失われたものというのは非常に魅力的に感じるものだ。
例えば恐竜やマンモスの絶滅動物なんかは頭に思い浮かべやすいのではないだろうか。既に見れない、触れないというものには希少性以上のロマンが詰まっている。
映像作品でもそういったものが沢山ある。例えば特撮なら『突撃! ヒューマン!!』なんかは有名じゃないだろうか。
意外な場所からやってくる
『突撃! ヒューマン!!』はこの時期によくある「ビデオテープの再利用のため上書きされた可能性がある」という理由で現存していない。これは業務用のテープがまだまだ高価だったのに起因している。また、この時期は家庭での録画形態がほぼ存在しておらず、一般家庭に録画というものが広がったのはもう少し後だ。
この前後で同じ理由で映像が現存しない作品と言えば、平賀源内が主人公の時代劇『天下御免』や、ひょっこりひょうたん島のスタッフが携わった『ネコジャラ市の11人』が当てはまる。
ただ、録画環境がろくにないこの時代だが色んな方法で残されたりしている。そう、意外な所からの再発見だ!
これは『ネコジャラ市の11人』のOPなのだが、NHKアーカイブスがやっている発掘プロジェクトの一環で見つかっている。
HPの記載(https://www.nhk.or.jp/archives/hakkutsu/news/detail059.html)では「演出されていた方の自宅で見つかった」という事で、このOPの16㎜フィルムが保存されていたらしい。
関係者が何かを持っていたというパターンは結構あって、前述した『天下御免』も監督の遺族が一部の音声データ等を持っているようだ(NHKからは特に公開は無いけど)
他にも、無断アップロードではあるが天下御免の最終回の映像を画面直撮りで上がっている。普通なら恥ずべき行為だが、行き場のない過去の遺物が這い出てきた感じがしてロマンがあるね。
でも、無断アップロードはよくないので権利者に直接送ろう(この場合はNHK)
実は前述した『突撃! ヒューマン!!』は映像が見つかっている。
というのも、実はこの番組は他の特撮にはない『舞台で公開録画をしている、8時だョ!全員集合形式の特撮』という部分があり、実際の舞台の様子を録画した映像が残されていたのだ!
こんな意外な場所から映像が出た事により一部のヒューマンファンは湧いたのである。
意外な所で再発見されたと言えば『弱虫珍選組』もその一つだろう。
1935年という戦前に作られた約5分程のアニメで、戦前という事もあり長らく失われていたと思われていたのだが、アメリカの米映画芸術科学アカデミーが保管しているのが2014年に発覚した。
発表から70年という時を経て、翌年の2015年に監督の生誕100周年を記念して上映が行われた。
そう、この監督が重要で、なんと金田一耕助シリーズでもお馴染みの市川崑監督が初監督したとされる作品だったのだ。
そりゃこんだけの早さで公開されるよね。
というか、生誕100周年の1年前に見つかるのも何かの運命のように感じる。ナラティブ性を感じざるを得ないよ。
これです!
これがロマンです!
普段使ってるような場所からも
「当時の関係者や見ていた人ぐらいしかそのロマンを探れないじゃん!」とお思いのあなた。
そんな事はありません。『空飛ぶ円盤恐怖の襲撃』という作品はなんと2010年にヤフオクでフィルムが再発見されています!
この作品は後にウルトラマンやゴジラシリーズの脚本家である関沢新一が監督している事もあって、M87星雲からやってきた円盤が地球に襲来するという内容なのだ。
しかも、ウルトラマンもM87にする予定が脚本時の誤植でM78になったらしく、この円盤とウルトラマンが同じ星雲だった可能性すらあるのです!
作品の評判は良いらしく凄く見たいのですが、こちらは発見から14年が経過していますが未だに公開などはされていません。一度修復中という内容の記事が映画秘宝か何かに載っていたのですが…それからも10年ぐらい経っていたのである意味ではまたロストしたフィルムになっています。
再々発見されて欲しいです。
そして、この夢のような出来事は1度ならず2度起きました。それも昨年!
片岡千恵蔵主演の『悪魔が来りて笛を吹く』が突如出品。金田一耕助シリーズの中でも現存フィルムが少ないシリーズで、三本指の男、獄門島、三つ首塔だけが現存しおり、半数近くが現存していなかったはずだ。
その現存していないはずの1つがポンとヤフオクに上がったのだ。ロマン過ぎる…。
フィルムの内容的にも間違いなさそうで、こちらは80万円で落札された。
昨年の7月にこんな熱い再発見が起こっていたが、これが個人によるものなのかどうかで今後の展開が分かれる。
コレクターとして個人が買った場合は修復にもなかなかの値段がかかるのもあり『恐怖の円盤~』のように時間がかかるかもしれない。
だが、大きい組織が購入していたなら『弱虫珍選組』のように公開が早い可能性もある。
今は座して待つしかないだろう。(ただ、これは珍選組が短い作品だったから早かったというのもある。再発見フィルムには修復に20年近くかかったものもざらである)
それ以外にも2023年は『正チャンの冒険』という戦前のアニメ作品が再発見されていたり、なかなか熱い再発見イヤーだったのだ。
日常のどこかにロマンはある
再発見フィルムというのは意外な場所から来ることもあれば、日常的に使ってるような場所からもやってくる。
他にも
『解体中の納屋から発見』
『骨董市で売られているのを発見』
『精神病院の物置から発見』
等々…日常で目を凝らしてみれば発見できるかもしれない場所に潜んでいることもあるんです。
恐竜の化石じゃない、動いている恐竜そのものを発見できるかもしれないというこの魅力が日常のどこかに隠れているかもしれない。
ワクワクしませんか?
是非みんなも再発見フィルムを探してみてはいかがでしょうか。
追記
なんと、この記事公開の翌日に「悪魔が来りて笛を吹く」のフィルムが東映に返還されたというニュースがありました!
修復予定という事で、コレクションに留まる感じでなくてよかった~
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240225/k10014369891000.html
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