映画『アライブフーン』レビュー!ペーパードライバーがドリフトレースの映画を観てみた

eスポーツの王者である青年が実車のドリフトレースに挑む映画『ALIVE HOON(アライブフーン)』 が6月10日より公開されます。

海外では『ワイルド・スピード』シリーズや『TAXi』シリーズなど、車をテーマにした映画が多い中、今作は日本発祥である「ドリフト競技」をテーマにした作品です。

そんなゴリゴリのカーアクション映画を、何を思ったかペーパードライバー歴約10年の筆者がレビューします…!

『アライブフーン』概要

解散の危機に瀕するドリフトチームがスカウトしたのは、内向的な性格から人付き合いが苦手だが、ゲームにだけは驚異的な才能を放つゲーマー・大羽紘一。実車でもその力を発揮する紘一だったが、彼の前に生死をかけてレースに挑む者たちが立ちはだかる。今、紘一の覚醒したテクニック・情熱・勇気、そしてチームワークは、バーチャルとリアルの壁をブチ破り、新たな極致へー(https://alivehoon.com/about/)

主人公・大羽紘一を演じるのは『日々ロック』(14)や『ビブリア古書堂の事件手帖』(18) に出演する野村周平。紘一をスカウトするメカニック担当でヒロインでもある武藤夏実役には「古見さんは、コミュ症です。」(21)などに出演する吉川愛が熱演。夏実の父親であり、紘一を徹底的に鍛え上げる元ドリフトレーサ・武藤亮介を陣内孝則が演じました。

監督は『SHINOBI』(05)、Netflixオリジナルドラマ「僕だけがいない街」で知られる下山天が担当。さらに監修・本人役で出演を果たしているのが『ドリキン(ドリフト・キング)』の名で知られる土屋圭市。本作ではレース解説役として登場しています。本作のヒール役に当たるレーサーの走りに対して、めちゃくちゃ辛辣なコメントをする様子は必見(?)です。

ペーパードライバー、ドリフト映画を観る

©️2022「アライブフーン」製作委員会
「4WDって部屋の間取り?」と発言し、車好きの友人から罵詈雑言を浴びた筆者がレビューします!)

映画『アライブフーン』に限らず、テーマがしっかりしている作品について思うのが「そのテーマに精通していない人でも楽しめるのかどうか?」です。

筆者は免許を取得してから、かれこれ10年ほどハンドルを握っていません。自家用車はないし、出勤も買出しも、猫2匹(計10kg以上)を病院に連れていくときもチャリです。もちろん、ドリフト競技のルールや著名人もさっぱり分からず。とはいえ、運転が苦手というだけで、車が嫌いな訳ではありません。そんな筆者でもドリフトの世界に入り込めるのか…?

しかし本作を観ると、ペーパードライバーでも刺さる見どころがいくつもありました!

逆境を跳ね返す寡黙な主人公がカッコいい

『ワイルド・スピ―ド』シリーズなどを観ていると、ド派手な運転をする登場人物はやたらとニヒルなセリフを言うイメージが先行(偏見)します。しかし、本作で野村周平が演じる大羽は非常に寡黙なキャラクターです。コミュニケーションは必要最低限どころか、足りないために先輩から普通にどつかれます。そんな運動も勉強もコミュ力もダメな大羽ですが、eスポーツだけは夢中になり、結果を出してきました。

勝負事に対する熱量やプライドはしっかり持っており、実車による過酷なトレーニングにも根を上げることはありません。(全然関係ないけど、こうした姿勢は上司や先輩からも好印象もらえそう)

カーアクションの作品としては珍しいキャラクターであり、普段この手のジャンルを観ない人や、チャラいノリが苦手な人でも抵抗なく観ることができると思います。

(C) 2016 真造圭伍・小学館/「森山中教習所」製作委員会

2016年に公開された『森山中教習所』では、免許を取る大学生を演じていた野村周平。しかし今回は寡黙だけどアツい男を演じている…そんなギャップもすごいです。

“よそ者”が逆境を跳ね返すアツい展開

©️2022「アライブフーン」製作委員会
(ゲームに対してネガティブな人にも見てほしい!)

主人公の大羽はeスポーツから実車のドリフト競技に転身することで、同業者から強い反感を買うことになります。

海外ではeスポーツから実車に転身して成績を残す人もいると語られますが、実力を認めてくれたヒロインの父親でも、最初は大羽のスカウトに猛反対。初対面のレーサーは決まって大羽に「ドリフトなめてんのか?」と、すごい喧嘩腰…。そういや『頭文字D』でも「あんなボロハチロクに…!」とか散々な言われようだったなあ…。

こうした異業種からの転身に対する反感は、ドリフト界隈に限ったことではないでしょう。異業種の人が何かと難癖をつけられながらも、自分のプライドをかけて闘う姿はペーパードライバーとか関係なく刺さりました。アツい!

一方で、主人公の実力を素直に認める人も多く、そうした相互理解の尊さも感じられます。勝負の世界は認め合ってこそ高まる…!ジャンルは全く違いますが『ベスト・キッド』や『バケモノの子』のように、成長→挑戦していく主人公を描く作品が好きな人はハマる構図でした。

ストイックな演出もGOOD!

主人公の性格同様、映画『アライブフーン』は演出も非常にストイックです。実写の良さを生かすため、過度な演出(CGでよく見る「車のエンジンがめっちゃ動いている!」みたいなやつ)はありません。レースシーンもドライバーのスピーディーなハンドル・レバーさばきを細かく映しており、見ごたえがあります。業界の派手さよりも、ドライバーから見た勝負の世界に集中している感じも良かったです。

©️2022「アライブフーン」製作委員会
(マジで何台のGoProがぶっ壊れたんだろうと思うくらい、キワキワな映像がたくさん…南無…。)

ほかにも演出で印象的だったのが、モノローグが一切ない点と、主人公・大羽の背景が多く明かされない点です。例えば『頭文字D』は漫画が原作であり、アニメという媒体もあって、バトル中に多くのモノローグが挿入されます(例:やたらとモノローグで自己紹介をする「妙義ナイトキッズ 」の中里)。

同じことを実写でやると違和感がすごいですが、それにしても『アライブフーン』の大羽は寡黙なうえにモノローグも一切ありませんでした。これが本作の雰囲気をよりストイックにしているのかもしれません。また、大羽の家族構成や性格といった詳しい背景をあえて描かないことで、より勝負の世界に入り込めるようになっていました。

ちなみに2018年に公開されたラリーレースの映画『OVER DRIVE』もありますが、こちらはストイックというよりドラマチックな作風です。すでに『OVER DRIVE』を観たことがある人は、『アライブフーン』と見比べてみても面白いかもしれません。

映画『アライブフーン』レビューまとめ

結論から言うと、ペーパードライバーの筆者でも楽しめる要素が十分ありました!

勝負の世界や、周りの反感を跳ねのけていく大羽の活躍にグッとくるなど「ドリフト競技の奥は深い!」というより、「勝負の世界は奥が深い」といった感じです。というか、このレビューではドリフトシーンや、演者の豪華さには一切触れていませんが…。

それにしてもこのレビュー記事、どの層に需要があるんだろう…と考えたのですが、車に興味のない友人を映画に誘う際にご活用いただければ幸いです!

映画『アライブフーン』作品情報

©️2022「アライブフーン」製作委員会

監督・編集:下山天
脚本:作道雄、高明
出演:野村周平、吉川愛、青柳翔、福山翔大、本田博太郎、モロ師岡、土屋アンナ、きづき 、土屋圭市(友情出演)、陣内孝則
監修:土屋圭市
音楽:吉川清之
主題歌:「Hunter or Prey」(NOISEMAKER)
上映時間:120分
配給:イオンエンターテイメント
©️2022「アライブフーン」製作委員会

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