映画『プラットフォーム』レビュー/食料は上層階の食べ残しのみ…社会階層の断絶を残酷に描く異色のスリラー映画

『プラットフォーム』(El Hoyo/The Platform)

あらすじ

ある日、ゴレンは目が覚めると「48」階層にいた。部屋の真ん中に穴があいた階層が遥か下の方にまで伸びる塔のような建物の中、上の階層から順に食事が”プラットフォーム”と呼ばれる巨大な台座に乗って運ばれてくる。上からの残飯だが、ここでの食事はそこから摂るしかないのだ。同じ階層にいた、この建物のベテランの老人・トリマカシからここでのルールを聞かされる…1ヶ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは「171」階層で、ベッドに縛り付けられて身動きが取れなくなっていた!果たして、彼は生きてここから出られるのか!?

公開された予告・あらすじから「とんでもない映画が出た」と話題の『プラットフォーム』、2019年トロント国際映画祭観客賞、2019年シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀作品賞、視覚効果賞、新進監督賞、観客賞受賞の4冠、2020年ゴヤ賞で特殊効果賞…と非常に多くの受賞歴を経て満を持しての日本での公開となった。

スペインの新進気鋭、ガルダー・ガステル=ウルティアによる話題作は、前評判に違わないとんでもない作品だった。

社会階層の断絶・格差といったテーマをジャンル映画として描く

©︎BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

「穴」と呼ばれる建物で目を覚ました主人公ゴレンは「48」階層にいた。
見かけ10メートル四方程度の部屋には、洗面台とベッド、そして部屋の真ん中にぽっかりと空いた穴がある。
その小さな部屋を舞台にしたシチュエーションスリラーである本作、『CUBE』シリーズや『SAW』シリーズを彷彿とさせる雰囲気の作品だが、囚われた人間は何らかのトラップにかけられたり殺人鬼が登場するわけではなく、「食事は上層階からの食べ残しを食べる」というルールに縛られることとなる。

そうしたシチェーションの中、他のシチュエーションスリラー作品同様、人間の本性・醜さなどが露呈する内容となっているが、本作のテーマは随所で明確に示されており、他の階層の住人に協力を持ちかけようとするゴレンが「共産主義者か」と同じ階層の人間に誹られたり、下の階層の人間を価値の低い人間と見なし軽蔑するような人物が登場したりと、資本主義社会における社会階層の断絶・格差がテーマとなっている。

©︎BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

本作では物語の展開に併せて複数人の同居人が登場するが、最初に登場するトリマカシと名乗る老人が作品のテーマを体現するような存在として描かれる。
トリマカシは「穴」での生活に順応しているベテランで、上層から運ばれてきた料理を躊躇なく貪り、挙げ句の果てに下層に移る料理にツバを吐き捨てる。
そのような行為の理由には「下の回の奴には何をしても良い」「自分も上の階の奴らから同じことをされている」という意識があり、明確な階層毎意識の断絶がトリマカシの行動によって描かれる。

本作の特徴は、階層が毎月ランダムに変化することであり、ゴレンとトリマカシが48階から171階に転落することでスリラー要素が加速していく。
1階層に2人住んでおり、171階層に到達するまでに料理は食べ尽くされているため、そのような状況で発生するのは「共食い」であり非常に残酷な極限状態が描かれる。

ここで非常に恐ろしいのは、ランダムに振り分けられることででかなりの下層を経験した人間が、上層階に上がった際に、自分も経験した下層階の悲惨な生活を思いやる行動に出るどころか、上層階の特権をフルに享受しようとする点で、一部の人間を除き「連帯」も「協調」も「配慮」も生まれない人間の本質が映しだされる。

『パラサイト』のように社会階層の断絶・格差を描いた作品が昨今増えているが、こうした作品では現実の実態に即して「社会階層の再生産」による階層毎の意識の断絶が描かれるが、本作『プラットフォーム』では階層がランダムで流動的≒再生産されないにも関わらず、明確な差別意識や自己本位な人間の姿が描かれる救いのない様が恐ろしい。

©︎BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

そうしたテーマの捻りの効いた描き方に、同居人との「共食い」や、ルールの裏を突こうとする人物の登場、「穴」からの脱出と物語として面白い展開が同居し、テーマ性とエンタメの絶妙なバランスが非常に面白い作品に仕上がっている。

「穴」のルールに「一つだけ好きなものを持ち込める」というものがあり、持ち込んだものとその理由やエピソードで人物像が描かれるキャラクター達も個性的で面白い。
最初の同居人トリマカシのエピソードは、資本主義のネガティブな要素を表現するようなものでありながらクスッと笑えるものとなっており、トリマカシが持ち込んだ「サムライプラス」とは一体何なのかぜひ映画を観て確かめてほしい。

「食事」という生命に直結する行為を主軸に描くことで共感も高まり、餓えの極限状態による凄惨な様子も思わず目を背けたくなるほどの映像となっているが、本作には「穴」における格差是正のアンサーも提示されるうえに、自分の置かれる立場に流動性も存在する。
社会の構造を考えれば、現実の方が凄惨で残酷な構造になっているということをショッキングな内容を通して提示され、社会構造の残酷さ、人の醜い本質について改めて考えさせられるような体験となった。

映画『プラットフォーム』の作品概要

プラットフォーム(The Platform / El Hoyo)
監督:ガルデル・ガステル=ウルティア
キャスト:イバン・マサゲ、アントニア・サン・フアン
上映時間:94分
公式サイト http://klockworx-v.com/platform/

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