れるフレーバーテキストが全編に散りばめられているのですが…。

 本作はそれを「銀河ヒッチハイク・ガイド」に喋らせることでかなり盛り込んでいる!
 そのためストーリーの途中でしばしば展開がストップし、長々とした説明を聞かされる……という、それは物語としてタブーじゃない!? みたいなことを積極的にやってきやがる。じゃあそれがおもしろくないのかというと、全然そんなことはなくユーモアに満ちた語り口とアニメと、そして何より「そもそもあんまり縦軸らしい縦軸がない」という構造によってそれを解決してるのである。力技すぎる!!!!

 また、テンポも非常に良くて好感が持てます。
 例えば冒頭。アーサーが朝飯を食っている最中に家の解体工事が始まり……。

次のシーンではもう工事を止めるべくアーサーがブルドーザーの前に寝そべっている!

素晴らしい。このスピーディーさよ。
凡百の監督だったらここでアーサーが慌てて走るカットとか絶対入れちゃうと思う。イルカの歌と、この冒頭の編集だけで「この映画、やるじゃん…」と思わされたね。

あとうつ病ロボット・マーヴィンの外見の完璧さね。

かっ 完璧すぎる!!! かわいすぎる!!!
このもちもちデザインのロボットが、俯きながらトボトボと歩き、鈴木清信……『ガンダム』のハヤト・コバヤシ……の声で「ウンザリしますよね……」と常にガッカリしながら愚痴をこぼす。最高。これだけでこの映画が作られた意味がある! よくこんな完璧なデザイン生み出しましたね。原作未読のみなさんもこのマーヴィンを見るためだけにこの映画を見る価値があります。

ちなみにテレビドラマ版での外見はコレだったらしい(カメオ出演している)。うん、映画デザインの圧勝!!

本作はビジュアル面をかなりがんばっていて、例えば原作では「3本の腕と2つの頭を持つ」のが特徴のゼイフォード……厄介なことにこんな映像化しづらそうなキャラがこの作品ではメインキャラクターなのである! も、

「頭部ではなく、顔がふたつある」というアレンジを施すことで見事に再現しているし…(流石に3本目の腕ともども、必要ないときは収納するという設定)

「無限不可能性ドライブ(不可能に近い偶然を一時的に可能にすることでワープする装置)」を再現するために、登場人物がぬいぐるみになったりソファになったりする、など意味わからん映像もたくさん見せてもらえて視覚的満足度が非常に高い。マーヴィンぬいかわいすぎ!!!!

やっぱ原作のほうが好きかも

 とはいえ、やっぱり結論としては私は原作のほうが好きかな~。
 全然、すごく映画よくできててまったく瑕疵はないんですけどね。やっぱり、原作既読勢としては「あのいちばん大事なキメシーン、原作読んだときのほうが圧あったな」と思えてしまったりもした。

「例のシーン」はもっと圧欲しかったな

 でもホント、テンポはいいし映像・造形物はものすごくいいし、何より原作リスペクトがすごいので原作未読だったら私みたいな人の意見はぜんぜん気にせず軽い気持ちで見てみてほしいですね。「なんでこんなお話が許されてるうえにめちゃくちゃ人気なんだよ!?(でもおもしれえ!)」ってなっちゃうはずだから。

 

 そうしたうえで、原作を読んで「原作のほうが好きだわ」ってなったらいちばん得だしね。ちなみにシリーズは全7冊(!)あって、うち後ろの2冊は作者が亡くなったあとに別の人が続きを書いたってヤツなんだけどこれも、書いた人ものすごく謙遜してるんだけどすごくいいんだよね……。とくに私、5冊目に出てくるランダムってキャラクターがものすごく好きなのでその子が救われてうれしかったな……。
 と、これ以上原作の話をしてもしょうがないのでこのへんで終わります。
 ダグラス・アダムスは小説ではない、動物エッセイの『これが見納め』もすごくおもしろいからオススメです! それでは今年もよろしくお願いします。

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