今年も次から次へと様々なホラー映画が日本に上陸している。
14年越しの公開となったスラッシャーホラー『クロムスカル』や、全米が吐いたことで話題の『テリファー 終わらない惨劇』など、これ本当に劇場でかかるの!?と思わず疑いたくなる作品が国内のスクリーンに映し出されている。だが、皆さんはお気づきだろうか。まだまだ、海の向こうには無数の映画が埋もれていることを。
私的な話で恐縮だが、最近少しお給料が増えたので、そんな未上陸作品の輸入盤を買いまくっている。その中で当たりだった作品がいくつかあるので、今回はそちらを紹介していきたい。このコラムを読んだどこかの配給会社さんが、日本に引っ張ってくることを祈っております。というわけで、今回は2本の作品を紹介します。
まずは1本目!みんな大好きなPOVホラーオムニバスシリーズが奇跡の復活を果たした『V/H/S 94』だ。
作品が公開されたのは1年以上も前で、ブルーレイも去年の夏くらいに買っていたのだが、楽しみにしすぎて最近までずっと寝かせてしまっていた。期待値が限界まで膨らみ上がった状態で鑑賞に臨んだのだが、これが本当に素晴らしくて、こちらの期待をきっちり超えてきてくれた。
今回も、大枠のエピソードがあって、その合間に数本の短編が挟み込まれるというスタイルは変わりない。
軸になるのは、カルト集団のアジトに潜入する特殊部隊のお話である。部隊が建物の中に突入するも人の気配が無い。更に探索していくと、怪しいオブジェなどが出てくる。そして、信者たちの死体も発見されるのだった。更に映像が流しっぱなしのVHSも発見される。ここから各短編へと繋がっていくというわけだ。
導入もスムーズだし、映像自体もかなり気味悪く引き込まれる。このメインエピソードの監督を務めるのはジェニファー・リーダー。これまでに長編ホラーを2作ほど手掛けている新星である。
では、短編について紹介していこう。最初の話は、地下道に潜む化け物を追うレポーターの姿を描いた「Storm Drain」。
これには、ラットマンという怪物が出てくるのだが、そのビジュアルが最高すぎる!
うっすら毛の生えた細い体。ポッカリと空いた黒い点のような目、どこまでも裂ける恐ろしい口。夢に出そうな、おぞましい見た目だ。そして、これをプラティカル・エフェクトで描いているのがたまらない。
その仕上がりも動きも、カメラへの映し込み方も全部が完璧。いきなり、もっと見せて!と懇願したくなるイカしたクリーチャーが出てくるので幸先が良い。ちなみに、この話の最後に挟まれるCMは『サイコ・ゴアマン』のスティーブン・コスタンスキが手掛けているので見逃さないように。
続く2話目は「The Empty Wake」。
葬儀場に一人残された女性がとんでもない恐怖に襲われるというお話だ。
これも、真っ暗な葬儀場内の恐ろしさを最大限に活かした、素敵なホラー短編に仕上がっている。前半は不穏な演出でじわじわと恐怖を積み上げていき、後半で爆発させる手堅い構成。抑え目なスタートと比べ物にならないくらい、クライマックスの勢いが良すぎて思わず笑ってしまった。種を明かせば良くあるやつなのだが、この話はそこまでの持っていき方がユニークで楽しかった。
3話目は「The Subject」。
これは頭一つ飛びぬけて素晴らしかった!
監督はインドネシア出身のバイオレンス映画スペシャリスト、ティモ・ジャヤント。イコ・ウワイスがクソ強い敵を過剰にボッコボコにしていく『ヘッドショット』や、『死霊のはらわた』にインドネシア的バイオレンスをブチ込んだ闇鍋ホラー『悪魔に呼ばれる前に』など、これまで手掛けた作品はどれも一級品の面白さを誇っている。
そんな彼が作ったとあって、この話だけ別次元でテンションが高い。そして死人が多い!!
舞台はマッドサイエンティストの研究施設。そこで目覚めたのは、武器人間に改造された被験者だ。そして、その施設に特殊部隊が突入してくる!そんな中、博士が作った最強の殺人マシーンが起動して特殊部隊を片っ端から惨殺!主人公の被験者も凄い武器を装備して特殊部隊を皆殺し!!惨殺と惨殺のサンドイッチ状態な展開が繰り広げられる。
無双と人体破壊のオンパレードで、久々に血がアツくなった。FPSホラーの中でも群を抜いて面白いので必見です!!
この話が凄すぎて、この後に続くラストエピソード「Terror」の影が薄くなってしまうのが惜しいところだ。
しかし、この話も単体で観れば十分に面白い。テロを計画する白人至上主義のヤバい人たちが、日の光を浴びると爆発する吸血鬼の生態を利用して、その血液を採取して、光を当てたら爆発するブラッドボムを作ろうとする!という、超トンチキ設定が楽しい。
吸血鬼のおぞましいビジュアルも良い。『モンスター・イン・ザ・クローゼット』に出てくる化け物みたいでカッコいいのだ。武器人間の話が最後に来ていれば、きっと吸血鬼たちももっと輝けたことだろう。順番って大事だ。
そして、作品の締めに、全体を纏めるカルト教団のアジト突撃がクロージングして幕を閉じる。いやー、本当にこのシリーズはたまんない。完全復活である。クリーチャー要素が多めなのも嬉しかった。私がこれを買ってから寝かしすぎたせいで、既に次作『V/H/S 99』が出てしまっている。次はこれを買って寝かせようと思います。
続いて紹介するのは『Unseen』という作品。ホラーファンにお馴染みのブラムハウスが製作したスリラー映画である。
弱視の女性エミリーが狂った元カレに殺されそうになる。間一髪のところで逃げ出した彼女は、手元のスマホで助けを求める。それが繋がった相手は、ガソリンスタンドのショップに勤務する一般女性サム。突然の出来事に慌てふためくサムだったが、事態を受け入れ、エミリーの”眼”となって遠隔で逃走を手助けすることに。果たしてサムは、無事エミリーを逃げ切らせることができるのか……!!
あらすじだけでもう面白い。物語が始まるといきなり逃走シーンからスタート。余計なお膳立ては全てそぎ落として、速攻で本筋から始まるのが素晴らしい。話をガシガシと動かしながら、主要な登場人物の人となりを観客に示すスマートなストーリーテリングに感心する。
本作の監督は、奥村葉子さんという日本人女性である。彼女は、これまでにドラマ畑で何作か手掛けているが、長編作は本作が初めてだそう。それでこの出来は凄い。とにかく話が一切止まらず、ドライブ感がある。加えて、遠く離れた二人をつなぐ映像のカットバックなどあらゆる演出が非常に気持ちいい。
スリルも抜群なのだが、シリアス一辺倒になるわけではなく、常にアッパーな空気感があるのが、本作の魅力である。ただクソ野郎にやられるだけではない、やり返してやるというアゲインスト精神が常に全面に出ており、観ていてガッツが湧いてくる。
そして、2人が連携してサバイバルを繰り広げる過程で、デバイス越しに段々と友情が芽生えていくドラマにもグッと来る。シスターフッド映画としても、とても良く出来ているのだ。この関係性の変化と機敏が、物語のテンポを殺すことなく、自然且つ丁寧に描かれている。しつこいようですが、これ、本当に初長編なんですか!?
更に、本筋の攻防戦に加えて、もう一捻り、オモシロサプライズが待ち構えている。これのおかげでクライマックスは超カオス!あっちで絶体絶命の危機!こっちで一触即発!みたいな地獄絵図で、物語はこれ以上ない盛り上がりを見せる。最初から最後まで見せ場に次ぐ見せ場の連続で、本当に面白い。この作品は、是非多くの人に観てほしいと思う。
というわけで、『V/H/S 94』と『Unseen』の2本の日本未上陸作品を紹介しました。
いずれも優れた作品だが、残念ながら現時点で日本公開の予定はない。どちらも日本に来たら注目を浴びること間違いなしの名作なので、どこかの配給会社さん……お願いします!!
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