2003年に下北沢で劇場公開され、立ち見が出るほどの盛況で「下北沢住民の1/3が観た」と言われる伝説の映画が存在する。それがこちら
『幽霊VS宇宙人』
30分程度の短編4本で構成されるオムニバス映画で、それぞれ「幽霊」と「宇宙人」をテーマに制作されている。
幽霊をテーマにした作品は清水崇監督、宇宙人をテーマにした作品は豊島圭介監督が担当している。
『呪怨』をはじめ、『こどもつかい』『犬鳴村』とヒットを連発する、邦画ホラーでは欠かせない人物である清水崇監督、『怪談新耳袋』や『マジすか学園』等アングラで個性の強い作品を生み出し続ける豊島圭介監督の競作というかなり豪華な作品なのだが(時期的には清水崇監督は呪怨や呪怨2を撮っていた時期と被る)、中身は予告を見ていただければ分かる通り、幽霊や宇宙人の出現に戸惑う人々を力の抜けた世界観で描く非常に緩い作品となっている。
同じ会社に所属する両監督のほぼ趣味で制作された自主映画なので、びっくりするくらい緩い内容ではあるものの、演出等の面ではそれぞれの確立された技術・個性を感じることができる。
4本で構成される本作の内、特におすすめなのが清水崇監督の『怪談 こっちを見ないで・・・』である。
1人留守番をする青年のもとに現れた幽霊。そんな幽霊と酒を飲み交わして事情を聞いたり、古くなった刺身を食わせて撃退しようとする青年の姿を描いた1編だ。
本作は、『でろでろ』『ゆうやみ特攻隊』等で知られる押切蓮介先生の『トイレまで4メートル』(押切蓮介劇場 マサシ!!うしろだ!! 収録)が原案となっている。
『でろでろ』で確立された「ホラーギャグ」のスタイルを映像化した本作は、押切先生が描くシュールなキャラクターと世界観を清水崇監督のホラー演出で表現している貴重な作品と言える。
2004年に制作・公開されたTVドラマ『怪奇大家族』(企画監修・原案:清水崇、豊島圭介)も同様のテイストで描かれており、本作が気に入った方には併せておすすめする。
そんな、『幽霊VS宇宙人』2008年に同タイトルの別作品が劇場公開されており、その際に2003年公開の本作も2本ずつ収録の形でDVDがリリースされ(2008年公開版は『幽霊vs宇宙人 GREAT』としてリリース)自宅でも楽しめるようになった。
2008年の劇場公開時に、既に世界的なビッグネームとなっている清水監督は以下のように語る。
大きな商業映画では、やらせてもらえないこういう企画も自分には必要。大規模な作品だと、別の意味でフラストレーションも溜まります。それを吐き出さないとやってられない。宣伝なんかも、大作になればなる程、分担作業で監督の目が届かなくなるので人任せになるけど、『幽霊VS宇宙人』ではチラシ配りまで自分でやった(笑)。それがまた楽しい。良い意味で息を抜いて、楽しい作品を作ったんです
https://news.mynavi.jp/article/20080409-shimizutoyoshima/より
ホラーが苦手な方でも気軽に楽しめる本作『幽霊VS宇宙人』、清水崇VS豊島圭介と言い換えても良い、個性の強い監督のアットホームな競作を皆さんも夏の息抜きに見てみてはいかがだろうか。
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