2025年2月公開の新作映画紹介&レビュー!社会派作品から”あの監督“がまさかのラブストーリーに挑戦!?

2月公開予定の新作映画を3作品ご紹介します!
今月は各国の社会派作品が登場!

韓国で実際にあった世論操作事件を基に映画化した作品から、パレスチナ問題を捉えたドキュメンタリーが上映されます。

さらに「介護」「毒親」を題材にしたシリアスかつダークな作品を手掛ける”あの監督”が、なんとラブストーリーに挑戦!

いったいどんな心境の変化があったのか…?いろんな意味で気になる作品も公開されます!

「あなたが信じたその話、本当ですか?」『コメント部隊』(2月14日公開)

記者としてのキャリア・実力はあるものの、やや見栄っ張りな男イム・サンジン(ソン・ソック)。ある時、政治家さえも逆らえないほど強大な企業「マンジョン」の不正に関する特ダネ記事を発表するが、誤報であることが判明し大炎上してしまう。

誹謗中傷を受け、停職処分までくらい失意のどん底にいたイムだが、そこへ「マンジョン不正」の真相を知っているという謎の情報提供者から連絡が入る。

しかし、イムが面会した情報提供者は若い青年だった。彼は自分がネット世論を操作する「コメント部隊」と呼ばれる組織に属しており、報酬次第で真実を嘘に、嘘を真実にできると語る。

果たしてイムが掴んでいた特ダネは誤報なのか。それとも真実を嘘に変えられていたのか…?

(C)2024 ACEMAKER MOVIEWORKS & KC VENTURES & CINEMATIC MOMENT All Rights Reserved.

みどころ

韓国の国家情報院による世論操作事件を題材にした同名小説を映画化した本作。

「韓国で起きた世論操作の事件って言われてもなあ~」と感じましたが、日本でも去年11月に実施された兵庫県知事選挙など、似た出来事が起きており、決して対岸の火事とは思えないホットな題材となっています。

 作風としては、基本的に主要人物の回想がメインとなっているので、スリリングさよりは社会派ドラマとして楽しめる作品となっていました。

SNSや口コミなどにおけるネガキャン・ステマはずっと前から話題にはなっていますが、世論を操作するほどの規模を20代の若者が闇バイト(コメント部隊は正社員でしたが…)感覚で行っていることに、よくない方の時代の流れを感じます…。

 また、こうした世論操作によって、一般人にどんな影響が及ぶのか、知らず知らずのうちに世論操作に巻き込まれてしまった人の悲しい末路も描く点が印象的でした。

 余談ですが、本作では「イカゲーム2」に登場するあんな人とこんな人がカメオ出演しているので、彼らの作中での顛末も踏まえ、ぜひチェックして欲しいです。

 

  • 試されるネットリテラシー度:★★★★★
  • サスペンス要素:★★★
  • 主演が浅野忠信に似ている度:★★★

『コメント部隊』公式サイト

大丈夫!ちゃんとラブストーリーですよ!『あの歌を憶えている』(2月21日公開)

シルヴィア(ジェシカ・チャステイン)は、13歳の娘アンと2人で暮らすシングルマザーだ。ある辛い過去を抱える彼女だが、障がい者施設でソーシャルワーカーとして働き、断酒会に参加するなど、静かで穏やかな日々を過ごしていた。

そんなとき、妹から勧められた高校の同窓会に参加すると、一人の男に自宅までついてくる。しかし、何をするわけでもなく、男はシルヴィアの家の前で立ち尽くすだけだった。翌日、ソール(ピーター・サースガード)と名乗る男の身元を確認するシルヴィアは、彼が若年性認知症による記憶障害を抱えていると知る。

やがてこの出会いをきっかけに、シルヴィアはソールの介護をすることになる。彼の人柄を知っていくことで、2人は段々と惹かれあうようになるが…。

(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

ラブストーリー好きもミシェル・フランコ好きも必見

ポスタービジュアルや作品概要からして大人のラブストーリーという感じですが、監督は『或る終焉』や『ニューオーダー』など、めちゃくちゃ尖った作風と題材で知られるミシェル・フランコです。

これまで彼の過去作を見た身としては「急に重要キャラが車に轢かれるんじゃ…」など余計な不安を感じずにはいられませんでしたが、そんな不安をよそに、辛い過去・病を抱える2人が少しずつ距離を近づけていく様子はとても尊い…。変に派手な演出やシャレオツなBGMなどを使わず、丁寧に描いていました。

一方で固定のカメラワークやサントラを一切使わないといった、監督ならではの手法はしっかり生きていたので、監督のファンでも楽しめる作品です。サントラがないからこそ、ソールにとって思い出深いプロコル・ハルムによる「青い影」がより印象的に耳に残ります。

ゴリゴリのフランコ節がラブストーリーでも炸裂しているのか…!?その有無も踏まえてぜひ劇場で確かめてほしい作品でした。ミシェル・フランコとラブストーリー、意外と合います!

  • ミシェル・フランコ度:★★★
  • ちゃんとラブストーリー度:★★★★★
  • 犬は無事:★★★★★

『あの歌を憶えている』公式サイト

第97回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネート!『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』(2/21公開)

ヨルダン川西岸地区にある「マサーフェル・ヤッタ」。パレスチナ人居住地区で活動家の両親に育てられた青年バーセルは、イスラエル軍の占領進行によって故郷が破壊される様子をカメラに収め続けていた。

2019年、故郷の状況を世界に発信し続けるバーセルのもとに、イスラエル人ジャーナリスト、ユヴァルが危険を冒してまで訪れる。彼もまた、自国政府による暴力的な行いに憤りを覚えていた。

パレスチナ人とイスラエル人という立場を越えた2人は、それぞれの故郷や境遇を知っていく中で、少しずつ友情が芽生えていく。

しかし軍による破壊工作は過激さを増していき、ついには村人から被害者まで出るほど、事態は深刻化していく…。

(C)2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

若き活動家と映像作家が捉えた”故郷の実態”

自らが生まれ育った故郷が破壊されていく様子を2019年の夏から2023年10月に渡って記録した長編ドキュメンタリーです。

今もなおその動向がニュースで報道され、目まぐるしく状況が動いているイスラエル・パレスチナ問題を「一つの故郷」を軸に捉えています。非常にミニマムな現場ゆえ、日本ではあまり報道されていない理不尽な破壊工作の映像はとてもショッキングです。

ついさっきまで暮らしていた家が、住人たちの目の前で重機によって破壊される…。軍の重機が「一仕事」終えたと言わんばかりに、列を成して去っていく様の胸糞悪さは計り知れません。

それでも村人たちは村を再建しようと奮闘しますが、村のインフラを徹底的に破壊し、人権を踏みにじるかのような軍の対応は、思わず目を覆いたくなるほど残酷です

最前線を撮影し続けるバーセルは幾度も命の危機にさらされますが、果たして何が彼をそこまで突き動かすのか…。昨今のパレスチナ情勢に明るくなくても見てほしい、故郷を持つ人なら決して他人事ではないメッセージが映像に詰まっていました。

 

  • 注目度:★★★★★
  • 軍の畜生度:★★★★★
  • 国を越えた友情:★★★★

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』公式サイト

まとめ

2月は劇映画・ドキュメンタリーともに、社会派の作品が公開されます。

どちらも他国が舞台ですが、世の中にあふれる情報の真偽から、故郷を想う気持ちなど、国境を越えても伝わるテーマが印象的でした。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』は現在進行形の問題という事もあり、映画祭でも大きな注目を集めているので、今後のアカデミー賞での評価も気になるところです!

最新情報をチェックしよう!