TSUTAYAでビデオを借りたら本物(?)の心霊ビデオが紛れ込んでいた話【閲覧注意】

 心霊ビデオ研究会(以下心ビ研)のふぢのやまいです。

 5/16(日)に開催される第三十二回文学フリマ東京にて、※心霊ビデオ同人誌『霊障』を発売します。『ほんとにあった!呪いのビデオ』『闇動画』監督の児玉和土さんのインタビューや心霊ビデオ研究の鈴木潤さん、文筆家の木澤佐登志さんによる論考、心霊ビデオレヴューなどが掲載されています。

※通販もアリ、ページ下部にリンク記載。

 突然ですが、みなさんは本物の心霊ビデオは存在すると思いますか?

 クソみたいな質問ですよね。
 これは「読書は役に立ちますか」と同じタイプのクソ質問だと私も思います(「クソ」とは、質問内容はともかくその質問があまりにクリシェであることを指します)。でもそれは向かう対象がニッチであればあるほど、常に亡霊のようにつきまとう問いのひとつであることは確かです。たとえば土偶との違いを語る埴輪オタク、鉄オタが語る電気モーターとディーゼルカーの違い、べこ病対策についてそれが人類の偉大な一歩のように語る魚病博士、彼らが一息ついた瞬間に「そんなに意味があるとは」「どうやって金に」「なぜそれに時間を」…。「それは本物であるか否か」は心霊ビデオファンに向けて心霊ビデオを普段あまり見ない(おそらく)人から投げかけられがちな質問の一つだと思います。なにより「役に立ちますか」「本物ですか」質問が投げかけられるのは、そうした人々の語る「なにか」が、「まるで本物」で人生観を一変させるほど「役に立つ」ものであるかのように聞いている人には思えてきてしまうからではないでしょうか。

 仮にも「心霊ビデオ研究会」(「ゴーストビデオ・リサーチャーズ」?「ゴーストビデオ・ソサイエティ」?)を名乗っている以上、上でみたような疑問に答える義務がありそうですが、わかりません。ですがとりあえず、会誌『霊障』を作っていくなかでこれは何かの「本物」としか言いようがないものに遭遇しました。

 はじまりは渋谷TSUTAYAのVHS拡充を伝える記事でした。

【参照】
渋谷「TSUTAYA」、映画のVHSビデオ6000本そろえる ビデオデッキ貸し出しも

 ビデオデッキは以前から貸出しあったし、どうせこの前つぶれた新宿TSUTAYAからの寄せあつめだろうし、VHSビデオが6000本?6000はないだろTwitterオタクの雑魚共がよ…などなど心ビ研一同はめんどくさいオタクらしく呟きながらも真っ先に渋谷へ向かいました。

 棚と棚の間で饒舌になりながら四時間は滞在し、VHSをそれぞれ25本は小脇に抱えた不審者三人はサイゼリアに入店してワインと名画で肩こりを癒しつつ、まだ計画に過ぎなかった『ほんとにあった!呪いのビデオ』監督インタビューの内容を練っていました。この日はそれで解散し、三人は三人とも「インタビューを無事やり遂げようね」と言い合って気持ちよく眠りに落ちることができたはずでした。予定ならば。

 ところがその日の25時過ぎ。メンバーの一人、ghostboatさんから突然一行のラインがきます。

「なんか映っていました」

 ghostboatさんはある邦画のVHSを鑑賞し、本編終了後しばらく流しっぱなしにしていたそうです。

 即座に送信されてきた一枚の画像(図1)は真っ暗な部屋で女性?が寝そべっている粗い画面を写したものでした。

図1

 この時点でだいたい把握しました。

 まず浮かんだのはVHSのツメにセロハンを貼るという行為です
(ここら辺を詳しく知りたい2000年以降生まれは「VHS ツメ 仕組み」で調べてください)。

 要するに書き込み防止の「爪」と呼ばれる凸部分があり、何度でも上書きができる市販のビデオテープはその部分を折ることで「保存版」として書き込みを不可能にすることができました。もちろんレンタルVHSはあらかじめ爪が折られた形で上書きが出来ないようになっています。

 ですが、まれにどうしても録画しておきたい地上波の番組を録画するためにレンタルビデオの爪を塞ぎ、あまつさえ違う番組を上から録画したそれをそのまま返却する(今考えても完全に犯罪です)というケースがごくごくまれにありました。そのような話を聞いたことがある方は多いかもしれません(たとえば「おれ、この前『ダイハード』借りたんだけど上からMステ録画されてたからそのまま見ちゃったわー」など)。

 録画した対象がMステなり、ドラマやアニメなりで番組として何を録画しようとしていたのかが明確にわかる場合にはこの話も笑い話として受け取ることもできます(犯罪ですが)。ですが、たとえば以下のようにある番組のたった数秒だけが映画の本編の前に挟み込まれた場合はどうでしょう。

【参照】
レンタルビデオを借りて来て見たら…

ベストアンサーに選ばれた回答は借りてきた映画VHSに挿し挟まれた数秒の映像の正体をこうあっさりと言っています。

「その映画が面白くなくっての嫌がらせではないでしょうか?」

 嫌がらせとしての数秒のためにセロハンを貼って地上波番組を録画した…そんな行為の微妙な後味の悪さはここではさておき、先ほどのラインを受け取った私はghostboatさんにさっそく全編送ってもらうように頼み、ある映画VHSの本編後に挿入されていた「怪映像」としか呼びようがないそれを、興奮と恐怖の25時に確認しました。

 その内容をまとめると以下のようになります。

・映像自体は2分程度。

・映画本編終了後、提供クレジットも消え5分ほど経過したのち、突如画面に激しい白黒ビデオノイズが映る(図2)。

図2

・ノイズの間から真っ暗な部屋で何か愉快なことを会話しているかのように満面の笑みで笑っている全裸男女ふたりの姿が映される。女性は顔をこちらに向けたまま後ろ手で自らの尻をしきりに撫でている。

図3

・再びノイズが入ったのち、何もない真っ白なカーテンの接写(図3)が十秒ほど。画面は全く動かない。

図4

・それから少し引いてカーテンの引きのカット(図4)。こちらも全く動かない。

・さらにカーテンの引き。手前に白いシーツが敷かれている(図5)

図5

・そして再び暗所の女。男はどうやらフレーム外にいる模様。ゆっくりと女は起き上がり、足を伸ばす。画面全体にモヤのような巨大な黒い影がかかる(図6)

図6

・ノイズが再び発生する。部屋に入っていく男の姿がわずかに見えたので先ほどの黒い影は男の影であったことがわかる。そのあとは画面は激しく揺らぎ、もはやノイズの間からは何も見えない(図7、8)。その状態が五分ほど続き、画面は白くなりビデオは終わる。

図7
図8

以上5カット(最後の激しいビデオノイズも含めれば6カット)。

 終盤のずっと見続けていたらどうにかなりそうな明滅は有名な心霊ビデオ『死画像』の「クニコ」を思い出しました。

【参照】
最恐の心霊ビデオ『クニコ』とは?/「呪われた心霊動画XXX&死画像」

 ですがクニコのような心霊ビデオとして発売されている作品とは異なり、ここまで解説してきた映像は映画本編の映像からあまりにも乖離していました。なにより最後の提供クレジットのあと、ノイズの彼方から開始することからも見られることを想定して作られた商業作品ではないことは明らかです。「心ビ研」三人とも多くのVHSをレンタルしたり購入してきましたが、こうした番組録画でもない明らかに異様な「なにか」が混入している事態に遭遇したのは初めてのことでした(そして何より、心霊ビデオ雑誌を作ることを決意した我々の前にこうした動画がちょうど現れるという過程はあまりにデキすぎていて、「ほん呪」ナレーションすぎます)。

 ところで、ツメを折って混入される怪動画は過去にも存在していました。

 実際に見たことはないですが、たとえば「笑っていいとも!」本編を繋ぎ合わせて作られた実験映像作品としてごく一部で有名な『ワラッテイイトモ』の作者は、レンタルビデオのツメを折り自らの作品を名作の中に混入させていたと語っていました。

 またかつてTwitterで我々とほぼ同様にウルトラセブンのVHSを見ていたらいたずら映像が突然始まりびっくりした、とのツイートを動画付きで見た記憶がありました(該当アカウントは削除され、ツイログしか残っていませんでした、映像自体は突如森の奥でおっさんが絶叫しながら暴れている映像でした。直前のウルトラセブンとのギャップが激しすぎて恐怖よりも笑いを誘う)。

 こうした話から考えられるのは以下の三つです。

・何かの映画か番組をダビングしようとした
普通のレンタルビデオ事故の基準で考えると、余っている数分のビデオの末尾にダビングした(orしてしまった)ということは考えられなくもないですが、男女の裸とカーテンの映像が繋ぎ合わされた映像が地上波の番組、もしくは商業映画であるとは考えにくい。

・AVをダビングしようとした(裏ビデオ?)
裏ビデオであるとする根拠は陰毛へのモザイクの有無です。はっきりと性器は映っている箇所はないものの、画面に加工がないことが不自然です。それにしてもひたすら続く白いカーテンを映し続けたカットは奇妙です。

・自作AVのダビング
奇妙な編集でなによりラフな映像になっているのは自分で撮影していたからでは。
なぜこの意味不明な箇所だけをダビングしたのかという疑問は残ります。

 もちろん様々な偶発的な事故が重なってこのようなゴダール的な(?)編集になっているとは考えられるのですが、やはり真実に近づきたいです。

 ですが、TSUTAYAに「このVHSはどこの店舗から流れついたレンタルVHSなのか、過去にどんな人物が借りていたのか」を訊ねたところで、その情報がきちんと整理され残っている可能性、まして我々にその情報を開示してくれる可能性は低いでしょう。

 そんな折、ムービーナーズの大河内さんに誘われた「テクノ怪談」のイベントでこの映像を解説付きで上映致しました(テクノでも怪談でもなかったのですが…)。

テクノ怪談の様子

 上映直前にイベント主催者であるムービーナーズの大河内さんに「ちょっと裸っぽいのが映っているから乳首のところ加工しました」と謝られたとき、いったいどうしてこの人は申し訳無さそうにしているのだろうかと疑問に思いましたが、このノイズまみれの乳首をなんらかの興奮材料にしようとしている人達がいるかもしれないという考えに至り、そちらに恐怖しました。

 無事上映も終了し、特に霊障も起こらなかった(ですよね?なにかあの後に起こった方はご連絡ください)のですが、イベント撤収後、ご覧になられた方から「裏ビデオを一般邦画に上書きしてこっそりレンタルしていた新橋のVHS店舗」に関する情報を頂きました。

 なかなか興味深い話だと思いますが、具体的にビデオの正体に繋がりそうな話はこれ以降もまったく得られていません。

 そしてそれから数日経ったある日、ようやくわたしたちは心待ちにしていた心霊ビデオ界の巨匠、児玉和士監督インタビューの日を迎えました。

 当然残された頼みの綱としてこのビデオを喫茶店の一角で監督に見ていただきました。

 もちろんわたしたち心ビ研一同がこの直後、冒頭のいわゆるクソ質問こと「本物質問」を監督に投げかけてしまいました(監督、本当にごめんなさい)。監督はおそらく数十回と繰り返されてきたその質問に対して真摯に回答してくださいました。が、まさにそのクソ質問の答えを誌面に載せることは諸々の理由で叶いませんでした(『霊障』のどこを探しても「本物はあるのか」の答えはありません)。これを読んでいるみなさんは「諸々」の想像をしてください。

2021年6月17日追記
本稿で取り上げた内容も含まれる心霊ビデオ同人誌『霊障』は通販でも購入可能です。
https://habouhou.booth.pm/items/2976087

ABOUT US

ライターとしても活動するほか、マンガユニット「dolce.」名義で実作もおこない、THE GATE奨励賞、モーニング月例賞などを受賞している。 インディペンデント系の未ソフト化作品を中心に、映画上映会の企画も手がける。主宰した同人誌『百合映画ガイドブック』は『「百合映画」完全ガイド』のベースとなった。

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