映画『カポネ』公開前レビュー!「暗黒街の顔役」によるスローライフは実現するのか…?

2021年、邦画では異色のヤクザ映画が姿を現しました。

綾野剛と舘ひろしが共演した『ヤクザと家族 The Family』や、役所広司演じる一人の男が堅気になろうと社会復帰を目指す『素晴らしき世界』など、血で血を洗う任侠映画とは異なる作品です。

そんな邦画が名を連ねる中で、海外のギャング映画も負けていません。

2月26日(金)から公開の映画『カポネ』もまた、これまでのギャング映画とは一味違った作品となっています。

映画『カポネ』概要

〈あらすじ〉

1940年代半ば、長い服役生活を終えたアル・カポネは、フロリダ州の大邸宅で家族や友人たちに囲まれ、静かな隠遁生活を送っていた。かつて“暗黒街の顔役”と恐れられたカリスマ性はすでに失われ、梅毒の影響による認知症を患っている。一方、そんなカポネを今も危険視するFBIのクロフォード捜査官は、彼が仮病を使っていると疑い、隠し財産1000万ドルのありかを探るために執拗な監視活動を行っていた。やがて病状が悪化したカポネは現実と悪夢の狭間で奇行を繰り返し、FBIや担当医師を困惑させ、愛妻のメエも彼の真意をつかめない。はたしてカポネは、本当に身も心も壊れてしまったのか。それともーー。

https://capone-movie.com/
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晩年のカポネに扮するのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)や『ヴェノム』(18)で知られるトム・ハーディ。

『レジェンド 狂気の美学』(15)では、イギリスの双子ギャング「クレイ兄弟」を一人二役で演じたこともあり、ギャング役はすっかり板についている俳優の一人です。
『レジェンド』では暴力によって裏社会を支配する様子を、どっしりとしたパワー系の演技で見せています(凶器がナックルでした)。

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共演には『ハウス・ジャック・ビルト』(18)で物騒な役柄を演じたマット・ディロンや「ツイン・ピークス」のカイル・マクラクランが名を連ねました。

特にマット・ディロンの役どころは『ハウス・ジャック・ビルド』を見ていると、なかなか感慨深いものがあります。

これまでにないカポネを見てみよう!

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これまで何度も映画で取り上げられてきたアメリカのギャング、アル・カポネ。

彼をモデルにした『暗黒街の顔役』は、アル・パチーノが主演を務めた『スカーフェイス』(83)となって蘇り、名言“Say hello to my little friend!(「これがご挨拶だ!」)”は一生に一度は言いたい名言”第1位となりました(当社比)

アル・カポネを取り締まる人々の活躍を描いた『アンタッチャブル』(87)では、ロバート・デ・ニーロがカポネを熱演。

会食の席で男の頭をバッドで殴り散らかすなど、凶暴な一面を見せてくれます。

ところが今回の映画『カポネ』では、これまでのギャング映画とは異なる“出所後の”アル・カポネを描いた作品です。

脱税の罪で11年の刑期を終えたカポネを待ち受けていたのは、梅毒の影響による認知症

これが敵対勢力だったら太刀打ちできたかもしれませんが、さすがのカポネも病気には歯が立たず。(ちなみに敵対勢力は「聖バレンタインデーの虐殺」で、ほとんどがあの世に葬られている…)

こんなにもニッチなカポネの側面に迫ったのには、監督のある熱い思いがありました。

※「聖バレンタインデーの虐殺」
1929年2月14日にシカゴで起きたカポネ率いるギャング組織と敵対勢力による抗争。
警察に扮したヒットマンがカポネのライバル7人を虐殺。マスコミが報じたことでカポネ逮捕に拍車がかかった事件です。

映画『カポネ』の監督は『クロニクル』のアノ人

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(FBIはカポネが病気のフリをして、財産を隠し通そうとしていると推測)

カポネの監督を務めるのは「AKIRA」を彷彿とさせる映画『クロニクル』で、日本からも注目を集めたジョシュ・トランクです。

ギャング映画といえばマーティン・スコセッシやブライアン・デ・パルマなど、バイオレンス描写に定評のある監督をイメージしますが…。
本作ではSFを得意とするジョシュ・トランクが、オリジナル脚本を執筆するほどの熱量で挑んでいるのです。

ジョシュ・トランクはかねてからカポネに興味を持っていたようで、出所後のカポネを描く作品がないことを気にしていました。
インタビューでは「変わり果てた姿で出所し、自分の帝国が跡形もなくなっていることを知るカポネのことが、いつも気にかかっていた」と語っています。だいぶ変わった趣味をお持ちで…。

実際、本作ではギャング映画でおなじみの敵対勢力とのドンパチや、警察などを買収する悪どい描写もありません。
唯一の「敵」であるFBIも、実在するのかも怪しい「隠し財産」を突き止めるため、執拗にカポネを盗聴・監視するのみ…。そんなギャング映画、本当に面白いのか…?

しかし本作ではこれまでにないギャングの「転落」を禍々しく見せてくれました。

ギャング映画の醍醐味「転落」の描写が特殊過ぎる

本作はカポネ・ファミリーの子どもたちとカポネが鬼ごっこをするシーンからはじまります。
子どもたちからモミクチャにされるカポネの姿は、まるで親戚の気さくなおじいちゃん。
およそ人をノコギリでぶった切った人間とは思えません。

しかし認知症によってカポネの威厳は更に失われていきます。

友人や部下の前で失禁、最愛の妻・メエの前で脱糞、会話もままならなくなり、咥えていた葉巻はなぜか人参に変わっていました。

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(ちゃんと?葉巻に似せて途中で切られているニンジン)

まだ病への理解が追いついていないメエからは、暴言を吐いたことで強烈なビンタを喰らいます。まるで漫画のようにビターンッ!と床にぶっ倒れるカポネの姿も切ない…。
かつてのギャングとしての威厳は皆無です。

さらに収入源を失ったカポネは財の象徴である絵画や石像を売り払って、なんとか豪邸を維持している状態。
ラジオからは幻聴として過去の栄光が報道されるなど、切なすぎる「転落」の演出も…。

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ただしカポネが見る悪夢はハードコアそのもの。
夢の中で転がる死体は『アンタッチャブル』の階段シーンより遥かに多いです。
マット・ディロン演じるカポネの友人・ジョニーも、マジで一生いらない「プレゼント」を置いていくし、それを見て怯えるカポネの顔も夢に出そうなほど怖い…。

こういうマッドな演出こそ、ジョシュ・トランク監督が得意とするものかもしれません。

カポネに穏やかな余生は訪れるのか?

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監督曰く「本作はこの時代と出来事の個人的な想像」によってに描かれています。
伝記映画というより、史実を基に監督がカポネの姿を独自にイメージした作品でもあるのです。

例えばカポネによる家族愛の描き方がその1つ。
ラストに進むほどカポネの狂気も加速し、最後にはある事件を引き起こしますが、その一方で家族への愛情にも焦点を当てていました。

作中で登場する”ある少年”とのやりとりによって、カポネの優しい側面を垣間見ることができます。

カポネの狂気にフォーカスするだけでなく、彼が家族と穏やかな余生を送れるかどうかにも注目すると面白い作品です!

映画『カポネ』作品情報

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公開日:2021年2月26日(金)
監督・脚本:ジョシュ・トランク『クロニクル』『ファンタスティック・フォー』
出演:トム・ハーディ『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、マット・ディロン『ハウス・ジャック・ビルト』、カイル・マクラクラン『ツイン・ピークス』

2020年/アメリカ・カナダ/英語/カラー/104分/シネスコ/ドルビーデジタル/原題:Capone
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム

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ヤマダマイ
TS○TAYA→ミニシアター勤務を経て映画ライターをやっています。 謎な映画まとめ記事や、ネタ系ドキュメンタリー映画が好きです。 インドアなのに映画Tシャツを見ると買ってしまうのが最近の悩み。 あと映画ライターと名乗っておきながら、考察記事を書くのは死ぬほど苦手…。(観るのは大好き) Twitter→@serial_mai

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