『ヴァンパイアvsザ・ブロンクス』(Vampires vs. the Bronx)
ニューヨークの最北端「ブロンクス」を舞台に、ヴァンパイアの存在を偶然知った地元の少年3人組が、ヴァンパイアの存在を信じない大人達にバカにされつつも街を守る為に戦いを挑み、その冒険で少年達の成長を描く王道ジュブナイル展開をベースにしたヴァンパイア×ジュブナイルな作品。
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子供達が怪異に挑む展開は「ストレンジャー・シングス」や「IT」を彷彿とさせ、ヴァンパイアの設定もニンニクや十字架、日光が弱点、杭で打たれると死ぬ、家主の許可がなければ家に入れない等、非常にクラシックな設定で固められたヴァンパイアらしさの強い設定となっており(外見もヴァンパイアっぽさ全開)、王道な物語でどこか懐かしさも感じサクッと気軽に観られる映画だが、タイトルにもなっているブロンクスとヴァンパイアの侵攻方法によって本作が非常に独特な味を持っている。
舞台となっている「ブロンクス区(The Bronx)」はきらびやかなイメージを持つニューヨークの一部でありながらも「治安の悪さ」と「貧困」に苦しむ土地で、特に南部に位置するサウスブロンクスは、80年代には大家が火災保険を得る為に人を雇い放火させることが多発し日々火災が発生し、新聞記事の見出し「The Bronx Is Burning.」が生まれたことも有名な土地である。
そのような土地柄から、「人が消えても誰も気にしない」ことを理由にヴァンパイアは自分たちの拠点としてブロンクスを選び、不動産業者によるジェントリフィケーション(都市の富裕化)を隠れ蓑に、富裕層ではなくヴァンパイアの拡大を目論んでいるという設定になっている。
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主人公であるミゲルは、ヴァンパイアとの直接的な戦い以前から、家賃の引き上げにより、閉店の危機に瀕している馴染みの店を救うための寄付金を募る活動を続けていた。
街の元々あった店は続々と閉まり、高級店やおしゃれな店の開店予定で埋め尽くされていく…ジェントリフィケーションには地価の高騰に伴い、家賃も上がる結果、元々その地域に居住していた貧しい人々が住めなくなって、その地域から追い出されてしまうという問題点が現実にも存在する。
ブロンクスにおける、蔑ろにされる低所得層の受難をヴァンパイアの侵攻という形で表現したのは非常に独特で面白い。
とは言っても、本編はかなりコミカルな部分も多く気軽に楽しめる。
ヴァンパイアと戦うための参考としてMARVELの名作『ブレイド』を鑑賞するシーンは非常に微笑ましい。
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この際、一際テンションの上がっていたギークボーイのキャラクターも面白く、仲間に「『コミック』の知識ではヴァンパイアと戦えない」と言われたのを『ビジュアルノベル』だと訂正するシーンは「すげぇオタクっぽいセリフ!」と思い妙に感心した。
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ブロンクスとそこに住む人が置かれた現状のリアルを知ることが出来る側面がありつつも、非常に気軽にサクッと観られる王道ストーリーに仕上がっている『ヴァンパイアvsザ・ブロンクス』はNETFLIXにて配信中。
作品情報
作品名「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」(原題Vampires vs. the Bronx)
監督:オズ・ロドリゲス
キャスト:ジェイデン・マイケル、ジェラルド・W・ジョーンズ三世、グレゴリー・ディアス四世、サラ・ガドン
上映時間:86分
製作国:アメリカ(2020年)
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