映画『アウトポスト』レビュー!観客も「最悪の戦い」に放り込まれる絶対劇場鑑賞案件

近年、アメリカの戦争映画において「最悪」というワードから連想する出来事は2つある。「レッド・ウィング作戦」「カムデシュの戦い」だ。前者は2014年にピーター・バーグ監督とマーク・ウォルバーグ主演で映画化された『ローン・サバイバー』によって、国外からも認知されることとなった。

一方で「カムデシュの戦い」は、2009年にアフガニスタンの山奥に設置された「キーティング前哨基地」で起きた「最悪の戦い」と呼ばれる戦闘だ。ノンフィクション小説も出版されたこの戦いが満を持して『アウトポスト』と題して映画化され、日本でも3月12日から公開される。

映画『アウトポスト』あらすじ

2009年。アフガニスタンの山奥に設置されたキーティング前哨基地は、米軍の補給経路として重要な役割を果たしていた。そこへロメシャ2等軍曹(スコット・イーストウッド)をはじめとする多くの兵士が派遣されるが、この前哨基地には決定的な欠陥があった。それは防御面。周囲を高く険しい山に囲まれており、敵からは簡単に基地を見下ろせるのに対し、基地からは敵を見つけ出すことが困難なのだ。

派遣された兵士たちも唖然とするが、驚くことはそれだけではない。脆弱な基地のスキを突くかのように、タリバン兵からの奇襲が日常化していた。やがてこの奇襲が戦略のひとつだと気づく兵士たちだが、ついに300人に及ぶタリバン兵が一斉に前哨基地に攻め込んでくるーー。

©OUTPOST PRODUCTIONS, INC 2020

映画『アウトポスト』のメインキャストには『ワイルド・スピード ICE BREAK』(17)などに出演し、クリント・イーストウッドを父に持つスコット・イーストウッドが出演するほか、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『ホビット』シリーズに出演したオーランド・ブルームも出演。ほかにも『スリー・ビルボード』(17)のケイレブ・ランドリー・ジョーンズや、実際に「カムデシュの戦い」に参加した兵士が本人役で出演している。

○安心の製作陣でお届け

監督は『ザ・コンテンダー』(00)のロッド・ルーリーが抜擢されるほか、『エクスペンダブルズ』(10)『エンド・オブ・ホワイトハウス』(13)など、タイトルを聞くだけで安心できる作品を担当した製作スタッフとのタッグも注目したい。

ちなみに2014年に公開された『ローン・サバイバー』は、作戦中に起きたある出来事によって、地獄のような運命に遭うアメリカ兵を描いている。

対して「カムデシュの戦い」を描いた『アウトポスト』は、欠陥のある前哨基地にて襲撃を受け続ける。いわば兵士たちは「袋のネズミ」状態だ。この違いがどのように作品に影響するのだろうか?

前半はまるでスリラー、後半は息もつかせぬ銃撃戦

©OUTPOST PRODUCTIONS, INC 2020
↑見上げれば首を痛めそうなほどの険しい崖に囲まれている

『アウトポスト』の魅力は前半・後半で分けることができる。前半では度重なるタリバンからの奇襲と、キーティング前哨基地で過ごす兵士たちの日々が描かれる。後半は突如攻め入ってきた300人に及ぶタリバン兵との死闘になる。

どれほどタリバンからの奇襲が常態化しているかというと、本編の開始わずか数分でいきなり手荒な歓迎を受けている。兵士たちも慣れたものか、迅速に行動し被害を最小限に抑える。

しかし敵から常に見下ろされる形となる基地では、相手の姿が見えない恐怖が付きまとう。他にも恐怖を感じる点がある。異様な長回しのショットだ。兵士たちの日常だけでなく、任務の様子も長回しでとらえているが、突如敵の攻撃やトラップに遭って命を落とす兵士たちも描かれている。どこから、どのタイミングで攻撃を仕掛けられるのかわからない恐怖を、不気味なほどゆったりとしたカメラワークで伝えてくる。

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後半の「カムデシュの戦い」では文字通り、息もつかせぬ攻防が幕を開け、とにかくその爆撃の数に驚かされる。決して広い基地ではないのに爆風があちこちで吹き荒れ、兵士だけでなく観客も、爆音と爆風によってカオスに陥ること必須だ。

後半の戦闘シーンも長回しが活用され、戦場の臨場感を見事に捉えていた。こればかりは本当に映画館で見たほうが良い案件である。爆音上映などをすれば、ガチで耳がイカれそうなほどである

圧倒的に不利な状況でも生き残るために、兵士たちのプライドをかけたドラマ要素もアツい。『ローン・サバイバー』が次第に孤独な戦いに転じていくのに対し、『アウトポスト』は何としてでもチームで勝とうとする気迫が胸を打つ。作中には実際に前哨基地に派遣されていた兵士も出演しているので、リアリティも折り紙付きである。

ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの新境地

©OUTPOST PRODUCTIONS, INC 2020

激しい戦闘が続く中で、ひときわ存在感を放つのがケイレブ・ランドリー・ジョーンズ演じるタイ・カーター特技兵である。冒頭から半袖短パンという姿で登場し、仲間に銃弾などの物資を届けるために、危険な基地内をひたすら走る。

そもそもケイレブと言えばデヴィッド・クローネンバーグの長男ブランドン・クローネンバーグが監督を務めた『アンチヴァイラル』(12)のアンニュイな役や、シュールなゾンビ・コメディ映画『デッド・ドント・ダイ』(19)で演じたオタク役のイメージが強い。

『アウトポスト』ではケイレブのアンニュイな魅力を残しつつ、ミリタリー映画の中でも異色な存在感を放っていた。

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後半のタリバン300人による襲撃で多くの仲間が倒れる中、カーターが悔しさから涙を滲ませる様子も見られる。たとえ絶望的とわかっていても、カーターは爆心地を救出のために走り続ける。『ハクソー・リッジ』(16)のデズモンド・ドスとはまた違ったキャラクターも非常に強烈だ。

涙ながらに銃弾やRPGが飛び交う基地内を走り回る姿は、作中でも心を揺さぶられる屈指の名シーンである。

是が非でも映画館で見た方が良い映画『アウトポスト』

©OUTPOST PRODUCTIONS, INC 2020

とにかく何としてでも映画館で見てほしい要素がテンコ盛りの『アウトポスト』。唯一賛否が分かれそうな点を言えば場面転換のタイミングだろう。タリバンの奇襲を受けると、映画はそのまま暗転して次の場面に切り替わる。この演出がどこか「死にゲー」っぽく感じた。

「実録の映画でゲームのような演出なんて…」と思われそうだが、この奇襲の繰り返しこそ後の地獄絵図に繋がる作戦だったと思うと、かなり戦慄の展開でもある。

「カムデシュの戦い」に参加した兵士たちが目にした、壮絶な現場とその過程をぜひ体感して欲しい。

映画『アウトポスト』概要

©OUTPOST PRODUCTIONS, INC 2020

公開:3月12日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー

監督:ロッド・ルーリー『ザ・コンテンダー』/脚本:エリック・ジョンソン

出演:スコット・イーストウッド『ワイルド・スピード ICE BREAK』、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ『スリー・ビルボード』、オーランド・ブルーム『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、ジャック・ケシー『デッドプール2』、マイロ・ギブソン『ハクソー・リッジ』

2020 年/アメリカ/英語ほか/123 分(予定)  

公式HP:https://klockworx-v.com/outpost/

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