『サイトレス』レビュー/認知によって世界が変わる。演出が光るサイコスリラー映画

『サイトレス』

あらすじ

ある日突然襲われ、失明してしまった女性バイオリニスト。世話係として男性介護士が派遣されてくるが、やがて彼女は何かがおかしいと疑念を抱くようになる。

ロサンゼルスで開催される映画祭「Dances With Films」にて2020年に公開された、視力を失った女性を主人公にしたサイコスリラー映画『サイトレス(Sightless)』が2021年1月20日よりNETFLIXにて配信開始され、日本でも視聴可能となった。

事件に巻き込まれ、視力を失った人気バイオリニストのその後の生活を描きつつ事件の真相にも近づいていくといった内容だが、あらすじにもある通り派遣された介護士との関わりの中で物語は展開する。

©︎2020 MarVista Entertainment

本作の特徴として、視聴者が観ている映像は視力の無い主人公が捉えているイメージとリンクしており、描写される内容が全て正しい訳ではないことが挙げられる。

©︎2020 MarVista Entertainment

はじめは緑で描写されていた小鳥の色を他者に教えてもらい「青」だと認識すると画面上の鳥の色も主人公の認識に併せて変化する。
この演出により、タイトルの通り「サイトレス」な世界を視覚的に表現する映像としての面白さと同時に、何が本当で何が嘘か視聴者も分からないまま進行する面白さを味わうことができる。

©︎2020 MarVista Entertainment

そうした映像表現や劇中で疑心暗鬼に陥る主人公と視聴者の心情がリンクするような構造は独特な面白さがあり、上映時間も90分弱と観やすい長さのためサスペンス、スリラー作品が好きな方にはお勧めできる1本となっている。

ただし、上記の演出によって視聴者は映像中に「騙し」があることが予測できてしまうため、事件の犯人や物語の構造について予想しやすい構造になっている。
そのため、謎が明かされる終盤でも展開に驚きは少なく、予想通りの展開となる。

犯人自体は予想しやすいものの、犯行の動機や行動は常軌を逸しており、非常にサイコで不気味なキャラクターとなっている点も本作の魅力の一つであり、映像表現のみならずサイコスリラーとしての恐怖感も味わえる内容となっている。

本作では、「サイトレス」な世界をサイコスリラーとして描いているが、実生活の中でも、他者の意見やスタンスによってものの見え方が大きく変わることは珍しくはない。
認知によって大きく見え方が変わる世界は本作で描かれる「サイトレス」な世界とは本質的に大差なく、他者から与えられる情報による認知の歪みで疑心暗鬼に陥る主人公の姿からは現実での自分の生活と重なるような恐怖も感じた。

『サイトレス』作品概要

製作:2020年、アメリカ
上映時間:89分
監督・脚本:クーパー・カール
キャスト:マデリン・ペッチ、アレクサンダー・コック、ディセンバー・エンスミンガー

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