みんな大好き、ニコケイことニコラス・ケイジ先輩。
意識高い系メディアなら「アカデミー主演男優賞」なんて紹介するだろうが、このように紹介するのは、ムービーナーズにもニコケイ先輩にも失礼だろう。
彼は警官なのにドラッグでハイになり窃盗まで犯す役や、警官なのに法で裁けなかったDQN(死語?)に私刑を下す役など、ぶっ飛んだ役を演じさせたら右に出る者はいない、漢の中の漢である。
そんなニコケイ先輩が主演を張る『カラー・アウト・オブ・スペースー遭遇ー』を鑑賞した。
本作を一言で表すなら“薬物”である。
作中誰もドラッグを使わないのに、観ているこっちがドラッグでもやったのかと思うほど狂気的な映像を見せつけられる。
1900円払ってニコケイ先輩を拝めるだけでなく、合法的にハイになれるとってもオトクな映画なのだ。
※筆者は、本作の原作「宇宙からの色」どころか、どのラブクラフト作品も未読というズブの素人状態で鑑賞しました。故にレビューというより、レポート記事に近いです。考察しないし、途中でネタバレもあるのでご了承ください。
『カラー・アウト・オブ・スペースー遭遇ー』あらすじ
ネイサン・ガードナーと妻のテレサは子どもたちとともに大都会の喧噪から逃れるため、閑静な田舎に移住してきた。しかし、前庭に隕石が激突して以来、一家の生活は心と体に影響を及ぼす地球外変異体との戦いに明け暮れ、理想としていた静かな田舎暮らしは悪夢へと変わってしまう。
作中の3分の2はキレてるニコラス・ケイジ
自宅の庭に隕石が墜落してから、徐々に様子がおかしくなっていくガードナー一家(隕石が落ちる前からアルパカビジネスをするなど、ネイサンは例外なところがあるが…)
妻のテレサ(ジョエリー・リチャードソン)はどこかぼんやりするようになり、末っ子のジャック(ジュリアン・ヒリアード)は見えない友だちと遊ぶようになる。
唯一正気でいた長男のベニー(ブレンダン・マイヤー)と長女ラヴィニア(マデリン・アーサー)は、おかしくなっていく家族から逃れるために、家を出ることを決意するが…。
この家族で、とりわけ狂気の沙汰を表現しているのがニコラス・ケイジ演じるネイサンだ。
隕石が落ちてから、彼だけ常に異臭を感じるようになり、以降ずっとイライラしている。本編の3分の2はずっとこの調子。
都会の喧騒から逃れ、田舎でのんびりアルパカライフを考えていたネイサン。
しかし隕石が落ちてから、マニュアルどおりに行なった家庭菜園さえも失敗する。
するとニコケイ先輩はゴミ箱に採れたての野菜を投げ込み、「スラムダンク!」と絶叫していた。これも隕石の影響なのか…。謎は深まるばかりである。
ちなみに字幕もちゃんと表示されていが、このセリフはアドリブなのか台本どおりなのかも気になるところ。
この夏、最高にアガる世紀末演出
多くの人は『カラー・アウト・オブ・スペース』で表現される“宇宙の色”に興味を持つと思うが、本作の魅力は色だけではない。
どんどん“何か”に襲われるガードナー一家の恐怖を、あらゆる演出で表現してくるため、観客もどんどん精神的にキツくなる。
ときおり『ブレードランナー2049』のサントラを彷彿とさせるような、壮大な劇伴が流れたと思いきや、ノイズ全開な音が響き渡ると目を見張るほどの超展開が巻き起こる。
映像も特殊効果によって、まるで悪夢のごときサイケな世界観が炸裂。
ラストは怒涛の展開になだれ込み、観客が物語を理解しようとする気持ちを完全に無視するスピードでラストへ突き進む。
理解することを(割と早い段階で)放棄した筆者は、ひたすら狂気の映像に身を委ねて、ガードナー一家が散々な目に遭う様をニヤニヤしつつ鑑賞してた。
何故かあの映像を見ている時、異常にテンションが上っていたのだ。
まさに観客までも狂気に陥れる怪作である。
ドン引きのクリーチャー爆誕(ネタバレあり!)
筆者が『カラー・アウト・オブ・スペース』で1番目を背けたくなったのは、テレサがぼんやりして自分の指を包丁で切り落とすシーンでも、ラヴィニアが儀式のためにカッターナイフで体中を傷つけるシーンでもない。
それは、テレサとジェイコブが“宇宙の色”によって融合してしまうシーンだ。
融合というとなんだかポジティブにも聞こえるが、物理的にテレサの体にジェイコブが吸収されている。
アンコウは交尾する際、オスがメスに同化されるというが、まさにそんな感じである。
しかもタチが悪いことに、融合してもテレサとジェイコブに意識があるのだ。
皮膚もただれ、うめき声しかあげられない妻と息子の融合体を部屋に運ぶネイサンたちだが、終始グロテスクなうめき声が部屋にこだます。
目どころか耳も覆いたくなるトラウマシーンだ。
『遊星からの物体X』でも、人と人は融合しなかったのに…。
この辛すぎる展開から、ネイサンはどんどん現実逃避をするようになる。
ついには、バラバラになった本当の家族をほったらかして、自分は一家団らんの幻覚を見るシーンもかなり胸糞が悪い。
こうして観客さえも、視覚的・精神的に追い込んだ後、カオスなラストシーンで異常なテンション上昇を引き起こさせるのだ。
筆者はこの記事を書いている今、すでに『カラー・アウト・オブ・スペース』を再鑑賞したくなっている。禁断症状…。
「ニコケイ先輩、相変わらずですねえ」と油断していると、異次元にぶっ飛ばされる本作は絶賛公開中。
この夏ブチ上がりたいなら『カラー・アウト・オブ・スペース』だ!
『カラー・アウト・オブ・スペースー遭遇ー』作品情報
監督:リチャード・スタンリー
脚本:リチャード・スタンリー、スカーレット・アマリス
出演:ニコラス・ケイジ、ジョエリー・リチャードソン、マデリン・アーサー、ブレンダン・マイヤー
製作:ダニエル・ノア、ジョシュ・C・ウォーラー、リサ・ホウェイレン、イライジャ・ウッド
公開日:2020年7月31日(金)
上映時間:111分
制作国:ポルトガル・アメリカ・マレーシア合作(2019)
配給会社:ファインフィルムズ
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