『あなたの知らない卑語の歴史』(原題:History of Swear Words)
“ファック”、“シット”、“ディック”…
日本に住んでいてもよく耳にするこれらの言葉だが、そのルーツやなぜ多くの人が使うようになったのか、ニコラス・ケイジ進行でその歴史に迫るドキュメンタリー作品がついに公開された…!

そうしたスラングを連発するニコラス・ケイジの姿や、5話のプッシー回で女性器について熱く語るニコラス・ケイジの姿を見るだけでも幸せになれるが、本作はそうしたコメディ要素だけでなく、スラングの歴史やスラングによって発展した文化、守られた権利などを正しく学べる堅実なドキュメンタリー作品となっている。



恐ろしく簡潔で直球な各話のタイトルに驚くが、定番のスラング“Fuck”に始まり“Shit”、“Bitch”、“Dick”、“Pussy”、“damn”と洋画のセリフで一度は耳にしたり、日常よく口にするようなスラングについてその歴史を学ぶことができる。



ファックやビッチなど、元々はネガティブな意味や一般的な動詞としての意味しか持たなかった言葉がポジティブな意味や性的な意味を持つに至った過程や、一般的に信じられている誤った説について、辞書の編纂者や言語学の専門家など「言葉のプロ」が正しい歴史を説明しながら、要所要所でコメディアンやミュージシャン達が普段どのようにスラングを使うのか、その用法やバリエーションなどを話すことでテンポよく進行する。



スラングとは切っても切れない「検閲」「レーティング」に関するトピックが特に興味深い。
映画において、R指定では無制限のファック使用が可能だが、PG13の映画では1ファックのみ使用できるルールからファックの使い時に苦慮する話などが語られる。
また、ヒップホップカルチャーもスラングの普及に大きな影響を与えていることが語られる。
ストレイト・アウタ・コンプトンでお馴染みのN.W.Aは『Fuck Tha Police』で、基本的に忌避されるワードであるファックを音楽として芸術に昇華させ、広く普及させると同時に抑圧された市民の意思表示として多用されるようになった。
2 Live Crewはプッシーを多用するリリックで物議をかもした。
スラングが音楽を通して悪意ではなく表現として使用されることで、もちろんネガティブな反応もあるが大衆からポジティブに捉えられてキャッチーな言葉として発展した歴史は非常に興味深い。
見所としてもう一つ、先述した映画とスラングの関係で本作はとんでもない調査を行っており、これまで最もFuckを利用した数が多い俳優ランキングを作成している…!






出演者の予想ではサミュエル・L・ジャクソンの名が挙げられるが、その予想に反した1位のファックユーザーが誰なのかは実際に番組を観て確認してほしい。
それにしても凄まじいファックへの探求に脱帽してしまう…






汚いスラングを叫ぶことで身体能力が向上することも専門家の口から語られ、突如意味不明な実験を始めるなどコメディパートも笑える本作は1話20分とコンパクトで観やすい構成のため息抜きにもちょうど良い作品となっている。
全編ノリノリのニコラス・ケイジの進行によって正しいスラングの歴史が学べる『あなたの知らない卑語の歴史』はNETFLIXにて配信中!
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ニコラス・ケイジが進行役を務め、英語の代表的卑語を紹介するシリーズ。興味深い史実やジョークを交え、”ののしりことば”の歴史や文化的影響を探っていく。