ババアが槍で!ジジイが斧で!!妖精どもブチのめす!!トロル&トロル2

この秋、妖精をめぐる大冒険があなたの家で始まる!

トロール/トロルとはノルウェーの伝承に登場する妖精。毛むくじゃらで変身能力を持つとされ、『指輪物語』や『ハリー・ポッター』、『ドラゴンクエスト』などにも登場し、多くは醜く野蛮な種族として扱われている。

また、転じてインターネットの荒らし行為をするユーザーを「トロール」と呼んだりすることもあるらしいけどこれは英語圏の文化なのか私はあんまり聞いたことないな……。あ、でもFPS遊んでるときにぶりぶり前に出ていったら「トロールプレイやめろ!!!」って怒られたっけ……。私はトロルです。マシーナリーとも子よ。

「洋画は厳選されたものが渡ってくるので邦画より平均点が高く感じられるんだ」なんて話をよく聞くが、今回はそんな、厳選からこぼれ落ちていった映画をご紹介。ユニークな映画の配給を行っている「アムモ98」から『トロル』『トロル2 悪魔の森(以下トロル2)』のPRの依頼がやってきたんだぜ。

『トロル2』は史上最低のホラー映画らしい。なんか史上最低のホラー映画って結構いくつか無いですか?

寡聞にしてまったく聞いたことがない映画だったんだが、聞いてみたところによると特に『トロル2』のほうは「史上最低のホラー映画」のひとつとして有名、一部では熱狂的な人気を誇るらしい。ってかホラー映画なの!? 私ホラー映画苦手なんだけど。怖いのとかグロいのとかイヤなんだよ! 

どれくらいイヤかっていうと『エイリアン』シリーズも怖すぎて見たことがないし、『コマンドー』でカルロが腕を斬られるシーンすらグロくて「わわっ」と目を逸らしてしまうくらい怖い。でもホラー小説とか『DOOM』やるのは好きなんだよな。なんでなんでしょうね。感情ってのは不思議なものなのさ。

果たしてまあ……今回鑑賞した両作はギリギリ耐えられるくらいのグロさではあったけど微グロです。興味を持った人はそこだけ注意してね! 切り株とか開放骨折とかは一応無かった。グチャグチャ汁気とか肉がイヤ~~って感じはまあまあありました。

トロルのアパート攻略を阻止しろ!子供とババア!

『トロル』と『トロル2』は何の関係も無い映画らしいんだけど(バカ!)一応順番通りに見てみたよ。

サンフランシスコの郊外に引っ越してきた4人家族。しかしそのアパートにはなにやら秘密が……? という雰囲気で始まる本作。低予算ながらなかなか丁寧に作られてるな~という印象を受ける作品で、ユニークな住民がいろいろ出てくるところは集合住宅ものとして楽しい。引っ越してきたばかりの家である、という環境も、密室ものではないんだけれど「地味に逃げるところがなくない?」って感じでおもしろい。アパートが少しずつトロルの攻撃で侵食されていく様子もゲームのステージを攻略されていくような感じというか、物語の進行が飲み込みやすくてうまいなと思ったね。

被害者家族。親父はレコードを3000枚も持ってるバカで、貴重な癒やし枠

トロルの出し惜しみが無いのもいいところで、「マンションで不思議なことが起こり続ける、と思っていたら実はそれはトロルの仕業で……」みたいなカッタルイことはせず開始5分くらいでいきなりトロルが出てきてくれるのでうれしい! まだ不思議なことも起きてねえのに先にトロルが! 

しかもそのあと速攻で妹を殺すのでひっくり返った。最初、ホラーというのも聞いてなくててっきり『アルフ』みたいな話だと思ってたのでビビった。

中心的な悪役として活躍するトロル。見ての通りちっとも愛嬌はないが、実に活き活きとした造形で感心させられる
トロルはひと部屋ずつマンションを襲撃し、指輪で住民を化け物へと変え、マンションを少しずつ異世界へと変えていく……。このシーンは本作のなかでもまあまあグロく、「うわぁ~ 嫌だ~~」と思わされる
主人公の妹へ変身したトロルは、アパートに住む小人症の男性と心を通わせる。なかなか味のあるサブプロットで、トロルの掘り下げにもなってておもしろい

本作のキーパーソンとなる住民「クレア」が非常に魅力的で、妹を乗っ取られて絶望しかけた主人公の少年と心を通わせる描写はなんつーのかな、美魔女的な魅力というか。おねショタとまで言っちゃうとちょっと下卑た感じになっちゃうんだけど、「憧れ」「若さへの期待」みたいな幸福感が画面からにじみ出ていて全部いいシーンだった。集合住宅で、他の大人の部屋に遊びに行くというシチュエーションもなんか小さな特別な体験って感じでいいよね。

そう、アパートの部屋って、もともとそれぞれ立派に別世界なんだよな、というのをトロルに攻略されていく異世界と両軸で表現できていて実によくできとる。クレア、トロルに対してもパワフルに戦ってくれるしすごくいいキャラです。

やたら迫力と魅力に満ちたババアのクレア。部屋にはクラシックな武器がたくさん飾ってあるぞ! 一体何者なんだ……

低予算といいながらクリーチャーの造形や特殊メイクもよくできていてかなり見どころアリ。さすがに超名作! とまでは断言できないけど、限られたシチュエーションを存分に生かしたいい映画でしたわ。素直にお薦めできる! ちょっと不気味・微グロなシーンもあるけどね。

あと親父の名前がハリー・ポッターです。

ハリー・ポッターとハリー・ポッターJr。最初は字幕のチョケかと思ったけどマジです

ジジイの亡霊がゴブリンを物理攻撃で倒す!

続いて『トロル2』。冒頭、物語形式で本作の敵、「ゴブリン」が語られるんだが……っておい! ゴブリンだぁ!? トロルじゃないのかよ⁉︎

 で、その際に流れるBGMがやたら軽快で……ともすればクールなデザインのアクションゲームで流れていそうな雰囲気で、ゴブリンに襲われる若者……という緊迫したシーンにあまりに合ってなくて笑えてしまう。

どうもこのBGMは本作のメインテーマ的扱いらしく襲撃シーンでちょくちょくかかる。だから合ってねえんだって! あとゴブリンの着ぐるみも悲しいくらいヘボく、前作『トロル』の片鱗はまったくない。

『トロル』の美麗な造形はどこにいったんだ!? というくらいヘボいゴブリンのきぐるみが泣ける。2代目ゼットンやデットンを彷彿とさせるぜ

先述通り、「史上最低のホラー映画」と言われているらしい本作は前作『トロル』と比べるとどーにも全体的にユルい仕上がりで……。「低予算ホラー映画」というよりは「ホラー映画のパロディバカ映画」といった風合いに仕上がってしまっている。

家族が旅行に向かった静かな農村は実はゴブリンの巣窟で……。という設定は定番ながら緊張感があるし、ゴブリンは肉や動物性の食品を嫌い、植物由来のものを好むという設定も独特でソソるものがあるんだけど……。なんかユルいんだよな〜!

なんとなく画作りもヘボい。前作は構図がんばってたんだなと勉強になります

本作のキモとなる脅威は「ゴブリンが供した食べ物を口にすると、ゴブリンが好む植物に生まれ変わってしまう!」というもので、なるほど確かに怖いんだけど、食べて変貌した姿は「人から枝とか草が生えた物体」程度だし、植物になっても身動きが取れないだけで意思は残ってるというのがなんとも間抜け。

相手が出してくる料理に手はつけられず、自然と兵糧攻めにあっていく主人公たち。その打開策となるのは……。これはなかなか笑えたのでぜひ君たちの目で確かめてほしい!ぜ!怖くはないです。

また、前作のクレアに引き続いて本作も作品全体を牽引していく強烈なパワーを持つキャラクターがいる。それが主人公の祖父。彼は物語開始時点では個人で、孫を守る亡霊として時たま助言を残すのだが……。

すさまじいパワーでゴブリンを攻略するジジイ。そもそもなんでゴブリンの習性に詳しいのか、なぜ特殊な力があるのかはまったくわからない

物語が進むにつれなぜか次々と力を増していき、語りかけてくるだけに飽き足らずヒッチハイクはする、時間は止める、斧や消火器をつかんで殴りかかる、ゴブリンに裏拳を浴びせるなど、もはや亡霊の垣根を超えて召喚獣やスタンドのような扱いとなっていて本作をホラーではなくバカ映画として確固たるものにしてしまっている。このジジイ、強すぎる! 

ゴブリンファーストキルもジジイがもたらした火炎瓶で達成! 亡霊が火炎瓶取り出したらなんでもアリだろ!

作中でも完全にリーサルウェポンとして扱われており、父親がいまいち頼りにならないのもあって家族のアタッカーとして存分に活躍してくれる。亡霊なのに! もしかしたら亡霊というより守護霊的なアレなのかもしれないけどどっちにしろおかしいだろ! やりたい放題すぎる。

化けて出る部屋を間違えるなの、どこか間抜けなところも目立ちキュートではあるのでこのおじいちゃんを拝む意味でもおすすめです。

もうジジイに頼るしかない! 家族の心がひとつになったとき、降霊術が行われる……。なんスかこの映画

友達へのプレゼントにもピッタリ!

「史上最低のホラー映画」の呼び声もある『トロル2』。だけど絶句するほど酷すぎてどうしようもないぜ! って感じではなくてどちらかというと「ひっでぇ!」って笑えるようなバカさがある。愛嬌があるという意味ではいい映画だと思うよ。というか『トロル』は真面目に作ってるけど『トロル2』は完全にふざけてやがる! トウモロコシを持ってきた美女(ゴブリン)に向かってチャラ男が「ポップコーンの方が好きだ」」というと濡れ場が始まり……情事と共にトウモロコシが弾けていくとか悪ノリでやったとしか思えないようなシーンがポンポン出てくる。

理屈はわからないがトウモロコシ越しにキスするとポップコーンになる
このへんで真面目に見ることは諦めました

演技も全体的に大根……とまで言うとけなしすぎな感じが出ちゃうけどふんわりした感じで、特にメガネの男が慟哭する超棒読みの「オーマイゴブーーーーーーーーーーーーーッド!!!!」のセリフは本作から一人歩きしてネットミームになってるそうな。さまざまな文化がこの世にはあります。

こじんまりとしながらも確かな仕事が行き届いていて気持ちがいい『トロル』と、あまりにもふんわりスカスカな脱力バカ映画の『トロル2』。なんの因果で令和のこの世に改めてリリースされるのかはよくわからないが、それぞれここでしか得られない珍味としての魅力は確かに存在している。

『トロル』『トロル2 悪魔の森』は、2022年11月4日、各4800円(税別)でアムモ98から発売予定! 『トロル2』には同作のドキュメンタリー映画として作られた『ベスト・ワースト・ムービー』も収録! なんてこった。よろしくね〜。

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