『樹海村』レビュー/村シリーズ第2弾は都市伝説を融合させた結果とんでもないことに…

昨年大ヒットした『犬鳴村』に続く「実録!恐怖の村シリーズ」第2弾となる『樹海村』の公開が開始された。

昨年公開の『犬鳴村』

前作は、都市伝説として語られる「犬鳴村」をベースに構成された物語だったが、今作も同様に都市伝説をベースにしている。
しかし、富士の樹海に謎の集落が存在するという都市伝説と、ネット怪談としても有名な「コトリバコ」の要素をミックスさせることで一つの物語が紡がれた本作は非常にカオスなことになっていた…!

『樹海村』

あらすじ

「犬鳴村」に続き、実在した心霊スポットを題材に描く「実録!恐怖の村シリーズ」第2弾。自殺の名所として世界的にも広く知られる富士の樹海を舞台に、インターネット上の怪談スレッドで「絶対に検索してはいけない」と語り継がれる通称「コトリバコ」と呼ばれる呪いの箱と、樹海がもたらす負の引力によって巻き起こる狂気と混沌を描く。かつて人々を戦慄させた、古くから伝わる禍々しい強力な呪いが、富士の樹海の奥深くに封印された。それから13年後、樹海で行方不明者が続出する事態が起こり……。主演は「ジオラマボーイ・パノラマガール」「名も無き世界のエンドロール」の山田杏奈と、「相棒 劇場版IV」「僕に、会いたかった」の山口まゆ。引きこもりがちで、なぜかコトリバコの秘密を知っているらしい天沢響を山田が演じ、不可解な発言をする妹の響に嫌悪感を抱く活発な姉・天沢鳴を山口が演じる。そのほか安達祐実、原日出子、工藤遥、神尾楓珠らが共演。前作から続いて清水崇監督がメガホンをとった。

コトリバコ > 樹海村な本作。「コトリバコ」とは?

あらすじの通り、本作では「コトリバコ」が物語に大きく関わってくるが、コトリバコとは「2ちゃんねる」の「オカルト超常現象@2Ch掲示板」にて2005年に書き込まれた内容が発祥となるネット怪談・都市伝説であり、その内容は以下のようなものである。

ある大学生が面白半分で仲間の集まりに持ってきた『呪いの箱』らしき物が、たまたま仲間内にいた神社の息子によって恐ろしく危険な『コトリバコ』であることが判る。至急対処しなければ被害が出てしまうため、不慣れではあるが電話で父親に連絡を取りながら呪いを抑える儀式を執り行い何とかその場は凌ぐことができた。

https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B3%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%90%E3%82%B3

話を読んだだけでも体調不良などが発生する可能性があると警告される「検索してはいけない言葉」としても知られるオカルト話だが、掲示板が発祥ということで、途中で質疑応答が織り込まれリアリティが増したり、読んだ者が類似する体験を書き込み物語を強化したりと、掲示板特有の空気感も相まって都市伝説が爆発的に広まる土壌として洒落怖(2chオカルト板のスレッド「死ぬ程洒落にならないい話を集めてみない?」)が非常に隆盛していたゼロ年代後半には「コトリバコ」以外にも「巨頭ォ」や「くねくね」など現在でも根強い人気を持つ都市伝説・ネット怪談が多数生まれた。

そのような時代に登場し、知らぬ者のいないほどメジャーな都市伝説を独自解釈し「コトリバコが作られたのは樹海の中に存在する謎の集落である」という設定で進行するのが『樹海村』となる。

©︎2021「樹海村」製作委員会

物語の大部分がコトリバコを発見してしまったため不幸に見舞われる若者たちの受難を描き「樹海村」が描かれる部分が非常に少ない。
2つの都市伝説をミックスすることで新たな物語として成立させる構造自体は面白いものの、話が散漫になり収集がつかなくなった印象を受ける。

そうした中、標題の「樹海村」以上に存在感を発揮したのが「コトリバコ」で、ネット上で語られる内容でも映画で描かれる内容でも、関わった者を全て呪い殺すような凶悪な箱なのだが、まるで生き物のように食事する姿や突如フタをバーンッ!!と解放し豊かに感情表現するコトリバコの姿は非常に愛くるしさを感じるものだった。

©︎2021「樹海村」製作委員会

プロモーションの一環で上のような写真も公開されており、新たなコトリバコ像を体感することができる。

怖い部分はしっかり怖いホラー演出

主人公と村には何らかの因縁があるといった『犬鳴村』を彷彿とさせる要素も感じられるが、前述の通り本作は「村要素」が薄く、「恐怖の村シリーズ」として立たせた部分以上に、そうでない部分の演出や表現に見所があるように感じた。
「コトリバコ」の呪いによって次々と関係者が亡くなっていく描写は凄惨で、現実のネット上で醸成されたコトリバコへのイメージも相まって箱への恐怖が加速していく描きかたは見事。また、箱の呪いによる恐怖に加え、現実的な人間から人間へ向けられるネガティブな念も描かれるパートがあり、主人公に同情してしまうような内容だった…

その他、樹海において「森」に襲われる描写は『死霊のはらわた』を思わせるものだったり、とあるシーンでは心霊ビデオ界隈では非常にメジャーな『クニコ』をサンプリングしたかのような演出も見られたりと、過去のホラー作品をオマージュしたような描写が散りばめられていた。

一本の物語としては散漫な印象を受けるものの、一つ一つのホラー演出は光るものがあり、しっかり怖いホラー映画に仕上がっていた。

©︎2021「樹海村」製作委員会

前述の妙にかわいげのあるコトリバコの他、浮遊する少女何かやってくれそうな國村隼など思わず笑ってしまうようなキャッチーな要素が有りつつも、怖い部分はしっかり怖い、心を上下に激しく刺激されるような映画だった。

『樹海村』作品概要

監督:清水崇
脚本:保坂大輔 清水崇
出演:山田杏奈、山口まゆ
上映時間:117分

公式サイト:https://jukaimura-movie.jp/

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