「YAIBA」とサンデー系名作漫画の共通点関連

ピエール手塚

※今回の記事はYAIBAの最終回含むネタバレがあります

 青山剛昌先生の「YAIBA」は、30年以上前に連載が終わった名作漫画で、「名探偵コナン」が始まったときも、当時小学生の僕は、あの「YAIBA」の青山先生が推理漫画を始めた!と思ったと思います。
 そんな「YAIBA」が2025年4月から再アニメ化することになり、ファン界隈では盛り上がりを感じています。アニメ化発表時の絵からは、終盤に登場する剣も描かれていることから、今回は1回目のアニメ化と異なり、原作の最後までアニメ化してくれそうなので、その点も期待大です。
 ちなみに1回目のアニメ化もすごくよかったんですよね。僕はエンディング曲の「神智学無き戦い」の歌詞でコギトエルゴスムという言葉を覚えました。

 さて、「YAIBA」が大名作漫画であることを示すために、「YAIBA」が他の多くのサンデー系漫画と非常に多くの共通点を持ち、その中心にあるかもしれないという話を書こうと思います。
 あらかじめ僕の願いを書いておきますが、この内容について読んだ人は怒らないでほしい。

1 火星エンド

 サンデー系列の名作漫画の最終回にある共通点が分かりますか?
 そのひとつは「火星に行く場面で終わる」ことです。僕はこれを火星エンドと呼んでいます。

 具体的に言えば「YAIBA」と「度胸星」です。この2つの名作漫画がともに火星に向かう場面で終わることに皆さんは気づいていたでしょうか??

 「YAIBA」は、主人公の鉄刃が様々な剣を手に冒険をして戦う漫画ですが、最後がとてもいいんですよね。刃の相棒として冒険をしていた峰さやかには、様々な冒険の後の日常に戻ります。それは戦いとは無縁で、穏やかで何気ない毎日です。
 しかし、さやかはとても寂しくなってしまいます。この先の自分の人生にはもうあんな冒険はないのだと。

 そこに昔と変わらない様子で刃がやってきます。さやかが知らない場所で刃の冒険はまだまだ続いていて、身長も大きくなって、知らないピンチに陥っていて、だから刃はさやかの力を借りたくて、「来るか?」と問うわけです。そして、大気圏を超えて火星に向かう場面で終わるんですよね。

 さやかの気持ちは読者の気持ちです。漫画の連載は終わり、冒険の日々も終わります。でも、連載が終わっても刃はずっと冒険をしています。漫画として描かれることはないけれど、その先にはずっと続いていく冒険の日々があり、僕の人生も、あの最終回を読んだときからずっと刃の冒険とともにあるんですよね。
 終わらないのが終わり。最高の最終回です。

 余談ですが、刃が最後に持っている剣は、魔剣クサナギというのですが、これは「沖縄の先っちょで見つけた」と語られます。 「YAIBA」の世界における日本の国土はヤマタノオロチの身体なので、つまり「ヤマタノオロチの尻尾から草薙の剣が見つかった」という意味であることに、大人になってからやっと気づきました。

 もう一方、ヤングサンデーで連載されていた「度胸星」の最終回も火星に向かうところで終わります。こちらは、火星に現れたテセラックと呼ばれる正体不明の何かが起こす事件のために、主人公が宇宙飛行士として火星に向かうところで連載が打ち切りになってしまうという悲しい話なのですが、そのせいで自分の中ではずっとあの先の物語が開いたままです。こちらも別のタイプの終わらない物語に自分の中でなってしまっています。
 「YAIBA」は続編がなくても自分の中では無限になっていますが、「度胸星」は続きを読ませてもらえませんか??という気持ちをずっと抱えています。

2 最終回で主人公の身長が伸びる

 この条件を満たしているサンデー系の名作漫画が分かりますか?そう、「YAIBA」と「健太やります!」ですね。両方とも週刊少年サンデーで連載されていた漫画です。

 「YAIBA」は①の方でも書きましたが、大きくなって冒険を続けています。そして、「健太やります!」はバレーボールの漫画ですが、主人公の健太は身長が低いんですよね。一般的に身長が高い方が有利なバレーボールを、低い身長でありながらレシーブの練習などの努力によって活躍する漫画が「健太やります!」でした。

 その健太が最終回ではなんと身長が急激に伸びて高くなっている。これまで不利だったところを解消して、最強になった健太の様子に、驚き、そして良い最終回だなと思いました。

3 漢字の入った玉には文字に応じた能力がある

 サンデー漫画の伝統と言えば、漢字の1字入った玉による能力の発動です。具体的には「YAIBA」「烈火の炎」「GS美神 極楽大作戦!!」です。

 「YAIBA」では、雷神剣が登場します。雷神剣には「雷」の文字の入った玉がはめ込まれており、雷の力を発揮します。そして、この玉がとれて入れ替えられることが分かってからは、色んな漢字の入った玉を入れることで、それぞれの能力を発動していくんですよね。この文字による特性の理解と、その文字に見合った能力の発動という絵的な演出のつながりはとても分かりやすく。サンデーの別の漫画にも継承されていきます(直接関係があるかは分かりませんが)。

 「烈火の炎」には魔導具というものが登場しますが、これも、それぞれ漢字が1字はいったものとなっており、文字に合わせた能力が発動したり、一部の魔導具では玉を入れ替えることで別の能力を使うことができていました。

 そして「GS美神 極楽大作戦!!」にも文殊という能力が登場し、こちらは霊力の詰まった玉にキーワードとしての文字を入れることで、文字に応じた能力が発動されるという形式のものでした。文殊は複数使うことで文章を構築し、より高度な使い方ができるという進化をしたのも面白かったです。特に未来の横島が、たくさんの文殊を使ってタイムトラベルを成功させていたところなどは、とても格好良く印象に残っています。

 3つもパッと思い浮かべばこれはもう伝統。サンデーの漫画あるあると言えば「漢字の入った玉」と言ってもいいでしょう。

4 海外で育った侍が日本にやってくる

 海外で育った侍が日本にやってくる漫画もサンデーによくあります。そう、「YAIBA」と「道士郎でござる」ですね。「YAIBA」は父親の修行の旅に連れまわされたジャングルで修行をしていた侍を名乗る少年、鉄刃の物語ですが、サンデーにはもうひとつ、アメリカで育った道士郎が向こうで侍とはなんたるかを学び、日本に戻ってきて様々なトラブルを巻き起こす「道士郎でござる」があります。

 海外で育った侍というのは、つまり、遠くで伝聞で知ったゆえに、逆に侍の純粋な理想の体現者になってしまうということだと思います。「侍とはこういうものだ」という偏見を誰にも正されないまま育ってしまったために、非常に純に偏ってしまうということです。

 であるからこそ、周囲とのギャップが生まれ、ギャップがトラブルに発展したり、当たり前の捉え直しになったりを繰り返し、周囲で色んなことが巻き起こる種になってしまうのではないでしょうか?「道士郎でござる」は、道士郎に殿と呼ばれる健助くんが、力は弱くて卑屈なのに、それでも、自分が認められない悪い奴らの思い通りには決してしてやらないと示す態度が本当に格好良くて大名作漫画なので、未読の人は読んだ方がいいです。

 海外で育った侍が日本にやってくるところから始まるなどという漫画が2つもあれば、これはもうサンデーの伝統と言っていいでしょう。

5 玉を集めて龍を出す

 各地に散った7つの玉を集めて龍を呼び出す漫画と言えば何だと思いますか?そう!「YAIBA」ですね。「YAIBA」では全国各地に封印された玉を集めることで龍神の力を手に入れバニーガールの姿の月星人、かぐやと戦います。

 こういう言い方をすると「ドラゴンボール」と一致するというところが面白いなと思います。バニーガールもドラゴンボールと共通する要素だと言えなくもない。満月が大きな意味を示す部分もある。

 ただ実際、両方が好きだった子供の頃に読んでいたときには、そんなことを思いもしなかったので、箇条書きすれば共通点が出てくるものでも全く異なる漫画が描けるという事実が面白いとい思います。

 もはや、サンデーの話ではなくなりました。

まとめ

 いよいよ「真・侍伝YAIBA」のアニメが始まろうとしています。子供の頃に夢中になった漫画が、現代にリブートされて、前回のアニメ化の際には途中までだったものが最後まで描かれると思うのでとてもワクワクしています。

 放送開始が楽しみですね。2025年4月5日放送開始だそうです。あの頃のファンも、今初めて見る人も皆で見よう!!

6 「剣〇伝〇」

 アニメ化の際に様々な事情からタイトルが変わったりすることがあります。サンデー漫画で言えば、「ARMS」が「PROJECT ARMS」になったり、「ガンバ!Fly high」が「ガンバリスト駿」になったりしたのですが、「YAIBA」も前回のアニメでは「剣勇伝説YAIBA」となっていました。

 そして、「ベルセルク」の最初のアニメも「剣風伝奇ベルセルク」だったので、アニメ化の際のタイトルでは「剣〇伝〇」がつくという伝統がありそうですね。

 皆さんも、色んなものの「共通点」を探して、「伝統」を「発見」してみると面白いかもしれませんね。

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新アニメ情報

「名探偵コナン」をはじめとする数々の作品を世に送り出してきた青山剛昌先生の原作『YAIBA』(小学館・週刊少年サンデーにて1988年39号から1993年50号まで連載)。
完結から30年の時を経て、『真・侍伝 YAIBA』としてTVアニメをWIT STUDIOが制作。2025年4月5日より読売テレビ・日本テレビ系全国ネットにて土曜夕方5時30分枠で放送開始!!(※一部地域を除く)


真のサムライを目指し、ジャングルで修行に励んでいた鉄 刃(くろがね やいば)。 ひょんなことから日本に戻り、父・剣十郎と縁のある峰家に身を寄せることに。 峰家の娘・さやかは破天荒な刃に戸惑いながらも暮らし始める。
そんなある日、さやかの学校に訪れた刃は、剣道の実力者・鬼丸 猛(おにまる たけし)と運命的な出会いを果たす。 その後、刃と鬼丸は衝突を繰り返し、強さを求めた2人に呼応するかのように古の力が目覚める。
「雷神剣」と「風神剣」―
古来より天地を揺るがしてきた魔剣が今再び目覚め、真の物語が幕を開ける―


原作:青山剛昌「YAIBA」(小学館「少年サンデーコミックス」刊)
監督:蓮井隆弘
シリーズ構成:待田堂子
キャラクターデザイン/総作画監督:亀田祥倫
サブキャラクターデザイン/メインアニメーター:前並武志
特技監督:桝田浩史
美術監督:竹田悠介 (Bamboo)
美術設定:藤井一志
色彩設計:橋本 賢
3D監督:中村幸憲
撮影監督:福士 享
編集:廣瀬清志
音楽:やまだ豊 出羽良彰
音響監督:山田 陽
音響効果:森川永子
アニメーションプロデューサー:岡田麻衣子
OPテーマ:BLUE ENCOUNT「BLADE」(Sony Music Labels Inc.)
アニメーション制作:WIT STUDIO

鉄 刃/高山みなみ
峰さやか/石見舞菜香
鬼丸 猛/細谷佳正
鉄 剣十郎/小西克幸
宮本武蔵/諏訪部順一
カゲトラ/千葉一伸
庄之助/越後屋コースケ
峰 雷蔵/宮内敦士
峰 静香/佐藤利奈
峰 ふじ/斉藤貴美子
ゲロ田ゲロ左衛門/大西健晴
クモ男/阪口周平
ナマコ男/市ノ瀬加那
佐々木小次郎/井上 剛

©青山剛昌/小学館/真・侍伝YAIBA製作委員会

作品の詳細や試し読みはコチラ!
https://www.sunday-webry.com/episode/
【放送情報】
2025年4月5日
読売テレビ・日本テレビ系全国ネット
土曜夕方5時30分にて(※一部地域を除く)

【公式HP】
https://www.yaiba-pr.com
【公式SNS】
公式X: / yaiba_pr
公式TikTok: / yaiba_pr
(公式Youtubeより引用)

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