ボイス -深淵からの囁き-(原題:Voces)

NETFLIX発のスペイン産ホラーで、監督は本作が長編デビューとなるアンヘル・ゴメス・エルナンデスが務めた。
タイトルの通り、本作は「声」が軸となったホラー作品で、謎の声が常に自分の周りで囁くために不眠症に苦しむ少年の受難から物語が始まる。
所謂「引っ越し系ホラー」作品で、新居で起こる異変によって家族が崩壊していく様子が描かれるが、本作はそのスピード感が非常に心地よく、始めは謎の声によって不眠症に苦しむ程度の被害だったものの、あれよあれよと大ごとになっていき、登場人物が続々と死亡するような大変な事態に加速してゆくテンポが良くストーリーの意外性もあった。
スパニッシュホラー ×「音」が生み出す不快感
スパニッシュホラーと言えば、戦争等の歴史的悲劇や、子ども・家族、身近に潜む恐怖などのモチーフを用いるものが多いが、本作もそういった要素を盛り込みつつ、『悪魔の棲む家』や『死霊館』のようなテイストで仕上げている。
そのため特別目新しさのある作品ではないが、そうしたスパニッシュホラーや引っ越し系・屋敷系ホラーの面白い要素を抽出したうえで、「声」「音」という生活に密接に関わる要素をフィーチャーし、悪霊の攻撃手段として描いている。
悪霊は幻覚を見せたり、人を操ったりと「ズルだろ!」という能力も使ってくるのでどうしようもない部分があるが、それ以外にも「夜中に音のなるおもちゃを鳴らす」攻撃や「なりすましトランシーバー通話」などの嫌がらせのような攻撃も使ってくるため、リアルな不快感が想像できる。
『バーフバリ』で知られるS・S・ラージャマウリ監督作の『マッキー』という映画がある。
ハエに転生した主人公が、自分を殺した悪役に復讐するといった内容の映画だが、ハエになった主人公が取った攻撃の手段に「騒音」で睡眠を妨害するというものがあり、『ボイス』の序盤で不眠症に悩む少年や、ハエの形で人間に危害を加える悪霊の姿はさながら『マッキー』で描かれた騒音攻撃だった。



集合住宅における騒音問題が度々話題になる日本では、事件に発展したり、そうしたトラブルを題材にした『ミセス・ノイズィ』のような作品も生まれる。
日々の生活に「音」が与える影響は多くの人が共感できるもので、分かりやすく不快感を想起させるような題材だろう。
スパニッシュホラー・引っ越し系ホラーの基本を押さえつつ、人が感じる根源的な不快感を刺激するような騒音系悪霊がマジで迷惑な『ボイス-深淵からの囁き-』はNETFLIXで配信中。深淵から囁くな!!
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