ローズ島共和国 ~小さな島の大波乱~
そもそもローズ島共和国とは
1968年にアドリア海公海上に建設された人工島「ローズ島」で建国した国家「ローズ島共和国」(他国から国家の承認は受けていない)を題材にした映画が、社会から弾き出された学者たちが、合法ドラッグでひと儲けしようとする姿を描いた傑作『いつだってやめられる』シリーズのシドニー・シビリア監督によってこの度NETFLIXよりリリースされた。
「ローズ島共和国」とは、要するに、勝手に海に島を作って勝手に国だと言い張ったものである。
国と言ってもこのような外観で、面積400平方メートルほどの規模であり、1969年にイタリア海軍によって爆破されている。
映画では島作りから爆破までの様子が描かれており、映画的な脚色もあり非常に面白く仕上がっている。
実際のローズ島の歴史との違い、映画的な面白さ
イタリア人のジョルジオ・ローザ氏が建国した実際のローズ島共和国には、売店やレストラン、郵便局があり、勝手に作った切手を売っていたという話や、独立とともに島の所有権を謎の財団に1億リラで売却していたこと、島爆破後も切手を売り続けていたことなど、キナ臭い話がいくつも存在するが、映画で描かれるローザ氏は普段から車や飛行機などを自作し公道を走るなどして警察の世話になるような「情熱が有り余ったエンジニア」として描かれ、法律や常識に縛られる窮屈さからの脱却を目指して建国する。
島(国)の運営を共に行う主要メンバーも、アル中や漂流者、脱走兵、若くして妊娠した少女など「普通に生きづらい」メンバーであり、そうした人達の救済としての役割も果たそうとジョルジオは奮闘する。
そうした思いや、元恋人を振り向かせたい下心などもない交ぜになり「自分の世界」を守るために政府と闘うローザの姿には胸を打たれる。
敏腕広報担当のノイマンが加入後は、島のリゾート化が進み、そうした状況に「これは本当に自分の理想の世界なのか?」と苦悩するローザが描かれる。
しかし、実際のローズ島では代理人が一人居住していたのみで、ローザ含め主要メンバーは島外に住んでおり、島にカジノを建設する計画もあったらしいので恐らくリゾート化が本懐だったと思われる…
映画的な人物の脚色もあり、史実をベースにしたコメディ作品として面白く仕上がっており、映画のクライマックス、島の爆破を目前にした駆逐艦VS島民の妙にアツいシーンは必見。
島の建築についても実際は4年ほどかけて制作されているが、映画では数ヶ月程度で完成させており、とんとん拍子でテンポよく物語が進行するのも観ていて飽きない。
幼い頃に秘密基地を作った・作りたかった、そんな思い出や感情は多くの人が共感できると思う、そうした感情を建国という形でパワフルに実行し「自分の世界」を作ろうとした男と、その男に反発した政府との戦争の行方をぜひ見届けてほしい。
『ローズ島共和国 ~小さな島の大波乱~』はNETFLIXにて配信中。
『ローズ島共和国 ~小さな島の大波乱~』概要
『ローズ島共和国 ~小さな島の大波乱~』
監督:シドニー・シビリア
製作国:イタリア
上映時間:117分
理想主義の技術者がイタリア沖に自ら島を建設し、国家として独立を宣言。”理想郷”をうたい世界中から注目を集めるが、イタリア政府からは目の敵にされてしまう