3月公開予定の新作映画を3作品ご紹介!著作権フリーになった、あの有名作品のキャラクターがチャラチャラした若者たちを血祭りにするホラー映画から、1999年を舞台にした韓国の切なく淡い青春ドラマなどが公開されます。
映画『マッド・マウス ミッキーとミニー』(3月7日公開)
どうしても人気キャラを殺人鬼にしたい映画界隈


1928年に公開されたウォルト・ディズニー社の短編アニメ「蒸気船ウィリー」。
2024年1月1日に公開から95年経ち、パブリックドメイン化したことを機に、あれよあれよと映画界では”あのキャラ”をホラー映画で使おうと動き出します。
少し前には、「くまの●ーさん」のパブリックドメイン化によってホラー映画『プー あくまのくまさん』が誕生しました。いったい何の恨みがあって彼らを殺人鬼にしたて上げるのか。監督の親の仇か何かでしょうか…。
日本でもネットで“あのキャラクター”にまつわる“よろしくない投稿”をすると、投稿者の自宅に”誰か“が来て、以降音信不通となる都市伝説(?)がありますが、監督も自身の身を守るためか、映画の導入で「この映画はマジでディズニーと関係ないからね!ホント!嘘じゃないからね!」と(某SF映画の導入のオマージュで)執拗に弁明していました。
肝心の殺人鬼と化した某キャラクター(厳密には某キャラのお面をかぶった誰か)ですが、瞬間移動(!?)を使えたり、ちゃんと弱点が用意されていたりと、しっかりホラーキャラとしての立ち回りをこなしていました。ドラマで覚えた護身術で立ち向かおうとするなど、いい感じに社会常識が欠落した人もいてジワる場面もあります。
一方で “あのキャラ”による凶行と、やや難解なストーリーがぶつかり合っており、色々と疑問が残る点もありました。そもそも「蒸気船ウィリー」のパブリックドメイン化によって誕生した作品なのに、なぜ邦題には“ミニー”の名前があるのか?という疑問も…。考察要素が盛りだくさんな映画なのかも?
個人的には、アレックスの誕生日を社交辞令のように祝う、薄っぺらな友人グループのギスギスした雰囲気も怖かったです。あの場にいるだけで具合悪くなりそう。
- グロ度:★★★
- 考察度:★★★★
- 人間関係ギスギス度:★★★★★
映画『マッド・マウス ミッキーとミニー』公式サイト
映画『フライト・リスク』(3月7日公開)
保安官補のハリスは、ある事件の重要参考人であるウィンストンを航空輸送する任務に就く。アラスカからニューヨークまでをベテランパイロットのダリルが操縦してくれることとなり、気さくなダリルの性格もあって、機内は(ウィンストン以外)和やかな雰囲気に包まれる。
何の問題もなくニューヨークにたどり着けると思われたが、ウィンストンは操縦席の下からダリルのライセンス証を見つける。しかしその写真は今操縦しているダリルとは全くの別人だった…。
メル・ギブソン監督がワンシチュエーションものに挑戦!?


アカデミー賞6部門ノミネートを果たした『ハクソー・リッジ』から、9年ぶりの新作となるメル・ギブソン監督作。今回の題材はずばり、ワンシチュエーション。上空1万フィートの飛行機内で、3人の搭乗者が命懸けでぶつかり合います。
主演のマーク・ウォールバーグといえば、クセは強いけど正義感のある主人公を演じる印象がありますが、本作ではクセが強いうえに、喜々としてハリスやウィンストンに襲い掛かる激ヤバ人物を怪演。こういうキャラもいけるんですね…。
目的のためなら自分への犠牲もためらわないヤバさも必見で、やろうとしていることがヤバいのに、テンションの上げ方が休日のアクティビティを楽しむ人のそれなのも怖すぎる。
しかし本当に怖いのは、ハリスやウィンストンを取り巻く事件の背景で、いったい誰が味方で誰が敵なのか、常に疑心暗鬼になるシチュエーション作品でした。
- 安全度:★
- ウィンストンの口数:★★★★
- 機内の人間関係ギスギス度:★★★★★
映画『フライト・リスク』公式サイト
https://klockworx-v.com/flightrisk/
『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』(3月14日公開)
ノストラダムスの予言が世間を賑わせていた1999年の韓国。高校生のジュヨンはテコンドー部に在籍するも、コーチの行き過ぎた指導に嫌気がさしていた。練習をサボり、先輩から暴力を受けるジュヨン。そんなとき、その場にやってきたファストフード店で働くイェジに助けられる。
その後、偶然にもジュヨンの母親が引き受けた「少年院の家庭体験プロジェクト」にイェジが選ばれたことで、ジュヨンとの共同生活が始まる。一緒に過ごしていく中で、2人には友情とは違う特別な感情が芽生えるが、2人の関係を周囲の大人たちが引き裂こうとする–。
若者が大人に抑圧される時代


『はちどり』のパク・スヨンと「イカゲーム」のイ・ユミ主演2人による切ないラブストーリー。
当時の韓国では「指導」にかこつけて、暴力や理不尽な叱責は当たり前。ジュヨンの母親がテコンドー部に入部させたのも「自分の身を守れるため」というくらいなので、世間的にも若者が大人の都合に振り回されるのが常態化しているのが見てとれます。
印象的なのはジュヨンとイジェ(と友人2人)で出かけた旅行先での出来事。ハメを外してお酒を飲み、酔っぱらいながら海辺ではしゃぐシーンはさながら王道の青春映画のようですが、彼らは素面でないという事実が切なく感じました。酔わなきゃ若者らしく振る舞えないなんて…。
当時は厳しい目で見られた同性愛だけでなく、性被害もテーマにしているなど、青春モノのなかでもかなりシリアスなテーマが見られました。
余談ですが、主人公たちの私服が現代の日本とあまり変わらないと感じたのは私だけ…?(時代に合わせた演出ができてない!というディスではなく、最近のトレンドが90年代リバイバルなのかなあという感想)
- 切なさ:★★★★
- ファッション:★★★★
- 部員関係ギスギス度:★★★★★
『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』公式サイト
https://klockworx.com/movies/heaven/
まとめ
3月はジャンルが違えど、いろいろと人間関係がギスギスする作品が揃いました…(笑)最終的にその人間関係がどのように変化していくのか、それぞれで比較してみるのも面白いかもしれません。
ちなみに『マッド・マウス ミッキーとミニー』では、なぜタイトルにミニーが入っているのか私にはさっぱりわからなかったので、鑑賞した有識者の方は是非理由を教えてください…。(他にもいろいろな謎が残る作品でした)