今更だけどアレ見よう『ノーカントリー』/ミラナ・ラヴィーナ

ミラナ・ラヴィーナ

こんにちは!映画好きVtuberのミラナ・ラヴィーナです!

本日も観る機会を逃していた名作映画の感想を書いてまいります。
今回のタイトルは『ノーカントリー(07)』です!

ハードで難解な作風ながらかなり好みな作品

『ノーカントリー(07)』はアカデミー賞8作品ノミネート、4冠受賞のガチ超名作!例によってなんとな~く観る機会を逃し続けていました作品ですね。
難しそう、固そうというイメージが強くて食指が伸びなかったところはあると思います。

ハビエル・バルデム演じる殺し屋アントン・シガーがあまりに有名なので、そのスクショだけは見たことがありました。
わたしと同じ認識の人も結構いるのでは?

結論から言うと、たしかにストーリーはやや難解でしたが……生々しい暴力描写と役者陣の確かな演技力から生み出された個性の強すぎるキャラクターたちが非常に魅力的かつわたし好みで、とても楽しい作品でした!

あ!一応言っておきますとストーリー自体は絶対に「楽しい」と評価出来る作品では無いです!どちらかというと落ち込む作品だと思います。
ただ、怖いシーンがもう本当に怖すぎてもはや笑うしかない……そんなめちゃくちゃさがなんか楽しい……そんな不思議な感想を抱きました!

アントン・シガーという怪物

印象に残ったシーン、好きなシーンはかなりたくさんあったのですが、まず言いたい事はとにかくハビエル・バルデム演じるアントン・シガーという殺し屋の魅力がすごい!

基本的に寡黙で何を考えているか分からない男ではあるんですが、喋ったところで常人には理解できない自分ルールの話しかしないし、行動原理がまったく見えないし、それでいて戦闘能力が高くて自分の目の前にいる人間は誰でも簡単に殺してしまう危うさがあるので、なんかもう画面にいるだけで緊張感がすさまじいんですよね。
こんなキャラクター、本当になかなか類を見ないのですごく印象的でした。

『ヒッチャー(86)』のジョン・ライダーや『ダークナイト(08)』のジョーカー(ジャレッド・レトやホアキン・フェニックスは明確に違う)とかが結構近いイメージですが、本当にそれ以外思いつかず……。
映画史に残る悪役と言われているのも納得のキャラクターでした。

特に印象的だったのはガソリンスタンドの店員に信じられないほどの圧力をかけるシーン。
店員の他愛もない世間話に何故か突然キレスイッチが入り、何が正解かも分からない会話が続いたのちに急にコイントスを始めるのですが、そのときには既にこれを外したら絶対に殺されるという雰囲気で場が掌握されているんです。

どこに地雷があるのか、何と答えてほしかったのか、マジで何もかも分からないけどヘタこいたら殺されるということだけは分かる。
ただ世間話をしただけなのに。絶対出会いたくないよこんな人。

このシーンの「今日は何時に寝る?」「21時くらいですけど…」「じゃあその頃また来る」という恐ろしすぎる会話が一生記憶から消えません。
間の取り方も言葉選びも、あと全然まばたきしないのもとにかく怖かった……。

中盤で彼が重傷を負い、自力で治療をするというシーンもあるのですが、そこもかなりすごかった。
とにかく作品通して痛いシーンがかなり生々しく痛そうに撮られているので、その治療シーンも観ているだけでウヒ~となってしまう演出になっていたのですが、なんとこの殺し屋、うめき声すら上げないんです。に、人間じゃない……。
やたらテキパキ治療を進める手際の良さ含め、なんかもう笑えて来ちゃうかも……と思うくらい振り切ったヤバさを象徴するシーンのひとつでした。

唯一無二の魅力が光る演出たち

キャラクター以外の演出的なところで言うと、BGMがまったくないのも他の作品にはあまり見られない魅力のひとつだと思います。
ドラマティックな演出には劇伴が不可欠なはずですが、この作品はBGMが無いことで逆に作品全体のヒリついた空気が表現されているように感じました。

その他にもスーパー殺し屋アントン・シガーが直前まで会話していた人物を絶対に殺しているんだけど殺した瞬間そのものは映らず、シーンが切り替わった直後の行動で殺したことが分かるというシーンが何度かあり、それも良かったですね~!

鶏のケージを荷台に載せた車の運転手と話して「車をよこせ」と言った次のカットで車の荷台の鶏の羽を水で流すシーンだったり、ターゲットの家に侵入し会話をした次のカットで家から出て靴の裏の汚れを確認するシーンだったり。
先ほどまでの会話の相手がどうなったか、まったく表現はされていないのですが(ああ…”殺”ったな…)と観客に一瞬で理解させるスマートさに痺れました。

スマートといえばこの作品はメインの登場人物たちがみんなかなり優秀で、そこも一味違う魅力だと思います。
特にこういったサスペンスものでは事件を追う保安官というキャラクターは大事なことを見落としたり判断ミスをしたりしがちな印象ですが、本作はちょっとしたヒントにすぐ気付く!判断も素早く正しい!

しかし、そんな登場人物たちをもってしてもアントン・シガーという狂人の思考回路と人を殺す能力の高さにはかなわないというのが面白いポイントだと感じました。

あと個人的な好みとしてわたしは三度の飯よりゲロを吐くシーンが好きなのですが、この作品のゲロはね、本当に良かったですよ……。

あるキャラクターが腹部を撃たれた重症状態で道を歩いてる途中で立っていられなくなり、嘔吐して座り込むというシーンです。

どういうメカニズムかはよく分からないしリアルかどうかというのは置いておきますが、とにかく極限まで具合が悪い人間がゲロを吐いてぶっ倒れるという謎の説得力。
これも他の作品ではあまり観たことがない演出だったのでかなり好きでした。

描かれない背景に萌えがある

すみません、男と男、見いだしました。今回も。
スーパー殺し屋シガーチャンを知る者として登場する賞金稼ぎカーソン・ウェルズ、この男の後方彼氏面を見逃すことは出来ませんでした。

このウェルズくん、オレはあいつ(シガーチャン)のことワカってますけどね…とめちゃくちゃイキって出てきて、実際シガーチャン本人と対峙するまでは結構頼りになる人なのかも?と思わせてくれる有能さなのです。
まあ最初の威勢の良さも虚しくあっさりシガーチャンに後ろを取られ一瞬でイキり命乞いを始め普通に無慈悲に消されるのですが……。

でもさ……シガーチャンもウェルズくんに話しかける時は作中でも屈指の饒舌さだったしさ……なんか表情も豊かだったし……。
もしかしたら顔見知りと会えて嬉しかったんじゃないかな?と思わせるだけの背景はありました。

この”深堀りはされないけどなんかある”の状態だけでもオタクは十分に見いだしが可能なので、欲を言えばスピンオフとか……それは欲深すぎるというのであれば二次創作とか……そういうので幸せになりたい。なれませんか?


ということで、他の作品ではなかなか観られない演出とキャラクター造形がかなり魅力的な名作でした。かなり作風が好みだったのでコーエン兄弟の他の作品も観てみたいと思うところです。
次回は『宇宙戦争(05)』を観る予定です!

ノーカントリー作品情報

荒野で狩をしていたベトナム帰還兵のモスは、偶然ギャングたちの死体と麻薬絡みの大金200万ドルを発見。 その金を奪ったモスは逃走するが、ギャングに雇われた殺し屋シガーは、邪魔者を次々と殺しながら執拗に彼の行方を追う。事件の発覚後、保安官のベルは二人の行方を探るが、彼らの運命は予測もしない衝撃の結末を迎え・・・。


原題:no country for old men
製作年:2007年
上映時間:122分
監督:ジョエル・コーエン
キャスト:トミー・リー・ジョーンズ, ハビエル・バルデム, ジョシュ・ブローリン

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